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フィンズベリー・パークの夜は、まだ熱を孕んでいる。
150万の溶岩ペンライトが静かに息を潜め、4000万のオンライン視聴者は画面の向こうで息を呑む。
焼けた鉄板のステージは、まるで生き物の皮膚のように脈打っていた。
桜の灰が舞い、業火の残り香が空気を焦がす。カノンは中央に立つ。
赤いストラトキャスターが、汗と炎に濡れて光る。
オレンジとピンクが溶け合った髪が、風に揺れて、まるで燃え残りの炎のようだ。
「まだ……私はやれる」
低く、掠れた声。
でも、その一言で、観客の胸の奥に残っていた火が、再び灯った。リンが、静かにスティックを握り直す。
ビートが、ゆっくりと、でも確実に、心臓の鼓動のように鳴り始める。
ユイのシンセが、星屑のような旋律を紡ぎ出す。
ヒナが、背中を向けて立つ。
ミヅキがベースを静かに抱える。
アオイが、マイクを握りしめる。そして、カノンが、一音だけ、鳴らす。タンッ。
それは、まるで「さよなら」の音だった。
アオイの声が、静かに、でも確かに響く。
今もまだふいに風の中 よみがえるのカノンの指が、弦を這う。
タッピングが、まるで記憶の欠片を拾い集めるように、細かく、優しく、でも確実に。
言えるな言葉達の奥 静かに揺れてるヒナが、背中合わせでレスポールを鳴らす。
ツインリードが、絡まり、解け、また絡まる。
まるで、過去と今が交差するように。でももう迷わないよ 涙は強さに変えてゆくリンのダブルキックが、静かに加速する。
シンバルが、星屑のように散る。
ミヅキの低音が、地面を這い、観客の足元まで届く。
さよならは次のページをめくる勇気
新しい空へと続く道カノンのソロが、炸裂する。
スウィープが空気を裂き、ハーモニクスが夜空に星を描く。
でも、それは怒りの炎ではない。
それは、別れの痛みを、優しく包み込む光だった。アオイが、カノンの肩に寄りかかる。
額を合わせ、髪が絡まる。
二人の息が、混じる。
汗が、飛び散る。
桜の灰が、まるで雪のように舞い始める。
観客のペンライトが、溶岩から、朝焼けの色へ。
カノンが、奇跡のソロを弾く。
それは、天才と呼ばれた過去の自分への、別れの音。
でも、同時に、新しい自分への、始まりの音。
そしてカノンのギターで曲を締める。
一礼。
そして、カノンが、静かに呟く。
「ありがとう……リナ」
バックステージ。
リナが、ギターケースを抱えて、涙を堪えている。
「カノン……あなたは、もう、過去じゃない」
ステージの光が、静かに消える。
でも、観客の胸の奥に、灯った光は、
決して消えることはない。
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【https://drive.google.com/file/d/1A5SG4dWK2Eoix4Xdp4AXOIidTDRZVgpJ/view?usp=drivesdk】




