4話 ゴブリン村での救助
あのゴブリン切り裂き現場から少し離れた彼は、今後について考えていた。そう、スキルなどについてだ。狼になったために、嗅覚強化と聴覚強化は自分の意思で範囲を広めたり、狭めたりすることができることに気がついたのだ。
おお〜!これって範囲広げてた方がいいのかな?やっぱりゲームとかでも積極的に使えばスキルレベルとかってあがるもんな!嗅覚強化と聴覚強化は常に全力で使っていよう!
その他にも、気配察知と魔力察知とかもだな!ノーマルスキルは常に使って行こう!あ、そういえば、知りたいこととかの詳細が出てくるのは鑑定のおかげだった。例えば、そこにある草とかを調べてみると、俺にはただの雑草にしか見えないのに………
『毒草』
毒の草。間違えて食べると死に至ることもある。薬草と間違えて採ってしまうことがある。
『薬草』
薬の草。傷の治りが早くなる。毒草に似ている。スープに入れて飲むと意外と美味しい。
と、まあこんな風に出てくる。危なかった。間違えて食べるところだった。
うわ!なんだ?このひどい匂いは……?むむむ………そっちの方からものすごい量の弱い気配があるぞ…!!魔力の反応は……かなり弱いけど……何個かあるな……??ちょっと行ってみるか……!
おお!?おお!!!走るの………めっちゃ早いぞ!?!?すごい!!自分の体じゃないみたいだよ!っと!行ってる間にもう着くぞ!意外と近かったらしいな。
と、自分の新しい体に感動している彼の目には、ゴブリンの村があった。100匹はいる。その中にはホブゴブリンやゴブリンメイジ、ゴブリンプリンセス、村の中心にはゴブリンキングの姿も見える。
彼はもちろんホブゴブリンなどの進化個体についての知識など持ち合わせていないので、全てをただのゴブリンだと思っている。
うっわあ〜気持ち悪いな………酷すぎるよ…。なんだか気配とか魔力の反応がでかい奴らがいるけど……体がでかいだけかな?いけるかな?よーし、じゃあ俺の経験値になってくれ!いくら経験値が少ないゴブリンでもこんだけの量がいればレベルもあがるだろ!今は質より量だよ!
そういいながら彼は駆けた。ひ弱なゴブリン達は、彼が勢いよく当たっただけで絶命した。鳴り止まないレベルアップの声。彼は反応が弱く、体の小さいゴブリンから狩っていった。
『火魔法を取得しました』
『水魔法を取得しました』
『土魔法を取得しました』
『風魔法を取得しました』
彼のレベルが10になった時、脳内にその声が響き渡った。ゴブリンたちの中にいる、ゴブリンメイジの魔法を見ていたら、取得出来たようだ。彼は全力で駆け回りながら魔法を連発していった。使い方はもちろん鑑定で確認したのである。
魔法とはイメージ。イメージをより明確に持つことにより、発動することができる。現代でゲームをして生きていた彼にとって魔法とはイメージしやすいものである。もちろん、覚えたてなので範囲も威力もまだ弱いが、ゴブリンを絶命させるには充分であった。
気付いたら残りはゴブリンキングだけである。ゴブリンキングに使った技はもちろん諍いの爪である。理由は簡単。一番反応と体のでかいゴブリンをかっこよく倒したかった。それだけである。そんな彼の後ろの建物から微かだが、反応を感じる。
ん?なんの気配だろう?……これは…!!人間じゃないか!しかも人間の女ばっかり!!しかも瀕死だ!!さっきここに来る途中水場があった!水を持ってこよう!この入れ物でいいや!
彼はその後川とゴブリン村を何度も行き来した。瀕死の女性達に水を運ぶために。全員の女性達の口に水を入れることが出来たのは日が落ちてからだった。狼の体では苦労する作業なのだ。顔色がよくなったのを確認して、彼はその場を離れた。
ゴブリン達の血の匂いに寄せられた魔物達を一掃するために。
無理やり繋げた感が否めない。