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厄介事に首を突っ込みます

トル達は、鍛冶屋に預けた装備が今日の夕方に仕上がると言われたので、それまでどうするか朝食を取りながら話合っていた。リョクは、ふと、視界の端に何かが動いた気配が気になりそちらを見てみると、地面の柱の影から黒い水柱が立ち上がり、まるで生きているかの様にリョクを襲った。

余りにも一瞬の出来事だった為、悲鳴も上げる間もなく、黒い水の様なものに全身が覆われ、ぼちゃんと水滴が跳ねた瞬間リョクとその気配は消えていた。

次の瞬間男女の悲鳴が響きわたり、食堂は騒然となった。


以前から被害が出ており、ギルドにも依頼されていた案件。

村から半日歩く距離に魔族が住む城があり、その周辺で不規則に人や家畜が黒い液体に攫われる事件が起こっていた。(さら)われているのか、食われているのかは定かではない。

距離がある為、山頂の村では警戒心が薄れていた事が今回の原因の1つでもあった。


不運な事に今回トル達が受けた依頼でもある。

当初、話を受けた時には、メンバーの誰もがスライム討伐を連想していた。

こんな得体のしれない出現の仕方をするなら、高ランクに分けて欲しかったとボヤきながらトル、カガリ、タタラは鍛冶屋に装備の仕上がりの催促(さいそく)に向かった。

だが、トル以外の装備は仕上がっておらず、他の装備は急遽代用を購入し、目的地へ向かう事となる。

仕上がりを待つべきだったと後悔するのは後の事。


真司(しんじ)・・・誰が何処に?!」

(あお)!!聞いてどうするの?私達にはどうする事も出来ないよ?解ってる?高校生が出て行っても何もできない。これは彼らの仕事なんだし、私達は街に向かうべきだよ!」

美和(みわ)?」

美和の言っている事は正しいんだろう、行った所で力になれるか解らない。だけど・・・。

「攫われたのはリョク。今回彼らが受けた仕事でもある。仲間が被害者になるとは思わなかったらしいけどな」

真司(しんじ)さん?何で言うのよ!(あお)の事、解ってない!」

「隠した所で無駄だろう。結局噂話で誰かに聞く事になる」

不思議な体験続きで危機感が麻痺している?頭では理解している、私が行っても何も変わらない、もしかして足手まといになるかもしれない。けれど、何度考えても出る答えは同じ。

美和(みわ)!ごめん!リョクが心配だから、私行ってくる!美和(みわ)真司(しんじ)此処(ここ)で待ってて」

「はぁ、真司(しんじ)さん、恨むからね」

「そう言いながら、既に行く準備万端なのは誰だ?」

「うるさい!馬鹿(あお)は結局行くんだもん。仕方ないでしょう」

「え?」

一応止めてくれて、でも始めから一緒に行ってくれる気だったそうだ。二人には感謝しかない。

「ありがとう」

「忘れないでよ。危なくなったら、引きずってでも街へ連れて行くからね。誰を見捨ててでも」

「う、うん。気を付ける」


問題は今から出発して彼らにどのくらいで追いつけるか。この村から半日かかると聞いた。そして、昨日の鳥の時と違って魔法支援の者がいない事。

にゃう、うにゃあ、クロが何が一生懸命言っている。シバに通訳を頼むと、城に数分で行ける方法を知っているという内容だった。特に準備や用意する道具も必要ないので今スグいけるらしい。

「何よ、そんな便利な方法なるなら街まで連れっててよ」

『接点がないと駄目なんやと。今回はリョクと接点を繋いで道を開くそうや』

「???」

『要は何もない場所は行かれへん。便利すぎるもんはあらへんって事やな』

「残念・・・って(あお)魔剣(シバ)置いてどこ行くの?」

「トル達と合流する時間を考えると、私達は時間に余裕があるんだよね。ちょっと鍛冶場に行って聞きたい事があるから、ちょっと行ってくる」


宿を出て斜め向かいの店が鍛冶屋。こちらも岩をくり抜いて使われているが仕切りがなく、オープンな造りで、かまくらの様な店構えだった。

魔法を扱える者がいないなら、魔法が付いた装備品はないだろうか。そう思い店内を覗いてみたけれど、店主1人しかいなかった。

他の人はいないのかと聞いたら、今日は店じまい、恐怖に呑まれて仕事どころではない。明日からは引きずってでも再開するから、出直せと言われた。

「今ある物で魔力付与されている物はありますか?」

店頭に並べてもらった物は、指輪に水魔法の防御付与、腕輪に雷の攻撃付与、盾に物理防御付与とあるが、興味が魅かれるものは見つからなかった。今度は武器にどうやって魔法を付けるのか聞いてみた。すると、説明上は簡単、核になる物に魔法を付与して、それを打つ。話が元に戻った、結局魔法扱えないと駄目だ。


