37! 激昂
雨の夜、暗黒の空はあらゆる光を断たせる。視界は前の物が見えない程度だった。ランプを番頭から貰ったので、それよりも更に視界は広がる。一瞬一瞬光る雷は、壁だけとなると役にすら立たない。
風呂上がりに出てきたものの、近くには雨水の川も近くにできている。ごまちゃんはコトの腕に引っ付くこと無く、ただ手を掴み続けた。
「…もしかしたら、雷とか怖いの?」
コトはごまちゃんに尋ねてみたが、ごまちゃんは顔を激しく横に振った。
「いやいやいや!そんな事ないってば…さっき言ったばかりでしょ…。」
ごまちゃんは微笑みをコトに見せた。
「無理しないで…。」
「こっちが言いたいよ。」
ごまちゃんがひっそりと呟いた。
暫く歩いて、大通りに着いた。大通りには平民等は全くいない。しかし、一つの人影が向こうにあった。コトは不思議に思い、少し近づいてみた。そこには、巨体があった。コトはいかにも不自然に感じたので、強めに言った。
「そこで俺を追っかけて暗殺を企もうとしても、もう遅いよ。こっちでも向いたらどうだ?…魔神……エクストゥ!」
ごまちゃんは目を疑った。こんなのが魔神というのはあり得ないと思った。しかし、巨体は体をこちらに向けた。
「ジャ…ジャーーン。大正解だね。そんな遠距離からばれたのは予想外だよ。」
ゆったりとした口調で、魔神は正体を現した。大雨の中、ごまちゃんには二度目の戦闘は身体が保たないかも知れないとコトは危険を感じた。
「ごまちゃん、怯えることないよ…。」
そう言い、コトは魔神、エクストゥを睨んだ。エクストゥは、笑いながら喋った。
「クククク…二人共良い目をしてるね〜〜その熱い視線。でも、怖いから止めてくれない?」
急にエクストゥの殺気が出てきたが、コトは退かずにそのままでいた。しかし、後に気づいた。ごまちゃんがエクストゥを睨み続けていたということに。
「…ごまちゃん?嘘だろ…」
ごまちゃんは傘もどきから出てきて、エクストゥに近づいていった。
「…アンタが…アンタが…コト君を狙って…。」
魔神エクストゥは鼻で笑い、ごまちゃんに言った。
「へぇー。あの罪悪の魔王に惹かれるなんて、見る目が節穴な人にしか分からないよ。大体、コト君なんてどこに居ても邪魔なだけだよ。どうせなら、一緒にあの阿呆でもどっかに追い出してやろうぜ。」
ごまちゃんは激昂のあまり、突っ込んだ。剣に光を帯びさせて、速く。
「…ァアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
ごまちゃんは強引にエクストゥを斬った。光の輝きが、辺りからも暫く見えた。ごまちゃんはエクストゥの存在を確認した。エクストゥはいつの間にか再生されていた。
「…いいじゃんか。嬢ちゃんの魔法。もっと大胆に、使ってみろよ…。」
「コト君をそんなに馬鹿にして…許せない…」
ごまちゃんはエクストゥの挑発に乗ってしまった。コトはごまちゃんを止めようとした。
「止めろ!ごまちゃん!!それ以上は…」
「絶対に…」
ごまちゃんが力を入れ始めたとき、蛍の如く光がまた、今度はごまちゃんの辺りに漂ってきた。
「ごまちゃん…待って!!そんなにやったら…」
ごまちゃんはコトの事を無視してしまった。最終的に、ごまちゃんは魔法を繰り出した。エクストゥが飛んだところを狙った。ごまちゃんは同時に足にも少し光を帯び、跳んだ。
「光……」
エクストゥは魔法の用意をした。
「…大剣!!!」
「魔導、サークルダーク。」
光大剣の一部分が消され、エクストゥの魔法に押されてごまちゃんは落ちてしまった。
「っあっ!!!」
背中から着いた。とても重く、痛く感じた。ごまちゃんが大声で言う。
「待て!!」
エクストゥはごまちゃんに言った。
「もうここに様は無いぜぃ。俺の目的は達成したんだからな。」
「待てって!!!」
ごまちゃんが言ってももう来なかった。魔神はどこかへ飛んで行った。
「…うっ、うう…コト君、ごめんね…」
ごまちゃんは涙目になった。しかし、ごまちゃんの声にコトの反応は無かった。
「…コト君?」
ごまちゃんはコトに近づいた。すると、コトが横なって倒れてしまっていた。
「…コト君、コト君?しっかりしてよ!」
揺らしても、反応はなかった。ごまちゃんはふるえてしまった。そして、涙も流し、泣き叫んだ。なぜならば、コトは…
…息を引き取られたからだった。




