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♯21

 祭司長のセーラ嬢が言ってた通り、朝日が昇り、今日も快晴の暑い日になりそうだ。


ブオオオ……とラッパが鳴り、城砦都市の正門が音を立てて開いていく。


 城門から出てくるのは、獣王クレイグを先頭に獣人国の精鋭五百。全員騎乗していて、青と白の吹流しが風にたなびいている。


 横一列に並び整列する騎馬の列の前に、獣王クレイグと参謀のアドリアが出てきた。全員が獣王の一挙一同に注目する。


「皆の者、五百年前の『カ・ア・アイ』において、先陣を駆けたのは誰だ!」


 ウオオオオ……と城壁を揺るがすような歓声がまき起こった。


「闇の王を追い立て、奈落へ突き落としたは誰だ!」


 フウウ……フウウ……フウウ……。戦士達が拳で自らの胸を叩いて答える。


「この大陸で、最高の狩人は誰だ!」戦士達の咆哮が最高潮に達する。


「狩るぞ」

 獣王が抜刀し剣を高々と掲げ、全軍が抜刀して唱和する。


「狩るぞ」

 咆哮が三度繰り返される。


「前進」

 はじめはゆっくり、そして徐々に騎馬の列はスピードをあげ、巨大なウーズの所へ真っ直ぐに向かっていく。


 城の城壁からは太鼓が打ち鳴らされ、ドワーフ達が一斉に地面を叩く音がリズミカルに空気を震わせている。


 騎馬の列は二手に別れ、ウーズの前を挑発するように左右から通過していく、騎乗からスリングを使って投げられた油壷が、ウーズの壁の様な巨体に当たって割れていく。


 ぶるぶると震えるように巨体を揺さぶりながら、それでも動かなかったウーズは、騎馬から投げられた松明が油に引火して燃え上がった瞬間、一気に動き出した。


 獣人軍の動きは、まるで大きなクラゲをからかうように、その横を縦横無尽に通過する魚のようだ。所詮、馬の背から投げつける程度の油の量なのだが、それが五百騎も走り回って、火をつけてくるのだから、アレに感情があったら絶対にキレるだろう。


 そしてウーズは、見るからに解りやすく怒り狂って、騎馬の群れを追いかけはじめた。


 城壁からは、眼下の光景が良く見える。


「すげえな獣人軍」

 

 つい見とれて呟いてしまって、隣にいたフラムに笑われてしまった。


「大陸の全ての騎士団において、こういう開けた場所で機動戦をやったら彼等に勝るものはいないよ」


 フラムの言葉にイリスが満足そうに頷いている。


 巨大なウーズは騎馬に翻弄されて、既に投石器の射程内に入っている。


 だが、まだ発射命令はでない。騎馬隊を追いかけていたウーズの動きが一瞬止まり、城壁の方へ向けられ、それから大勢の人の気配に誘われるように、猛然と街へ向かって進んで来た。


「撃て」


 投石機が唸り、次々と油樽がウーズの壁面に命中し油をぶちまける。


 引火させていないので、ウーズの勢いは落ちず、城壁に体辺りしようと、そのまま脚を止めずに迫ってくる。ウーズの衝突地点と思われる城壁から、一斉にドワーフ達が退避していく。


「よし、今だ」


 フラムの合図で魔導師達の火球が飛び、城壁まであと少しの地点までせまったウーズから一気に火の手があがった。轟音をたてて、燃え上がるウーズが城壁にぶつかる。


 大きく崩れた城壁の隙間をこじ開け、乗り越えようとするウーズに、左右から油の樽が飛んできて、まるで城壁全体が燃えているかのように火の手が高い位置まで上がっている。


 総員退避の命令が掛かり、城壁の上から次々とドワーフ達が退避していく。


 城壁の上から、内側にむけて降ろしたロープで次々と降下していくのだが、あちこちで球突き衝突になっていて、アレ大丈夫だろうか。


「アユム、頼んだぞ」


 オレはフラムに背中を叩かれて、託された剣を握りしめ城壁の上を走った。後ろではフラム以下四名の魔導師が、両手を高く掲げ、その上に巨大な水の球を膨らませていく。


 四人の手から同時に水の球が放たれ、燃え上がるウーズの頭上にぶつかった瞬間、大音響と共に炎の柱が城砦都市の外壁の高さの倍ほどまでに膨れ上がり、周囲は爆弾が落ちたかのような延焼に包まれた。


 油火災を水で消そうとしてはいけないとか、よく言うけど、実際にこれだけ大きな油火災に水を放水したら、どれだけの水蒸気爆発が起こるのか、正直わからなかったんだけど、オレの足元では、轟々と燃えあがり半分ほど溶けながらもがくウーズの姿があった。


 小型や中型のウーズが集まってきて、大型に合体しようとしているのだけど、獣人軍が総出で邪魔してるので復活が遅い。



 炎と黒煙の中、城壁からウーズに飛び乗ったオレの前には、半分露出した核が剥き出しになっていた。


 預かった剣を抜き、一気に突き刺す。



 水の中で風船を割ったような、こもった音が大きく響き、巨大ウーズの身体は崩れて地面に流れていった。




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