番外編 遺言
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なんて、言えば、良いのかな……? まぁ、いいや。
これはね、文字通り、僕の遺言だよ。うん、ソウレン・ビャクヤとしての、最期だ。
だからさ、つまらない話だとは思うけど……聞いて、欲しいな
まずは、本当にごめん。心配かけた事、みんなを守れなかった事。
今の僕に出来るのは、これを見ている君に、僕がアリアから貰った記憶を、伝える事だけなんだ。
EAがなぜ作られたのか。
それは、アンブロシア計画を、遂行する為の、重要な要素。計画の、要だったんだ。
今、地球はアクトニウムで覆われている。このままだと、いずれ生物は滅びてしまう。それが今の世界での常識だ。
でも、アンブロシア計画を立案した博士はこう考えたんだ。
アクトニウムは、新たな世界を作る為の準備材料なのだと。
博士は、来るべき新たな世界に人類が生き残れるよう、2つのプランを立てた。
アクトニウムに適合した人間を造る事。そして、アクトニウムをエネルギー源とする、半永久機関を開発する事。
これを、人間が神の食物に触れ、災厄を乗り越える願いを込めて、アンブロシア計画と名付けられた。
その計画を立案したのは、モードランド・クラウソラス博士。
アリアの兄であり…………エル達の、父親だ。
博士がやった内容は、非人道的なものだった。アクトニウムの直接投与、それを実験動物や人間で行い、何とかして新たなる人類を生み出そうと躍起になった。
側から見れば、狂っている。許される事でもない。でもそれは人類が未来を生きる為に犯した罪だった事を、彼は間違いなく、人類を救いたかったのだという事を、知っておいてほしい。
だけどこの計画は、様々な人間によってその形を歪められた。
クラウソラスの助手達、アーバイン、ゼオン、ギーブル。
彼ら3人は博士に協力する中で、彼の研究成果のアクトニウムの可能性に目をつけた。
首謀者のアーバイン・ホープ。当時のアルギネア軍研究開発主任。彼はアンブロシア計画を、軍事利用する事を考えついた。……アルギネアとグシオスの軋轢はもう戻れないところまで来ていた。彼の判断も、全否定する事は出来ない。
ゼオンは…………そういえば、ティノンとは会った事があるって、ゼオンが言ってたっけ……。彼は医学界の権威と呼ばれる程の名医で、博士ともかなり仲が良かった。そんな彼が、親しい博士との関係を断ち切ってまで欲しかったもの……それは後の、バイオレストア手術に繋がる技術だったんだ。
そしてギーブル。彼は博士の最初の助手だった。アクトニウムの研究を行っていた……それしか、分からない。でも、彼は何が欲しかったのか。……考えても、結論は出なかった。
アーバイン達はクラウソラス博士の研究成果を盗み出し、アクトニウムコアの研究を開始。そしてそれを動力にした兵器開発を進めた。
そうして生まれたのが、ゼロエンド……。始まりの、EA……。
……っ!! 頭が……!
…………話を、続けよう。
プロトタイプのゼロエンドが出来ても、肝心のパイロットが居なかった。ゼロエンド、というよりもEAのコクピットは動力部のアクトニウムコアに近いせいで、身体に悪影響があったんだ。特に初期型のゼロエンドはコアの出力が大きすぎたせいで、死者すら出ていたくらい。
クラウソラス博士の研究成果を用いて生まれた兵器は、博士が求めていたアクトニウムに適合出来る人間が必要だった。これじゃ、笑い話にすらならないよね。
でもそんな時、ゼロエンドに乗っても影響が出ないパイロットが偶然見つかった。見つかってしまった。
アリア・クラウソラス。アクトニウムに適合出来た人類は、事もあろうに博士の妹だったんだ。
当然博士は止めた。でもアリアはその制止を振り切った。
こうして乗り手を得たゼロエンドは、戦況を覆す兵器として完成した、筈だった。
天翼の光事件。ゼロエンドの暴走によって1つの砂漠地帯が全てアクトニウムで埋め尽くされ、アルギネア、グシオス双方が大打撃を受けた事件。あれがきっかけで、EAの技術とアンブロシア計画は凍結された。
…………ごめん。ここから先の記憶は無い。多分アリアは、その時……。
でも何故僕の中に、そのアリアの人格と記憶があったのか。それは分からない。
ただ1つだけ、はっきりと言えるのは、
アーバイン、今の、アルギネア軍総司令官が、全ての真実を知っている、という事。
な、長々と、こんな、はな、話に付き合わせて、ご、ごめ…………っ!!
もっと、もっと色々、は、話したかった……こんな難しい話じゃなくて……思い出とか、楽しかった事とかを……。
でも、でも…………僕の意識はもう、消えてしま……う。だから、次の僕に、会ったら、伝えて欲しいんだ……。
君は、君の人生を、生きて欲しい。勝手な事ばかり言ってるかもしれないけど…………これは、僕の、せめてもの望みだ。
僕は、君がどんな選択をしようと、受け入れるよ。
……じゃあね。僕の、大切な、人達。さよ…………なら…………。
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