会話が出来そうな人登場
「な、何する!危ないだろ!」
スーツの男は青ざめながら叫ぶ中、美和はチラリと蒼を見ると、先程いた場所には既に姿は無かった。
「あー」
諦めと呆れの微妙な顔をしながら前方の男達を見た。
他の気配はない、見える5人で全員。
前に二人、少し後方右に1人、左の男は木にもたれかかり静観して武器を持たない1人、残り1人は荷物持ち。
「おい、こいつら『はぐれ種』じゃねぇの?」
「俺ら運がい…ぐほっ!」
「うぎゅっ!」
一気に間合に入り、男の腹に手の平を向け、気を放つ。
後ろに飛ばされ、荷物持ちの男にぶち当たる。まずは二人。
「なっ!このガキ!」
「捕まえろ」
前方にいた片方と、後方右にいた男が同時に斧を振りかざし向かって来た。
左上に飛び、木を足場に高さを稼ぎ、男の後頭部目掛けて、踵落とし。ぐらりと倒れる男を足場に再び方向転換、今度は距離を取り離れる。
残り二人、相変わらず木にもたれて見学している男は動かない。厳ついごろつき風の男達に比べ、細身で整った顔立ちの男は、まだ笑顔で静観を決めている。
仲間が倒れているのに?
「…このガキいい気に…」
「そこまでだ!」
斧を持ち直し、振り上げた所で後方から低い声が響いた。凛として空気に響き通る声が広がった。
「げっ!ラクヤさん!」
バツが悪そうな顔をして斧を下ろした。さっきまで悪人役ピッタリの人物が気持ち悪い程大人しくなっている。
偉い人登場?
警戒した体制のまま、そちらに視線をむけると、6人引き連れている男性が此方に向かって来た。
体格はさっきの男達に比べると、やや劣るが、立ち振る舞いで別格と解る。
何より転がっている男達と違って、後のグループは統制が取れているように見える。
うん、死亡フラグかな。
これ以上大人数は私が負ける確率が高い。
「水を探しに来ただけだと、言ったはずだが?ファイ!何故止めない!」
木にもたれかかって動かなかった青年がのんびり答えた。
「いや〜、面白いものでも見れないかな〜と思って。実際面白かったよ。ラクヤさん。」
目を輝かせ本当に楽しそうだった。仲間倒れてるのにこの青年最悪だ。
「何を…」
ラクヤと呼ばれる男は言いかけて、足元を見ると数人の男が転がっている。完全に伸びている。
「叩き起こせ!」
再び声が響き渡る、怒気を含め。後ろに控えていた男達が慌てて対応し始め、ラクヤが此方に近寄ってきた。
怒ってらっしゃる、ですよねー。でも、そっちが悪いんだし、言い訳くらい聞いてくれるかな。いや、無理かな。ぐるぐる考えているうちに、目の前に来た。来てしまいました。
「すまなかった」
偉い人?が頭を下げている。あれ?何で?つむじが見える、そしてやはり猫耳…。
ラクヤの説明では何度も遭遇する人達に迷惑をかけては他の班が謝る対応をしているとの事。
「せ、正当防衛ですよ?そっちは刃物持ってたし…えーと、悪かったと思うなら質問に答えて下さい!」
「質問?俺に答えられる事なら」
「ここは何処ですか?」