店主は魔法を扱えるのか、やっぱり街じゃないと教えて貰えないのか聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「変な子供だな。さっきから一向に怖がっていない。昼間の事件知っているだろう?大の大人でもびびっているって言うのに。

まぁいい、魔法か。基本的な魔法なら誰にでも扱える、要は集中力と想像力。街の人間は誰でも使えると都合が悪いから<特別な人間にしか扱えない>と触れ回っている、すると妙なことに皆揃って<使えるのは街の人間>と言いやがる。鍛冶場や道具屋の人間も使える奴も多少いるが、街の人間に睨まれたくないからな、わざわざ言ったりはしないな」

「魔法を付与可能な核を売って。それと、窯を貸して下さい。商売道具を貸して欲しいと、無理言っているのは十分承知している。でも、壊したりしないから!!」

「冗談だろ?子供に・・・」

「時間がないんだ!お願いします!」

「・・・本当に壊すなよ?」

「ありがとう」


核となる物は5つの鉱石の中から選ぶことになった。今の手持ちのお金では3つが限度。時間も無いし、5つ試したいのは諦めよう。集中するのは得意だけど、想像力か、何を思い描くか。今必要な物はなんだろう。

「は?何で子供が自分の小槌持ち歩いているんだよ・・・て、もう集中に入っちまってやがる」

店主が後ろで何か言っているけど、後にしてもらおう、時間がない。でも焦って失敗する訳にもいかない。


集中し、全身に気を巡らせる。小槌を体の一部と認識させる。炎が波紋の様に広がっていく。

火花が周りで弾けては消え、繰り返される。気が付くと視界が空白となっていく、けれど小槌の感覚はある。この世界に来てからの感覚、特に作業の妨げになる訳ではないので問題ない。

目の前に金色と、白銀色、そして翠色の流れがそれぞれの核に収まり、型を変え、定まっていく。

視界が戻り、終りの作業に入る、やがて望む形の物が手の中に納まった。

約束通り、壊した物も無く、綺麗に掃除が済んだ。

「よし!掃除も完了!店主、お邪魔しました」

「お、おい!もしかして、おまえ街の人間だったのか?」

「え?違いますよ、どっちかというと街に向かっている方です」

「なぁ、さっき作ったやつ、一つ譲ってもらえねぇか?金なら希望の金額を出すぞ」

この店主は、何をそんなに(あわ)てているのだろう。

「無理です、言ったでしょう?私には時間がないから。友達を助けるためにも装備は幾らあっても足りないので売れません」

「友達?・・・ってまさか」

「じゃあ、ありがとうございました。失礼します」

丁寧にお辞儀をして、全速力で宿に向かった。


笑顔で立ち去る子供に店主は呆然とした。魔法付与の仕方を聞いてきたが、あいつ自身は理解しているのだろうか。自身の魔力量が異常だという事に。小槌で核を打ち鍛える度に魔力は水流の様に空中に渦巻、窯の炎はそれに呼応するかのように、火力が増し、小槌の周りを舞い上がっていた。何故燃え移らないのかと思う位に。魔力の調整も無意識だろうか、核が壊れないギリギリの量を注いでいた。

本当に初めてか?しかも何なんだ、あの仕上がった物は。この辺りの鍛冶屋ではお目にかからない上質だ。どんな師に就けばあれだけの腕が持てるのか。

「あ、そうか師が誰かだけでも聞いときゃ良かった」

店主は次に街であの子供に会ったら聞いてみる事にした。


大急ぎで部屋に戻り、二人にも知らせる。口外はしない方が良いが、魔法は想像力で誰でも使える様になる事、それに(なら)って、魔法を付与させた(はず?)の装備品を造った事。

