癌と唐揚げの話
カテーテル手術にむけての検査で受けたCTで、肺に影が見つかった母。
おそらく癌でないかと本人の目の前で言われ、呼吸器外来の検査を勧められて予約も取ってくれた。そこの病院は循環器内科専門なので対応できないのだ。
紹介を受けた総合病院へ母を連れて行った。久しぶりに行くと駐車場の場所が変わっており、立体駐車場になっていた。中2階(M2階ですね)に停めエレベーターで降り、そこから裏入り口から入るが、紹介受付までかなり距離があった。ちょうど立て替え中とかで新しく建てた別棟まで歩かねばならないのだ。
入り口に貸し出しの車椅子があったので「車椅子借りる?」と尋ねたが、他人の目を気にして異常にプライドの高い母は「歩ける」と言ってきかなかった。とりあえず早く紹介受付を済ませたかったので、ゆっくり来てねと母に言って早歩きで受付まで行って書類などを渡しマイナンバーの確認も済ませた。その後ご本人は?と確認をされたので、こちらに向かっているであろう母を探して通路を戻るが見当たらず。一体どこに消えた?と焦る。
キョロキョロしていたら案内のお姉さんが、どうかされました?と尋ねてくれたので事情を話した。一緒に探してくれるというのでどんな服を着ていたか確認されるが、車に乗せた時ちらっと見たが覚えていない。
薄い茶色のコートだったような、、でも自信がない。そもそも脱いでいたら全くわからない。
気が動転したのか結構大きな声になっていたのだろう。母自ら、「ここにいる」と出て来てくれました。離れた場所のソファに座ってました。やれやれ。
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そんなこんなで診察を受けたのだが、医者の見立てはやはり癌だろうとのこと。影の形が歪なのだそうだ。
しかもそれを本人の前で堂々と言われた。
心臓カテーテル手術をしたことは循環器の病院の方から連絡済みなので、「心臓の手術をされていることですし、ご高齢なので肺癌の手術に体が耐えられるかどうかという問題もあります」と、本人を目の前にして言われた。
30代くらいの綺麗な女性のお医者さんだった。
更に精密なPET CTを撮って欲しいと淡々と告げられ、専門病院に行くことになり予約を取ってくれた。もちろん腫瘍マーカー検査のために採血もされた。いろんな検査があったり待合室でずっと待たされたりで、80代半ばの母はもうくたくたである。
ようやく14時半に全て終わって帰れることになったが、これ以上歩けないとか言い出した。
「だから車椅子を借りようって言ったじゃないの」
思わずわたしの声も刺々しくなる。母のために週に何度も呼びつけられ、家のことも家族もほったらかして世話をしているのである。この日だって8時に家を出て母を拾い総合病院に連れて来ているのだ。こちらもイライラしているのだ。
「そんなみっともない事。車椅子なんて自力で歩けない年寄りが使うものよ。それほど落ちぶれてない」とか言い出して、流石にキレそうになった。
怒ったらいけない、我慢しなくちゃいけないと、深呼吸して気持ちを整えるが、モヤモヤした気持ちは残ってしまう。
腕を支えてゆっくり歩き駐車場まで戻ったら、お腹が空いたわと文句を言い出した。
知らん、もう知らん。わたしは早く帰りたいのだ。
それでも帰りにスーパーに寄って買い物をさせて、家まで送り届けて、そしてようやく帰宅したら17時半だった。8時から17:30まで拘束されていたわけで、まるで仕事じゃないか。
帰宅したら帰宅したら晩御飯作りが待っている。洗濯物を取り込んで慌てて支度を始めたが、わたしもまた空腹なのでつまみ食いをしながらである。
唐揚げを揚げながら、缶ビールを飲んで、揚がった側から食卓に出していく。サラダは作り置きがあるので助かった。
そうかー、こうやってキッチンドリンカーになるんだなあ。
PET CTは連休明けである。
手術と言われたらどうすべきか迷うところだ。
わたしは新しい缶ビールを開けて揚げたての唐揚げを頬張った。




