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第十三話 記憶喪失

週末は投稿するつもりはなかったのですが、久々に評価をいただいていたので続き投稿します。

作者は非常にチョロいです。

「事故に遭ったとか頭を打ったとか何かきっかけがあった訳ではないみたいなんだけどね。何故か中学校くらいまでの事が思い出せないのよ」


 月菜さんが記憶喪失? でも記憶がないってそういう事だよな。


「そうなんだ……」


 それしか言葉が出てこなかった。


「まぁ今もたまに記憶はないし似たようなもんだけどね」


 月菜さんは自嘲するように笑っていた。この人は俺が思っていたよりも闇を抱えていて、それでも周囲にはそれを悟られないようにしている。前に話をしたときに感情を露わにした事があったが、普段はそれを感じさせない。なんて強い人なんだろうか。


「あのさ、月菜さんがよかったらだけど、月菜さんも一緒に動物園に行ってみない? あ、それとも他の場所がいいかな? 水族館とか遊園地とかテーマパークとか」


「私が貴方と動物園に?」


 自分でも何故かわからないけど、気がついたら月菜さんを動物園に誘っていた。


 先ほどまでの無表情とは打って変わって困惑しているような表情になっている。

 

 冷静になって考えてみれば流石に俺みたいなモブと動物園に行っても楽しくないか。水族館やテーマパークにしても恋人同士で行く定番のデートコースだもんな。これだと俺が月菜さんをデートに誘っているようにしか見えない。


 だいたい葉月さんが俺を誘ったのもどうしても動物園に行きたかったけど一人動物園が恥ずかしかったとかそんな理由だろうし。


「あ……ごめん……。デートがしたいとかそんな深い意味はなくて、動物園に行った思い出がないなら新しく作ればいいかなって。さっき動物好きって言ってたし。でも俺と行かなくても月菜さんならもっと素敵な男の人と行けるよね。あ、それに動物園とか流石に子供っぽいか。ハハハ。ごめんね。さっき言った事は忘れて」


「…………いいわ。動物園、行きましょ。…………楽しみ」


 最後のほうは声が小さくて聞こえなかったが月菜さんから返ってきた返事はまさかの動物園に行くという返事。


 月菜さんは菜月さんが時折見せるような笑顔になっていた。月菜さんの自然な笑顔、初めて見たかもしれない。銀髪の美少女が見せる笑顔に引きこまれてしまいそうで、思わず目を逸らしてしまった。


「夏目君、明日は予定ある?」


「特にないよ」


「じゃあ明日動物園に行きましょ。早目に行っておかないと中間試験もあるし」


 明日はGW最終日なのでひたすらゴロゴロ過ごそうと思っていたが笑顔の月菜さんに誘われては断る理由もない。


 近くの動物園の営業時間をスマホで調べて待ち合わせの時間や場所を二人で決めていると貴之から電話が鳴り、再び合流する事になった。


 よくよく考えると月菜さんと動物園に行く予定は立てたが、葉月さんと行くのはいつにすればいいのだろうか? 自由に表に出てこれるんだろうか? 月菜さんの予定もあるだろうし……。


 貴之達との集合場所まで人込みの中を移動しながらそんな事を考えていた。


 明日は二人で過ごす事になるしその時に月菜さんに聞いてみよう。って自分から誘っておきながら明日は女の子と二人で出かけるという事実を今更再認識する。さっきも思ったが男女二人で動物園ってこれもうデートだよな……。


「ゆーくん! 月菜ちゃん! こっちこっちー!」


 集合場所に行くと梨愛は壁にもたれながらカップに入ったアイスを食べていた。隣にいる貴之は両手に紙袋を持っている。当初の目的である荷物持ちという仕事をしっかりとこなしているようだ。


「もう! 二人が急にいなくなるから心配したよ。二人きりになりたくてどっかにフェードアウトしたのかと思ったよー」


「そんな訳ないだろ、お前らが先に行きすぎなんだよ」


 俺は貴之を半目で睨む。梨愛は冗談まじりに笑いながら言っていたがそれを実行したのは貴之だ。


「梨愛達はもう買い物終わったのか?」


「うん、行きたい所は回ったよ」


 そういえば俺達はずっと話をしてて買い物とかできなかったけど月菜さんは見る物とかはないのだろうか?

 

 隣にいる月菜さんに買い物とかしなくて大丈夫? と小声で聞いてみたが特に欲しい物はないらしい。


「これからどうするー?」


 と梨愛が聞いてきたので俺も服が買いたいと言うと


「じゃあ私がコーディネートしてあげるよ! さっきオシャレなメンズのお店見つけたんだよねー。ついてきて!」


 と梨愛が歩き出す。このままでは再びはぐれてしまいそうだったので後ろも確認しながらゆっくり行ってくれとお願いしておいた。

 

 梨愛が目を付けていたというお店に入ると話しかけてくる店員さんを無視して店内を一周。


 その後トップスとボトムスを5着ずつ手に取ると店員さんに試着しますと伝え、俺と服を試着室に押し込んだ。


 3人が試着室の前に並び、俺が試着して、披露して、試着して、披露してを繰り返す一人ファッションショー状態だ。


 俺が全ての服装を披露し終わると3人でどれがよかったと議論が交わされている。俺はファッションセンスがゼロなのでこの議論に混ざる事はない。


 審査の結果、順位が出たようなので、1位と2位のコーディネートを購入する事にした。店員さんは何かを言いたげにずっと試着室の辺りをウロウロしていたのだが全く出番がなかった。


 俺の買い物が終わると貴之も選んで欲しいと言い出し、貴之のファッションショーが始まる。貴之も5種類の梨愛コーデを着ていたのだが、結局全部購入していた。



「今日は服選んでくれてありがとな」


 一通りショッピングセンターを回った俺達は夕方には現地で解散し、帰路についた。家が近いので帰りは梨愛と一緒だ。


「ゆーくんがあんな所で服を買うなんて珍しいね」


 確かに俺は今まで服には無頓着だったので日本で一番有名であろうファストファッションのお店などで適当に買う事が多かった。


「そうだなぁ。でもたまにはお洒落な服も着ないといけないと思ったんだよ。でも俺はどんな服を選んだらいいか全く分からないからな。梨愛が選んでくれて助かった」


「うんうん、今日の服はどれもゆーくんにかなり似合ってたと思うよ。言ってくれたら私がいつでもコーディネートしてあげる」

 

「あぁ、そのときはまたお願いするよ」


「その時は二人で買い物に行こうね。今度はゆーくんに私の服も選んでもらおうかなぁ」


 今日の買い物が楽しかったのか、気に入ったものが買えたのか、梨愛はご機嫌だった。

お読みいただきありがとうございます。

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