12話 宿探し
無事ギルド登録の試験を済ませた僕とアイシャは少し早いが試験の疲れもあったので宿を探すことにした
今日一日で色々とお金を使ったので出来るだけ安い宿を探したいところだが・・・
男の僕だけならいざ知らず女の子のアイシャがいるんだからせめて鍵がついている宿を探さないと
少し街の外れの宿が建ち並んでいる場所へとやってきた
中心街の宿は設備が充実しているが、料金が高い為こちらで宿を探すことにした
一泊一部屋素泊まりで風呂なし鍵なし銅貨3枚、ダメ
同じく一泊一部屋素泊まり風呂なしで雑魚寝銅貨2枚、安いが論外
かなり安い所はあるがやはりどこも設備がいまいちだ
探しあぐねているとアイシャが宿に貼ってある紙を指さした
「リュウヤ君、これなんてどうですか?」
「ん?どれどれ・・・一組限定で鍵付き風呂付き朝夕の食事付きか。で、肝心の値段は・・・銅貨3枚!?」
他の所に比べて設備も整っていてしかも食事付き。それでこの破格の値段か
あまりの安さに逆に怪しさを感じるがここほど条件がいい場所もないだろう
本当にヤバかったら他を当たればいい。とりあえず入ってみることにしよう
宿の扉を開け中に入るが受付場所には誰もいないようなので声をかけてみる
「すみませーん。誰かいますか?」
「はいはーい、ちょっと待ってくださいねー」
少しすると奥の方から女の子がやってきた
小柄な女の子でアイシャより幼い感じだ
「お待たせしました!やすらぎ亭へようこそ!ご宿泊のお客様ですか?」
「あの、表の貼り紙を見たんだ。それで一組限定って書いてあったけどまだ空いてるかな?」
「あ、あの貼り紙を見て・・・ふむふむ、ほー・・・」
少女が僕とアイシャを頭の上から足の先までを品定めするように見てくる
「な、なに?」
「うん!合格!お二人共文句なしです!」
急に合格と言われても状況が飲み込めず困惑する
「えっと、どういうこと?」
「あぁそうでしたね、説明がまだでした。実は今まで雇っていた女性の方が妊娠中でしばらくの間お休みをとることになってしまいまして・・・長期で入ってくれる方も見つからず、お母さんと私の2人では流石に手が回らなくてあの貼り紙を出したんです」
「つまり料金を安くする代わりにお店を手伝ってほしいってことか」
「あの、私達冒険者でして申し訳ないですけどそんなお手伝いできないと思います」
「朝は宿泊のお客さんの対応だけなので大丈夫なんです。夜酒場としても開放していて、その忙しい夜の時間帯だけお手伝いをしてもらえれば十分です」
条件は悪くないと思う。夜接客を手伝うだけでこの値段なら今の僕達には有り難い話だ
「僕はいいと思うけどアイシャはどう?」
「接客はやったことないですけど、ここより条件のいい所なんて他にないでしょうし私もいいと思います」
「よかったー!助かります。あっ私メルって言います」
「僕はリュウヤ。よろしくね」
「アイシャです。よろしくお願いしますねメルちゃん」
「よろしくねー、メルの母でグレイスでーす。ごめんねー仕込みで手が離せなくてー」
調理場からメルの母親が顔だけ出して挨拶を済ましすぐ戻っていった
どうやら本当に忙しいようだ
とにかく宿はなんとか確保することが出来て一安心だ
接客もバイトで経験しているからまぁなんとかなるだろう
「ではお部屋に案内しますね」
「うん、お願い。今日はもうやることはないからこのままお店手伝うよ」
「それは助かります」
メルに案内されて二階へと上がっていく
案内された部屋はベッドに机がしっかり2人分用意されていてクローゼットもついていた
扉の先にはお風呂場もあり言うことなしだった
ベッドの上にはこの店の制服が置かれていた
「この制服を着てください。アイシャさんは獣人用のが確かあったと思うのでついてきてください」
「分かりました。リュウヤ君またあとで」
メルとアイシャが部屋を出ていき1人になったので制服に着替えることにした
制服は白シャツに黒ベストにネクタイ、黒のパンツとオーソドックスなものだった
「これでいいかな」
部屋の鏡でチェックする
自分で言うのもなんだが中々様になっていた
前世の自分だったら完全に服に着られていたが今の見た目ならしっかり着こなしている感じがする
