38! 出陣
仮で暗くありながらも、現在の魔王城は一つ一つの部屋が広く、仕掛けも多い。あたかもからくり屋敷の様だ。また、裏口は存在するらしい。そこには番をする強面の魔族がぞろぞろと居た。その裏口には、魔族が生活するための場への道となるが、魔法で飛んだ方が早い。なお、バルコニーからいつも魔族が入ってくる。
そこへ、魔神エクストゥが此処に来た。そして、ジェドが待っていた。
「…俺について来いって言ったはずだが、今更戻って来やがって…何か手土産とかあるのか?」
「コトの魔力を絞り上げたぞ。確か…ゴマチャンって奴を利用してな。彼女も、コトの野郎の魔力を吸い取って戦ってんだもんな…挙げ句の果てコトから魔力一気に持っていったもんな!まっ、これで一安心!!一件落着!っだよな!!」
ジェドが怒りを抑えながらエクストゥに尋ねた。
「…テメェ…首飾りはどうした…。」
「………。」
エクストゥは黙ってしまった。暫く沈黙が続いた。
「…ははっ!!」
「『ははっ!!』じゃねーよ!!!あれを持って来なかったら意味がねぇじゃねえか!!!俺が欲しかった能力があの中に…あれと今の位があれば、もう今でもこの世界を屈伏させるぐらい容易にできるのに!!!あれを持たせたままだったら…って聞くぐらいしろ!この役立たずがっ!!!」
エクストゥは部下に声をかけていた。ジェドは激怒しそうになった。
「ちっ…こうなったら、俺達から出る!!貴様!!!今すぐバルフデを五体!!それと地下牢のオークを籠に入れたまま出せ!!時間が無い!!」
「は…はっ!」
小さめのオークがジェドの命令に従い、直ぐに部屋を出た。
「俺は行っても…」
「もう貴様はこれ以上手を出すな!!仕事を増やしやがって…」
「それなら私達はいかが致しましょうか。」
一人の男の姿をした魔族が言った。一人の少女を隣に連れて、その様子を見ていたらしい。しかし、ジェドは眉間に皺を寄せた。
「駄目だ。お前らには此処を任せる。なんせ、あそこにはデミがまだ現役だからな。お前らには無理だ。」
デミの名を聞き、二人は身震いした。
「俺はもう支度する!!」
ジェドは部屋を去っていった。
同刻、豪雨が降った後ごまちゃんはコトを急いでペイジの店に運んだ。そして、コトを再びベットへと寝かせた。その時からごまちゃんはコトから離れなかった。
「………。」
ごまちゃんはコトの顔を見続けていた。たまに額を撫で、自分の空いている心を満たそうとした。それでも何か寂しさが残った。
( あそこで、コト君に頼れば良かった…そうすれば、コト君が笑っていられたのかな…私に向けて…君がいなかったら…私…)
そこにはごまちゃんとコト以外の人の姿は無く、ただ雨の音だけが聞こえていた。その時のごまちゃんはまだ涙を流したままだった。
「コト君…もう戻って来ないの?」
ごまちゃんが何度コトに尋ねても、反応は勿論無かった。
「寂しいよ…まだ会ってすぐなのに…やっと約束もできたのに…やっとここまで親しんできたのに!」
ごまちゃんはコトの腕を掴んで泣いた。夕食も食べておらず、ずっとそこに居る。寝室の前でデミが立っていた。
「…もういいだろ。飯でも食べて、そんな不吉な事でも忘れ…」
「黙って…」
デミはごまちゃんの顔を見ていられなかった。デミ自身も辛くなりそうな顔だった。
「そうか…コトは息を止められたが、生死はまだ確認されてない。」
ごまちゃんはそう聞くと、顔を上げてデミの方を向いた。
「…どういうこと?私はコト君を貪って…」
「そんな事だけでは死なないはず。魔力を一気に取られただけ。魔力を与えれば、コト君も…」
ごまちゃんは直ぐにコトの手に力を入れたがデミが止めた。
「やめろ。アンタ程度の魔力じゃ、コト君の助けにすらならないわ。暫く考えてみろ。これからの自分についてな…」
そう言い、デミは部屋から出て行った。ごまちゃんはコトの布団に寝て、寄り添った。そして、コトを抱きながら呟いた。
「コト君…死んでないなら…起きてよ…!」
その間に、ジェド達は支度を終えて、今まさに向かおうとした。
「お気をつけて。」
「すぐに行って支配してから帰る。待ってろ。」
そう言い、灰色の多大なドラゴンに乗り、叫んだ。
「行けぇっ!!!!」
ドラゴンは羽ばたき、速いスピードでグランへと向かった。そして、陽は今から昇り始めようと出てきたところだった。