美和(みわ)に、金色の小さな3つの鈴が連なる髪飾りには魔法防御と雷魔法を。

真司(しんじ)に、翠色の腕輪には物理防御と地魔法を。

私の白銀色の手甲には水と風魔法を。

「使えなかったらごめん。使えたらもうけ位に思っておいて」

「あのな・・」

「でも、この鈴小さくて可愛いから良いね」

「じゃあクロ、行く方法を教えてくれる?」

『ほんまにええんか?その方法で』

シバが珍しく真面目にクロに念押ししている。

「え?何?もしかして危ない事?クロが怪我したりする方法は駄目だよ」

『そんなんちゃう。ま、本人ええ言うてるし』

室内では狭い為、宿の裏庭に移動する事になった。誰も見ていない事を確認する。にゃあと可愛い声を発すると、クロの体が青白く光り、前足でたしっと地面を叩くと青白く波紋が広がる。白い花びらの様な白いものが舞う中、地面には魔法陣の様な模様が浮かび上がった。あれ?この模様どこかで見た事あるかも?

「おい!どういう事だ!」

『・・・説明は帰ってきてからやな』

「本当だろうな」

急に真司(しんじ)が怒り出した、クロとシバに対して?一先(ひとま)ず今は怒りを収めてくれる様だけど、大丈夫かな。

青白い光は大きくなり、全身が包まれると眩しくなり目を閉じた。次に目を開けると、目前に大きな城があった。


ー地下牢ー

ぽちゃんと天井から落ちる水滴の音でリョクは目を覚ました。どのくらい時間が経ったのか、気が付くと石畳の上に横たわっていた。特に自由を封じられている事もなかったので、ゆっくりと起き上がり、周りを見渡す。暗がりの中蝋燭(ろうそく)の光で鉄格子が見え、自分が牢屋に居る事だけは解った。

日の光が一切差し込まず、天井から水が(したた)っているので地下の可能性が高い。両隣の壁向こうから鳴き声、数人の人の気配がした。


さっきまで私は食堂にいました、そして黒い水に全身を(おお)われた所までは覚えています。

「間抜けすぎます」

自分達が受けた案件に自分自身が被害者となってしまいました。どうにかして出なければ、皆心配しているでしょう。けれど、ここに居る人達も助けなければ何の解決にもなりません。そもそも何の目的で連れてこられたのでしょう。ぐるぐると思考が迷宮に入りそうになり声を張り上げた。

「あの、どなたかここが何処(どこ)なのかご存知な方はいらっしゃいますか?」

しんと静まり、誰も声を発しなかった。当然ですね、話をする余裕もないでしょうし。

静まったのはそのせいだけではなく、ドアの音が響き、上の階から階段を下りてくる数人の足音が聞こえたからだった。

「お前たち、出ろ。領主様がお呼びだ」

同じ紺色の服を着た3名の男性が全ての牢屋を開け、指示を出した。男たちの耳はやや尖っており、纏うう空気も重苦しい事から魔族だと解った。皆怯えて大人しく従っていた。


螺旋状の階段を上り、空気の淀んだ空間から出ると、光が差し込み新鮮な空気が吸い込めた。右手に中庭が面しており、円柱の装飾された柱が均等に立ち並ぶ廊下、かなり広い城。

トル達が迷わない事を祈りたいです。

場所の断定は出来ないですが、カラカル村から一番近い城と言えば、やっぱり魔族の城周辺の黒水の案件、それは確定。やってしまった感に打ちひしがれるのは後にして、汚名挽回をしなければ。私を含め11名の男女、今までの被害者は生きていた事に安堵する。

今まで私は安直に<魔族は人間を殺す、だからその前に討伐>と考えていたけれど、では今回は何の為に人間や家畜を攫ったのか疑問が残る。会話が成立出来るなら、今後の為にも聞き出したい。


大広間に案内された。出入口は今入って来たドアのみ。ドアの左右には警備員が立っており、前方の奥の壁には大きな絵画が飾られ、そのすぐ前には細かい装飾が施された豪華な椅子に腰かけている男性がいた。白髪の細身で上質な服を身に纏っており、彼が領主と呼ばれていた。

領主は人間達の入室を確認すると、つまらなそうに話始めた。

「ようやく、それらしく人数が揃いましたね。さて、光栄に思え、人間。

あなた達は今から魔獣と闘ってもらいます。」

一瞬囚われた男女は何を言われているのか理解できなかった。

「な・・なんで?!出来る訳がない!!」

「たすけて・・帰りたい!!」

「いや・・」

泣き出す者、怒り出す者、そんな姿を見ても何も感じない様だった。領主の傍に控えていた者が助言を進言しすると、領主はしぶしぶ説明を追加した。

「リギラグ様、それではどの者も理解できないかと」

「面倒だな。よく聞け、人間。我々の城では新たな魔獣を作り出す開発をしている。出来上がったが、次はどれだけの性能があるのかと問題が出た。そこでおまえ達の出番という訳だ。せいぜい楽しませろ」

