13話 初依頼
朝、目覚めるとアイシャは既に起きていてお風呂場の方で着替えをしているようだ
僕もグッと背伸びをひとつしてから布団を出て着替え始める
「あっリュウヤ君、おはようございます」
「お、おはよう」
昨日の事もあり少し気まずかったがアイシャに特に変わった感じはなく昨日と同じ様子だ
変に気を遣うよりいつも通り接するのが一番だろう
「準備できたら下で朝食摂ってギルドへいこっか」
「はい!初めての依頼頑張りましょうね」
一階に下りてグレイスさんが作ってくれた朝食を頂く
食べ終えたらギルドへと向かい受付をしているリリアーナさんの元へ行く
「おはようございます。リリアーナさん」
「あら、リュウヤさんにアイシャさんおはようございます。依頼を受けにこられましたか?」
「はい、良さそうなのがあれば受けたいんですけど」
「分かりました。少々お待ち下さい」
依頼がまとめてあるファイルをペラペラと捲り探していく
その中から一枚の紙を取り出してこちらに差し出してくる
「これなんてどうでしょうか?ケイブウルフの討伐でFランクの中で難度が一番高い依頼です。本当はある程度依頼をこなして経験を積んでからお願いする依頼なんですが、リュウヤさん達なら問題ないと判断しました」
差し出された紙を確認する
ディグリア近くにある山の洞窟を縄張りにしているケイブウルフの討伐か
山道を通る行商人等が被害に遭っているらしい。報酬は銀貨3枚か
「アイシャこの依頼どうかな?」
「そうですね。私達ならケイブウルフ相手は全く問題ないと思います。ただ・・・」
「ただ?」
「ケイブウルフは常に群れで行動するんです。群れの規模によっては厳しくなると思います」
なるほど、確かに数が多すぎると対応しきれなくなる
初めての依頼だからなるべくリスクは避けたいな
「数の確認は出来ているんですか?」
「はい。被害に遭った方からは10匹前後だと報告があります」
「10匹程でしたら問題ないと思います。受けましょうリュウヤ君」
ケイブウルフの強さはどの程度か僕には分からないがアイシャが危険が少ないというのなら問題はないだろう
「よし、じゃあこの依頼受けます」
「はい、依頼を受け付けました。依頼達成しましたら魔石をお持ちになってこちらにいらしてください。お気をつけて」
こうして僕とアイシャ2人で初の依頼を行う事となった
街を出る前に道具屋に寄り、ポーションを5本程購入しておいた
2人共ヒールは使えるがもしもの事を考えておいて損はないだろう
「リリアーナさんから貰った地図によるとどうやらあそこの山にある洞窟のどれからしいね」
「ここから歩いて5キロといったところでしょうか。そこから山に登るから2時間位はかかりそうですね」
「そっか、まだ時間はあるしのんびり行こうか」
山には洞窟が3つほどあり、縄張りの特定までは至っていない為1つずつ確認していくことになる
地図でルートを確認しながらケイブウルフが潜んでいる山へと向かった
街を出て1時間が過ぎただろうか。僕達は山の麓まで辿り着いた
ここから更に山を登り、ケイブウルフがいる洞窟を探し出す
「じゃあまずは一番近いここの洞窟から探そうか」
「分かりました」
麓から一番近い洞窟を目指し20分程登っていくと滝の裏に隠れている洞窟を発見した
「アイシャ、ケイブウルフがいたら能力上昇を僕にかけて」
「分かりました。能力上昇をかけたらすぐさま支援に回ります」
アイシャの言葉にコクリと頷き洞窟の中へと入っていく
洞窟の中は大分暗いが幸いなことに二人共夜目はきくので松明いらずで目立たず動くことが出来た
警戒を怠らないよう奥の方へ進んでいく
洞窟は一本道で、進んでいくと瓦礫で行き止まりになっている場所まで来た
どうやらここはハズレのようだ
「見た感じ痕跡とかもないみたいだしここにはいないようだね。次に行ってみようか」
アイシャにそう告げ、来た道を引き返していく
次の洞窟は山の中腹手前にある洞窟
こちらの洞窟はいくつかに枝分かれしていてたので全て探索するのに時間がかかった
念入りに確認したがここにもケイブウルフはいなかった
ということは最後の洞窟にケイブウルフがいる可能性が非常に高い
僕達は洞窟から出て最後の洞窟を目指す前に少し早い昼食にすることにした
グレイスさんが朝作ってくれた朝食の残りのスープと昨日行ったパン屋さんで買ったサンドイッチを食べる
「朝早かったので比較的空いててよかったですね」
「そうだね。クリームパンも買えたしね」
アイシャはお気に入りのクリームパンを幸せそうな顔をして頬張っている
もっと緊張するかと思ったが意外とリラックスしているようで安心した
昼食を済ませた僕達は山頂付近にある洞窟へと向かう
洞窟に着き入口の前に立つ。そこで今までの洞窟とは明らかに違う血と獣の臭いがした
臭いを嗅いだ瞬間、今までより一層警戒をし歩を進める
進んでいくと奥のほうが広い空間になっていた
そこにはケイブウルフが食べていた獣の残骸と行商人から奪ったであろう食料の食べ残しがそこかしこに散らばっていた
だが残骸等があるだけで討伐対象であるケイブウルフが見当たらなかった
「すれ違っちゃったかな。もしかしたらまた狩りにでも出ているのかも」
