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第13話 おっさん、アンデッドと戦う

 マミーの腹を掻っ捌く。ゾンビの全身を燃やし尽くす。スケルトンの頭蓋骨を叩き砕いて、グールの大顎を切り飛ばした。


 こんなもの「封刻」を発動するまでもない。アンデッド系は基本的に鈍重で、体を掴まれなければ脅威にもならないのだ。


 振り向きも遅いため背後に回り込めば造作もないし、遠距離から魔法で狙い撃ちすることもできる。だからほとんど殲滅戦だった。


 急に加勢した俺だったが、杖の少女は特に気にしていないようだった。彼女は彼女で魔法の青白い炎を操って一網打尽にしていく。


 その火力の高さを見て、俺が出るまでもなかったかもしれないと思った。位置取りや魔法の精度に無駄がなく、彼女はアンデッドの動きをすべて予測しているようにさえ感じてしまう。


 アンデッドの数は順調に減っていっていた。この調子でいけばなんとか処理しきれるだろう。しかしゾンビの一体を切りつけようとした瞬間、魔剣を正面から受け止める存在が現れた。


 重厚な板金鎧に身を包み、長剣を携えた騎士だ。しかし、その首の上には頭が無かった。


「っ、デュラハン?」


 デュラハンは17階層に稀に出現するアンデッドだ。ほかのアンデッドとの違いは重武装による高い耐久力と、優れた戦闘技術による剣捌きだ。


 あまり戦うことのないレア種のため、対策を怠り大事故に繋がることもないわけではなかった。俺も一度しか戦ったことがない。


 鍔迫り合いをしていると背後からスケルトンが迫ってくる。流石にここは「封刻」を発動。


 停滞した時間のなか、デュラハンの鎧の隙間から刃を突き刺した。手応えをしっかり感じつつ、剣を引き抜いて離脱する。


 その後も複数のアンデッドが現れたものの、なんとか無傷で倒し切ることができた。途中から杖の少女とはぐれてしまったが大丈夫だろうか。


 俺が周囲を見渡していると岩陰から彼女が現れた。


「良かった、無事だったか」


「あなたこそ」


 あれだけ激しい戦闘があったにも関わらず、少女の服には汚れ一つ見当たらなかった。今も涼しい顔をしている。


「あなた、装備屋の人でしょ」


「あっ」


 そうだった、俺は一応正体を隠しておきたいのに何をやっているんだ。


「すまない。俺がここにいることは人には黙っていてくれないか」


「? 別に誰に言うつもりもない」


 見たところ、この少女がわざわざ人に言いふらすような性格ではなさそうなのは助かる点か。


「それで、このアンデッドたちは何だったんだ? 君はなにか知っているのか」


「この22階層の地中に、アンデッドが潜っていた。それを誘い出すために、これが必要だった」


「地中に? それにその杖……」


「これは呪物。アンデッドを誘引する力がある」


「呪物!?」


 そんな、うちの売り物に呪物が含まれていたなんて。本当だとしたらとんでもない不祥事じゃないか。親父の鑑定に問題があったということになる。


「……それは確かなのか?」


 俺が尋ねると少女はこくりと頷いた。


「わたし、呪物の位置、分かる。だから店の地下にあることも分かった」


 彼女の主張は今ここで客観的に証明する方法はない。だが嘘をついているようには見えなかった。


「なんで22階層にアンデッドがいたんだ?」


「分からない。でも、地面のなかに前から反応があった」


「いつ頃だ?」


「二週間くらい前」


 二週間前……俺と魔剣が共鳴して初めてダンジョンに潜った時くらいか。ということはあの日にはすでにアンデッドが地中に潜んでいたということになる。いったい何のために?


 謎は残るもののほかにできることはない。


「テラーナ。私の名前」


「え、ああ。ジェイクだ」


「ジェイク、さよなら」


 そう言って彼女はダンジョンの奥へ向かっていった。




 杖の少女と別れてから俺は魔剣に訊ねた。


「お前も気配を感知できるんだろ? 地中のアンデッドに気づかなかったのか?」

『オレは気配より匂い派なんだよ。要するに露出してくれてないと分からねえってことだ』

「本当に犬みたいだな、お前」


 ああ!? 誰が犬だコラ!!と喚く魔剣はスルーした。


 ひとまず収束したものの、やはり引っかかるものはあった。


「まさか魔物が生息層以外に現れやすくなっているのか……? 面倒なことが起きないと良いんだが」


 一応今回の件をギルドの職員に伝えておこう。そう思って上層へ戻っていった。

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