蒼白した一人の男性が叫び始めた。自分達で試せばいい、巻き込むなと。けれど、リギラグは既に興味が失せ、先程助言を行った者に後は任せると言って退室しようとしていた。


リョク以外絶望を感じ動けないでいた。

「諦めないで、絶対私の仲間が来てくれるから」

周りの魔族達には聞こえないように小声で、だが、はっきりとした口調で励まし続けた。

外からゴゴゴと地鳴りが響き地震かと顔を上げた瞬間、天井がブチ破られドゴンと瓦礫が落ちて来ると同時に、天井から着物姿の綺麗な女性が、艶やかな黒髪をたなびかせ下りてきた。


リギラグは先程のまでの無表情が崩れ、驚き、そして渋い顔で女性を見た。

「お久しぶりです。黒露樹(くろつゆぎ)様、お越し頂けるなら門から来て頂きたいのですが?」

黒露樹(くろつゆぎ)は綺麗な顔を歪め男性を睨みながら言った。

「私の玩具を横取りしたのはあなたね?」

リギラグは訳が分からないと言おうとして、はっとした。黒露樹(くろつゆぎ)は人間を殺さない特異な魔族である事を思い出し、今連れてきた人間達を見て、蒼白した。もしかして、あの中に居たのかもしれないと。

「い、いえ。あなたの邪魔をするつもりは無かったのです。どの者かは存じませんが、ちゃんとお返しいたしますから、ここは穏便に」

「そういう問題ではないの。久しぶりに楽しい玩具をみつけたのに、邪魔をして気分を害した貴方が悪いのよ」


黒露樹(くろつゆぎ)と呼ばれる女性はちらりと私達の方を一瞥した後、領主に向き直り、冷徹な笑みを浮かべた。その瞬間空気が変わり、じわじわと気温が下がっていく感覚が迫ってきた。次に重圧がのしかかった。立っていられず膝を着く、酸素が不足しているように息が苦しい。

私だけではなく他の男女も苦しそうにしている、<人>には耐えられない領域。涙目になりながら、前の二人の成り行きを見守る。


広間にいる魔族達も全く影響を受けないわけでは無く、金縛りにあったように身動き取れずにいる。(かろ)うじて領主は身体の自由を取り戻し始めた。

「いい加減にしろ!黒露樹(くろつゆぎ)!!人が下手にでれば!!人間ごときに(こだわ)る方がおかしい!!」

男性の手は獣の手に、顔は人から狼の顔に変わり、鋭い爪が女性に向かって行った。目に追えない速さで攻撃が繰り出される、だが全て避けられていた。男は焦り、魔力強化を発動させ、掌から大量の爆炎が繰り出し遠距離攻撃に切り替えた。室内の温度は一気に上がり爆風と煙で視界が見えなるが、女性は風魔法ですぐに視界の煙を散らし、信じられない事に無傷で立っていた。爆炎で被害に遭ったのは近くにいた彼の部下の数人、そして、衝撃で瓦礫と化していた彼女の周辺の壁。黒髪で隠れていた耳が風により現れ、彼女も魔族なのだとようやく気が付いた。

リギラグの攻撃を扇で全ていなし、黒露樹(くろつゆぎ)はつかつかと何事も無い様に近づき、リギラグの腹を扇で軽く叩いただけで、壁に叩きつけた。大きな音と共に、壁は大きくひび割れ、瓦礫の中に倒れた。よろよろと立ち上がろうとするが、その前に黒露樹(くろつゆぎ)は細い片腕で領主の首を掴み持ち上げた。

「怒っているのはこちらなのですよ?おわかり?」

「ひっ・・たす・・け・・」

足が宙に浮いたまま、ぎりぎりと締め上げられ領主は助けを求めている。

どうしましょう。ここから逃げるなんて出来るのでしょうか。

リョクは急に不安になってきた。リギラグと呼ばれている男は、決して弱いわけでは無いだろう。身のこなしも、魔法の威力も今まで見た中でも上位。けれど、黒露樹(くろつゆぎ)はさらに上、領主を赤子の様に扱う位に。



ー城門前ー

長く続く城壁には結界が施されており、唯一の門のみが出入り可能となる。出入口を管理する為、2人の魔族の門番とし立っていた。

クロの魔法陣のおかげで、一瞬で目的の城の前に出た。のだけど、前過ぎて門番と目があった。

「あ・・・・」

「へ?し・・・侵入者―!!」

「「「クロー!!」」」

にゃあ、と返事されて、可愛いけれどそれどころじゃないー!!

門番は城の中に入り、侵入者排除の為、城の上空から黒いゴーストが大量に発生させた。

浮いてる??幽霊?!?冗談でしょ?!一気に血の気が引いた。

『生命反応はあらへん、魔力操作で作った門番・・』

「生きていないなら手加減なしよね、ミヤギやるわよ」

『魔力調整はまかせて、でも地味なのや嫌よ』

シバの言葉を遮り、美和(みわ)は弓を構え矢の準備に入る。すると一本の矢が揺らぎ分裂し始め、数十本の金色の矢が現れた。一斉に扇状の方向に放たれた矢にはそれぞれ細い光の糸で繋がっており、空中に大きな網の型が出来上がった。浮遊している黒いゴースト全てを捕獲、そしてその瞬間網は小さく圧縮され花火の様に火花が広がり爆発を起こした。

「よしっ!」

『はー、すっきりしたわ』

ガッツポーズの美和(みわ)と声のテンションが高いミヤギ。

「えー?美和(みわ)とミヤギいつの間に?しかも派手だね」

「ふふん、ミヤギと相談した成果ね。(あお)は相変わらずオカルト系は苦手なのね」

「・・・・・」

「のんびりする暇ないぞ、さっさと進まないとまた大量発生するんじゃないか?」

「そ、そうだよね!早く進もう!・・・でも結界どうしよう?壊せばいいかな?」

「結界なら外したぞ?」

「「え?」」


真司(しんじ)曰く、腕輪を付けたら、仕組みの情報が表示されたので解りやすかった。

結界は条件式の組合せだったから、新しく組み替えたら外せた。と説明されたけれど、全く意味が解らない。

創った本人の私には情報なんて何も表示されていないのに。いや、助かったので感謝はするけれど。後で見せて貰おう。

美和(みわ)は派手に凄いし、真司(しんじ)は地味に凄いな。適材適所と言うことだろうか。

気を取り直して、城に入る事にした。シバとミヤギは魔力感知も出来るそうで、最短距離で目的地へたどり着けた。大きな城で迷子にならない自信は全く無かったので感謝。


大広間に近づくにつれて、空気が冷たく重くなっていくのが、私にも解る。

大広間のドアの前に辿り着くと、美和(みわ)真司(しんじ)は膝をつき、息苦しそうにしている。これ以上動くのは厳しいかも知れない。中の様子を見てくるから、二人は此処(ここ)にいる様に伝えると、声を出すのも苦しいのか、首を縦に振って答えてくれた。

敵地にこの状態の2人を置いていくのは心配なので、クロにお願いしようとしたら、服の裾を銜えたまま離さない。

「クロ?心配してくれるの?ありがとう、でも無茶はしないから大丈夫だよ」

頭を撫で、離してくれる様お願いする。

「二人を守ってて、何かあれば呼んでね。直ぐに戻ってくるから」

笑顔でもう一度お願いすると、しぶしぶだけど離してくれた。にゃう、と鳴かれて可愛くて離れがたくなるけど、我慢して先に進もう。

『クロに激甘やな、きもいわ』

「うっさい」


重い扉をゆっくりと開き、中に入ると最悪の場面に遭遇した。

狼の顔を持つ、服装から見て男性と(おぼ)しき人物が、細腕の女性に首を握られ、しかも持ち上げられている。魔族同士の修羅場という場面だろうか。関わりたくないのが本心だけれど、部屋の中央で(うずくま)っている数名の男女と、リョクを確認した。

急いで駆け寄ると、良かった、怪我は無いみたいだ。

「にげ・・て・・」

美和(みわ)達と同じようにリョク達も苦しそうだ。原因は何?前の二人の魔族が何かしたのだろうか。

着物の女性がこちらを見て、意味ありげに小さく笑った。あの笑い方、何となく嫌だな。

「ふふ、もっと面白い玩具が現れたわ。ねぇ、あの子供を倒せたら今回の事許してあげる」

着物の女性は男性の首から手を放し、私たちの前にどさりと放り投げた。荷物の様に転がった男性は起き上がり、私を睨んでいる。

信じられない言葉を女性は発していた。え?冗談だよね?私?倒すって殺すって事?


