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Ambrosia Knight 〜 遠き日の約束 〜  作者: 雑用 少尉
第5章 終わらない宿命
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番外編 遺言

 

 〈動画ファイルを開きます〉


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 なんて、言えば、良いのかな……? まぁ、いいや。


 これはね、文字通り、僕の遺言だよ。うん、ソウレン・ビャクヤとしての、最期だ。


 だからさ、つまらない話だとは思うけど……聞いて、欲しいな



 まずは、本当にごめん。心配かけた事、みんなを守れなかった事。

 今の僕に出来るのは、これを見ている君に、僕がアリアから貰った記憶を、伝える事だけなんだ。



 EAがなぜ作られたのか。



 それは、アンブロシア計画を、遂行する為の、重要な要素。計画の、要だったんだ。


 今、地球はアクトニウムで覆われている。このままだと、いずれ生物は滅びてしまう。それが今の世界での常識だ。



 でも、アンブロシア計画を立案した博士はこう考えたんだ。

 アクトニウムは、新たな世界を作る為の準備材料なのだと。



 博士は、来るべき新たな世界に人類が生き残れるよう、2つのプランを立てた。


 アクトニウムに適合した人間を造る事。そして、アクトニウムをエネルギー源とする、半永久機関を開発する事。



 これを、人間が神の食物に触れ、災厄を乗り越える願いを込めて、アンブロシア計画と名付けられた。

 その計画を立案したのは、モードランド・クラウソラス博士。



 アリアの兄であり…………エル達の、父親だ。



 博士がやった内容は、非人道的なものだった。アクトニウムの直接投与、それを実験動物や人間で行い、何とかして新たなる人類を生み出そうと躍起になった。


 側から見れば、狂っている。許される事でもない。でもそれは人類が未来を生きる為に犯した罪だった事を、彼は間違いなく、人類を救いたかったのだという事を、知っておいてほしい。



 だけどこの計画は、様々な人間によってその形を歪められた。



 クラウソラスの助手達、アーバイン、ゼオン、ギーブル。

 彼ら3人は博士に協力する中で、彼の研究成果のアクトニウムの可能性に目をつけた。



 首謀者のアーバイン・ホープ。当時のアルギネア軍研究開発主任。彼はアンブロシア計画を、軍事利用する事を考えついた。……アルギネアとグシオスの軋轢はもう戻れないところまで来ていた。彼の判断も、全否定する事は出来ない。


 ゼオンは…………そういえば、ティノンとは会った事があるって、ゼオンが言ってたっけ……。彼は医学界の権威と呼ばれる程の名医で、博士ともかなり仲が良かった。そんな彼が、親しい博士との関係を断ち切ってまで欲しかったもの……それは後の、バイオレストア手術に繋がる技術だったんだ。


 そしてギーブル。彼は博士の最初の助手だった。アクトニウムの研究を行っていた……それしか、分からない。でも、彼は何が欲しかったのか。……考えても、結論は出なかった。



 アーバイン達はクラウソラス博士の研究成果を盗み出し、アクトニウムコアの研究を開始。そしてそれを動力にした兵器開発を進めた。



 そうして生まれたのが、ゼロエンド……。始まりの、EA……。


 ……っ!! 頭が……!



 …………話を、続けよう。



 プロトタイプのゼロエンドが出来ても、肝心のパイロットが居なかった。ゼロエンド、というよりもEAのコクピットは動力部のアクトニウムコアに近いせいで、身体に悪影響があったんだ。特に初期型のゼロエンドはコアの出力が大きすぎたせいで、死者すら出ていたくらい。

 クラウソラス博士の研究成果を用いて生まれた兵器は、博士が求めていたアクトニウムに適合出来る人間が必要だった。これじゃ、笑い話にすらならないよね。


 でもそんな時、ゼロエンドに乗っても影響が出ないパイロットが偶然見つかった。見つかってしまった。



 アリア・クラウソラス。アクトニウムに適合出来た人類は、事もあろうに博士の妹だったんだ。


 当然博士は止めた。でもアリアはその制止を振り切った。



 こうして乗り手を得たゼロエンドは、戦況を覆す兵器として完成した、筈だった。




 天翼の光事件。ゼロエンドの暴走によって1つの砂漠地帯が全てアクトニウムで埋め尽くされ、アルギネア、グシオス双方が大打撃を受けた事件。あれがきっかけで、EAの技術とアンブロシア計画は凍結された。




 …………ごめん。ここから先の記憶は無い。多分アリアは、その時……。

 でも何故僕の中に、そのアリアの人格と記憶があったのか。それは分からない。



 ただ1つだけ、はっきりと言えるのは、





 アーバイン、今の、アルギネア軍総司令官が、全ての真実を知っている、という事。




 な、長々と、こんな、はな、話に付き合わせて、ご、ごめ…………っ!!


 もっと、もっと色々、は、話したかった……こんな難しい話じゃなくて……思い出とか、楽しかった事とかを……。

 でも、でも…………僕の意識はもう、消えてしま……う。だから、次の僕に、会ったら、伝えて欲しいんだ……。



 君は、君の人生を、生きて欲しい。勝手な事ばかり言ってるかもしれないけど…………これは、僕の、せめてもの望みだ。

 僕は、君がどんな選択をしようと、受け入れるよ。





 ……じゃあね。僕の、大切な、人達。さよ…………なら…………。









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