「ケイブウルフは夜行性なので一匹もいないというのは不自然ですね・・・」
「うーん一旦外に出たほうがいいかな。今来られたら退路を塞がれる形になっちゃうし・・・ん?」
アイシャと会話していると出口の方から足音が聞こえてきた。しかも複数の足音だ
そして一匹のケイブウルフが姿を現した
依頼書にも書かれていたが灰色毛並みをした狼のようだ
「グルルルル・・・・・」
「どうやら僕達がここに来るのがバレてたみたいだね。外で待機して僕達が入って行くのを待ってたみたいだ」
「鼻も利くので私達が近づいて来てるのを感知したのかもしれませんね」
一匹、また一匹と増えていき合計で11匹
報告とおおよそ同じ数のケイブウルフが僕達の前に現れた
各個体のステータスは低い。けどどの個体も敏捷性だけ突き抜けて高い
その中でも他より全体的にステータスが高く、一回り大きい黒い毛並みをした奴がいる
迅速と鋭利化というスキルも持っている。奴がこの群れのボスで間違いないだろう
「アイシャ戦闘準備!」
「はい!能力上昇かけます!」
アイシャの能力上昇の効果で全ステータスが一時的に上昇した
「障壁!この中に入って援護をお願い!」
障壁でアイシャの身を護りこちらは戦闘に集中する
僕の魔法発動のタイミングで相手も一斉に攻撃を仕掛けてくる
四方に散りこちらを撹乱してくる
「鈍化!」
アイシャの魔法で強みの素早さが失われた
効果範囲にいた3匹のケイブウルフは思うように動けなくて困惑しているようだ
その隙を狙って屠る。これで残り8体
範囲外にいた残りが僕を無視してアイシャに襲いかかる
「幻影!」
続けざまにアイシャが魔法を放つ
今度は半数が幻影の影響を受け、全く関係ない場所を攻撃して空を切っている
効果が解ける前に残りの半分を倒しにかかる
幻影にかからなかった奴等はそのままアイシャに攻撃をしたが、予め張っておいた障壁に全て弾かれる
弾かれて怯んでいる隙を狙い飛爪斬や龍脚を使い次々と倒していく
これで残り5匹となった
残すは幻影にかかっている4匹と目の前にいるボス一匹のみ
このボスを倒せば実質勝利と言えるだろう
「グゥゥ・・・バウッ!」
ボスウルフが吠えた瞬間フッと消えたと思ったら僕のすぐ傍まで接近していた
今のが迅速の効果なのだろう。素早さの値に関係なく相手の元まで一気に接近するスキル
そして鋭利化を使い強化した牙で喉元を食い千切ろうと飛びかかってくる
「惜しかったな、でも無駄だ!」
スッと横に避けてそのまま牙を掴み一本背負いのような形で地面に叩きつける
「ギャン・・・!」
たまらず鳴き声を上げる
起き上がることが出来ずピクピク痙攣している。苦しませるのも可哀想なので手早く止めをさす
これでボスも倒し残りは4匹
「よし、アイシャ残りも・・・てあれ?」
「あっリュウヤ君、残りの4匹もやっつけましたよ!」
振り向くと笑顔で近づいてくるアイシャがいた
ボスウルフと戦っている間にどうやらアイシャが残りを片付けてくれていたようだ
「お疲れ様、これで討伐完了かな。アイシャのお陰で凄い楽に戦えたよ。ありがとう」
「お役に立ててよかったです♪思ったより動けて自分でもビックリしてます」
「もっと実戦を積んでいけばより動けるようになるだろうしこれからも頑張ろうね」
「はい!じゃあ私あっちの魔石回収してきますね」
ケイブウルフの魔石を全て回収し洞窟を出る
あとはこれをギルドに持って帰って報告するだけだ
「あっリュウヤ君、新しい魔法を覚えました!えぇっと戦闘系の魔法ではないんですが”空間収納”を習得しました」
「おぉ!空間収納ってこの収納魔法がかかってる革袋よりずっと多くの物を収納出来るんだよね。便利な魔法覚えたね」
一方、僕の方も新たなスキルとして”龍神の恩寵”というのを獲得した
倒したモンスターの通常の経験値×1.5倍の経験値が加算されるというかなりいいスキルだ
しかもパーティに加わっている仲間も対象になるという
レベルを上げたい僕達にピッタリなスキルだ
「龍神の恩寵ですか、初めて聞きました。リュウヤ君はきっと龍神イグニアス様に愛されているんですね♪」
「そ、そうかな」
あのゴツい姿を見てるから愛されていると言われてもちょっとな・・・
ステータスの確認も終わり僕達は無事依頼を達成し山を下りて街へと帰っていく
ナグモ リュウヤ 15歳(男性)
Lv25 種族:龍人
HP:1000 MP:310
攻撃力:172 防御力:187+10 敏捷性:163
魔法攻撃:92 魔法防御:126+8
スキル:龍爪+飛爪斬、龍脚+震脚、龍の眼+探索、龍神の恩寵、龍の加護
魔法:ファイア、ヒール、障壁
アイシャ 14歳(女性)
Lv19 種族:妖狐
HP:740 MP:900
攻撃力:75 防御力:100 敏捷性:135
魔法攻撃:142+10 魔法防御:140+10
スキル:霊気感知、精霊の加護
魔法:朧火、アイスネイル、ウォーターボール、ヒール、ポイズンキュア
能力強化、鈍化、幻影、空間収納
明日も19時に投稿します
読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします