32話 百年前ノ真実
四天王達は城の外で勇者一行の戦士と戦っている。あの戦士はただ者ではない。魔法使いや僧侶の援護が入っているとはいえ、その二人を守りながら四天王全員と渡り合うなど尋常ではない。
そして、一番の規格外の勇者は今、玉座の間の扉を開けようとしているところだ。扉が開いた。ああ、これが勇者か……なんとも…眩しく…儚い。
「覚悟しろ魔王!!俺が!倒してやる!」
「笑わせてくれる!!その勝負受けて立つ!!!」
「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」」
突いて、払って、流して、躱して、斬る、そして受け止める。高速の攻防が続き、勇者の魔力を通した剣、魔王の魔力を通した剣。その二振りの剣は、勇者と魔王の本気の攻防に耐えられるはずがなく、粉々に砕け散った。
殴る、蹴る、その一撃一撃全てが全力。生命力と魔力は両者共に低下していく。それに反して高まっていく闘気。二人が雄叫びをあげ、ぶつかる度に魔王城が揺れ、壊れていく。
魔王が着地した床が崩れ、態勢を崩した瞬間に勇者の拳が魔王の腹を貫いた。その場に崩れ落ちる魔王。勝利の雄叫びをあげる勇者。四天王達は魔王の死を知ると魔王城から四方に飛び立った。
勇者一行の戦士シュヴァインは、その場に座りこんでしまった。無理もない。四天王と渡り合っていたのだから、体がいうことを聞かないのは当たり前である。
魔法使いのアカリと僧侶のアキラが到着すると、崩れ落ちる魔王と、立っている勇者がいた。二人は勇者に近付いた。勇者は仲間たちに背を向けていた。
勇者は刺された。地球にいた頃から友だと思っていたアカリとアキラの双子に。満身創痍だった勇者は崩れ落ちる。
「は、なしが違う。魔王を倒、せば、魔王がもって、い、る送還の魔、法書で、俺は、地、球に帰れるんじゃ、なかった、、の、、、か」
勇者のその言葉を嘲笑う双子。見下ろし、最初からこうするつもりだったと告げる。その後にアカリがこう続けた。
「送還の魔法書で地球に帰れるのは二人だけなのよ?知らなかったの?私達には枢機卿が教えてくれたの。召喚された日の夜にね?」
「アカリ。もう行こう。はやく家に帰ろう」
「そうね。アキラ。それじゃあバイバーイ」
この一週間後、ヒューマ聖国には、勇者、魔法使い、僧侶の墓が作られた。それを知ったシュヴァインは、シュヴァルツ王国を建国した。
魔王の記憶は勇者が刺されたところで途切れている。死亡したショックにより、この先は覚えていないのである。
崩れゆく魔王城の玉座の間。そこに取り残されたのは勇者と魔王。二人ともこの魔王城から逃げれるだけの力は残されていない。その中で、勇者は絶望した笑いをしていた。
「ははは、はははははは、なんだ、最初から裏切られていたのか…ああ、ああ、俺は、俺はなんのために!!」
「貴様、裏切られたのか………」
「ああ、そうみたいだな。信じられないし、信じたくはないがな」
その後、勇者と魔王は語り合った。自分の冒険の思い出、城を建てた時のことなどを。魔王が勇者に告げる。
「我は、復活するであろう。百年後程の未来になってしまうと思うがな。我はヒューマ聖国を許さぬ。多少記憶が無くなってしまうかもしれぬがこれだけは忘れん。貴様の代わりに、叩き潰してやろう」
「おお、おお、そりゃいいな。頼んだぞ魔王。俺は、ここで終わりみたいだ」
「ああ、そのようだな。…………最後に、貴様の名を教えてくれないか勇者よ」
「俺の名前か?ユウト、サイトウだ。………覚えても意味は無いが、お前の名前を教えてくれないか?魔王」
「我の名は、サタンだ。貴様との語らい、中々、」
そこから先は続けることは出来なかった。魔王城の崩壊が進み、床が崩れてしまったためだ。勇者と魔王のこの事実は知られることはなく、勇者と魔王は相討ちになったと語り継がれている。
魔法使いと僧侶の行方は、その後知られていないという。
なんだか暗い話になってしまいました……