準備が整い一階へ降りる
周りを見渡すと誰もいない。まだアイシャの着替えが終わってないんだろう
椅子に座って少し待っているとガチャッと扉を開ける音が聞こえた
振り向くと制服を着たアイシャが立っていた
「ど、どうでしょうか?」
メイド服!ロングスカートでエプロンにはフリルがついている
腰の辺りからはもふもふの尻尾が飛び出していて実に可愛らしい
「うん、凄く似合ってて可愛いよ」
「あ、ありがとうございます。えへへ」
尻尾を高速で振りだすアイシャ。分かりやすいなぁ・・・
狐というより犬みたいだ。じいちゃん家にいた柴犬のコタロウを思い出す
「本当はミニスカートで出て欲しかったんですがアイシャさんが凄い拒みようだったので諦めました」
「メルちゃんが持ってきたの短すぎてその・・・見えちゃいますよ!」
(どんだけ短いの履かせようとしたんだ・・・)
「あ、あのリュウヤ君も似合ってますよ。その・・・カッコいいです」
「え、あ、う、うん。どうも・・・」
格好いいなんて生まれて初めて言われた
明らかに動揺して変な返しになってしまった
言ったアイシャも照れていて2人の空間が甘い雰囲気になる
「はいはい、いいですかー。そろそろ始めたいんですが」
メルの一声で場の空気が戻り我に返る
「ごめんごめん。で、なにをすればいい?」
「あと20分ほどでお店開けるのでその前にテーブルを拭いておいてメニューを置いてください」
「わかった」「わかりました」
十数卓あるテーブルをアイシャと二手に分かれ淡々と拭いていく
拭き終わったテーブルにメニューを置いていき準備完了
「準備は良さそうですね。ではお二人共開店です!」
メルの合図で夜の営業が始まった
開店からすっかり時間が経ち、最後のお客さんが会計を済ませ帰っていく
結果から言えば大反響であった
理由はアイシャだ。始めは客もまばらで余裕を持って対応できたが、客の誰かがアイシャの事を周りに話したのかアイシャ目当ての客が急増して店はいつも以上に活気があったようだ
夕食もまかないで簡単に済ませてすぐ仕事へと戻る始末だった
僕も女性客には評判は良かったが男性層が多かったのでアイシャには遠く及ばなかった
まだ14歳でこれだけ人を集めるのだ、大人になったら凄まじい事になりそうだ
「お疲れ様でしたー。疲れましたねー」
アイシャが椅子に座り机にぐったりと突っ伏している
いつもしっかりしているイメージだったので新鮮に感じた
「お疲れ様。凄い人気だったね」
「そうですかね?お客さんをさばくのに一杯一杯でした」
「お二人共お疲れさまでしたー。お二人のお陰で過去最高売上です♪これからもお願いますね!今日はもう休んでください」
メルにそう言われ、僕とアイシャは部屋と戻り部屋のお風呂でサッパリしてからベッドに入る
「今更だけど一部屋で大丈夫だった?なんだったらもう一部屋借りるよ?」
「いえ私も一緒で大丈夫ですよ。そこまで負担かけたくないですし、リュウヤ君なら安心です」
そう言われるのは素直に嬉しいが、僕だって男だから全く警戒されてないというのもなんだかな・・・
そんな煩悩を振り払い、明日の話を切り出す
「明日はギルドでリリアーナさんのとこに行って依頼を受けようか。どんな依頼になるか分からないけど頑張ろうね」
「はい。初めての依頼、成功させましょうね。おやすみなさい」
「おやすみー」
明日の依頼の無事達成を祈り2人は眠りについた
眠りについてどれくらい経っただろうか。ふとトイレに行きたくなり目を覚ます
アイシャを起こさないようゆっくりと歩き、用を済ませベッドに戻るとアイシャの声が聞こえてきた
「お父さん・・・お母さん・・・」
「アイシャ・・・?」
反応はない。寝ているようだが魘されていて瞳からは涙が流れていた
両親の夢でも見ているのだろうか、こういう時何も出来ない自分が悔しい
アイシャが魘される事がなくなるよう僕は温かく見守り、これから楽しい思い出を作っていこうと心に決めた
明日も19時に投稿します
読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします




