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♯20

 王宮の会議室に通されたオレとイリスは、ドワーフ王ドゥーリン、祭司長サーラ、ドワーフ鋼鉄騎士団隊長オレグ、獣人王クレイグ、エルフ魔道師団隊長フラムと、二十名ほどの武官、文官のがズラッとならんだ前でプレゼンする事になった。


 最初どうなるかと思ったんだけど、紛糾していた会議室は、話がまとまり、ぬり壁退治の方針は決定する。獣王クレイグとドワーフ王ドゥーリンは、オレの肩を抱いて健闘を祈ってくれた。


 敵が夜間や明け方に、一気に強襲してくる可能性もあったので、作戦の決行は、早朝日の出と共に開始される事になった。


 もちろん、それ以前に敵が仕掛けてきた場合は前倒しとなる。


 なお最悪の事態も想定して、城砦都市を放棄して、外壁を乗り越えて進入して来たウーズごと、首都を焼き払う計画も同時進行中だ。


 この場合は多数の市民に被害が出る事が避けられず、かといって今現在において城砦都市から移動しようとすれば、人の動きにつられたウーズが、移動中の民間人を襲う可能性もあり、避難もままならない。


 エルフの首都リュミエールから、魔導師二百名の中隊と支援部隊四百名が山越えルートで此方に来てくれるが、到着は三日後。


 人族のエルランディア王国は、打診した使者がまだ戻ってもいない。今以上の支援は難しい情況だ。


「エルランディア王国は、多分来ない」


 城壁の上で待機しながら夜を明かすオレの所へ、フラムさんがやってきてポツリと呟くように言った。


「あそこのダニエラって言う魔法使いみました。彼らも転移できるのでしたら、来てくれたら助かるんですけど残念ですね」


「爆炎のダニエラか、彼女は大陸でも一、二を争うレベルの魔女だ。そうだね彼女が来てくれたら、実にぴったりの活躍の場なのにね」


「エルランディア王国が来ない理由でも……?」


「うむ、ここだけの話だけど、あの国は今内情が悪くてね、国王の体調が悪く暫く表に出ていないのだが、その跡継ぎをめぐって、国内でもめてるんだ」


「後継ぎ問題ですか、ありがちな話ですね」


「うむ、継承権一位の第一王子ドミニクというのが凡庸な男でね、継承権二位の第二王子アーベルが非凡な男なんだ。そしてアーベルは、エルフの秘宝、光剣を使いこなす才能持ちだ。この第二王子が、わかり易い手柄をたててしまうと困る人達がいるんだろうね」


 ああ、あのダンジョンで出会った彼がアーベルなんだ。


 エルフの秘宝、五百年たってもまだ使えるとか凄いな。もう、骸骨はやっつけちゃったし、わかりやすい手柄たてちゃってるのにね。


「僕はアユムくんから聞いてるから、エルランディア王国でベーゼがアーベル王子達のパーティに討伐されたのは知ってるよ。でもね、王国サイドからその情報はまだ流れてこないんだ。変だろ?」


「誰かが、王子の手柄を隠蔽してるんですね?」


「その可能性が高い、そしてその場合、王子は今自由に動けないだろう。まったく嘆かわしい話さ、大陸を揺るがす事態のさなかに内輪揉めだ」


 フラムは、ほーっとため息をつく横顔も絵になっている。ちょっと見とれていたオレの視線に気が付いて、くすっと笑ったフラムが唇に人差し指をあてて囁いた。


「アユムくん、これからは僕と君だけの内緒話だ。君は口の硬い男かな?」


「言うなと言われて、それを喋るのは恥だと思ってます」

 

 フラムは、手に掲げていた布切れから、古ぼけた鞘に入った長剣を取り出した。


「これをあいつのど真ん中に突き刺すんだ。君ならきっと出来る」


 フラムはそういって、鞘から少しだけ剣を引き出してみせる。夜目にも青く輝く刀身は、あのアーベルという王子が持っていた光る剣とそっくりだった。


「世界に二本しかない光剣の一本は、我が国王様の腰にある。すなわち、これはそれではない」


 フラムは声を小さくして続ける……。



「旅立つ前に国王様に呼ばれて、人払いしてこれを預けられたんだ。これはベーゼとの闘いに赴く者持つものだと仰られて。国王様は今本物の鞘にそっくりなレプリカを挿していらっしゃる。絶対内緒だぞ、バレたら一大事だ」


 フラムに剣を包みごと押し付けられて、つい受け取ってしまう。


「フラムさん、オレでも魔力とかないですよ。そういう才能はないって言われてます」


「アーベル王子も魔力は無いよ。アユム君、光剣は魔力ではなく精神力の影響が出るんだ。もうだめだと気持ちが折れたら弱く、絶対に倒すと強く願えば強くなる。悪用しようとすると光らないそうだ。君は大丈夫だよ、僕が補償しよう」


「わかりました。こいつでアレを三枚におろしてきます」


「火加減は任せてくれたまえ」


 フラムさんは、オレの肩を叩いて最後の準備に掛かりにいった。


 もうじき夜が明ける。決戦の朝だ。



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