「人間ごときが、何故平然としている?くそっ・・・・。黒露樹(くろつゆぎ)・・様、こいつは何なんですか?」

男性は驚きながら後ろの女性に怒鳴った。

「気にする事ないわ、あなたに関係ないし、何を知ろうが拒否権は無いわよ。どうする?私に消されるか、その子供に消されるか選びなさい」

「くっ、二言はないでしょうね。この私が人間に負けるわけがない!!見くびるにも程がある!」


なんか本人無視して物凄く物騒な話が飛び交っているのだけれど。でも、リョク達の体調を考えると、こんな所に長居する訳にはいかないし、何とかしなければならない。

『相手は殺しに掛かってくるやろうから、躊躇すんなや』

シバの言葉にぎくりとした。そうだ、下手をすれば怪我だけではすまない。

相手は人間ではなく、魔族だけれど、人型とは戦いにくい、とは言ってられない。

彼らは確実に強いのだろう、負ければ私だけじゃない、後ろにはリョク達までも殺される。

生き死が関わるなんて、本当に厄介な事に首を突っ込んでしまった。


狼の顔をした男性は掌に魔力を集め、鋭い爪に強化魔法を施し始めると、爪は何十倍もの大きさになった。重さは感じないのか俊敏な動きで攻撃を繰り出してくる。避ける度、壁や床が大きく(えぐ)れていく。破壊力は半端ない。

けど、速さなら爺ちゃんの方が鬼早かった!

攻撃をかわしながら、此方(こちら)も攻撃に移るが、相手の皮膚が固すぎて擦り傷程度しか与えられなかった。もっと刃が鋭い物作れば良かった。

『魔法試さへんのか?』

「あ、そうだった。でも、使えなくても笑わないでよ」

『あはははは・・・先に笑っといたる』

「む、むかつく~!」

シバとの会話は無駄な緊張感がないので助かる事もある、けれど腹が立つのは変わらない。


後ろに飛び退き距離を取りながら、左手の手甲に意識を集中させ、前方に放つイメージを。

「うりゃ!!」

徐々に水が集まり手甲の周りに大量の水の球が出来上がっていく。(あお)の掛け声と同時に水の球は細くしなやかに伸び、()ける領主の(とら)えようと、水は追跡を始める。数本が槍の様に地面に突き刺さり行動範囲を制限し、残りの水は鎖の様に領主の体に巻き付き捕えた。

「この!!人間が!!」

領主は水の鎖をぎりぎりと力で引き千切るが、水は再び鎖と変わりリギラグを捕える。

焦りの表情が見え始めた頃、黒露樹(くろつゆぎ)はふらりと前に出て。

「案外あっけないものね。もう飽きたわ。領主の座に就いて腑抜けたのかしら」


領主は黒露樹(くろつゆぎ)に何か言い返そうとするが、既に遅く、彼女がすっと扇を開きパチンと閉じると、領主は火柱に包まれ灰と化し何も言葉を発する間もなく消滅した。

壁際に残っていた困惑している領主の部下達に、言い放つ。

私に下るか、領主と同じ道を辿るか、選び中庭に集まるよう城内の者に伝えてきなさい、と。

城内は大勢の慌ただしい足音が響き渡り始めた。


先ほどまで、目の前にいた強度の肉体を持つ魔族が一瞬にして、しかも同族が(おこな)った事が信じられなかった。

あんなに躊躇なく?魔族の間では普通の事なのか?

黒露樹(くろつゆぎ)・・・でいいのか?あなた達は何がしたかったんだ?」

「何を怒っているのかしら?あぁ、領主を私が倒した事?自分で倒したかった?」

「そうじゃなくて!」

「ふふっ、解っているわよ。あなたはそんな人間じゃないものね。けれど、このリギラグは駄目ね。道楽で殺し過ぎた。しかも私の玩具まで巻き込むなんて」

「玩具?」

「あなたはとても強いのね。ねぇ、勇者になる事や、魔王討伐とか興味ない?」

「全く興味ありません」

「どうして?人間はお金や名声が好きなんでしょう?」

「言っている意味が解らない。そもそも討伐されて困るのはそっちだろう?黒露樹(くろつゆぎ)の目的は何なんだよ」

「私?私は魔王討伐に参加する勇者を待っているの。私を倒す位の強者。だから、簡単に人間を殺させる訳にはいかないわ。強者になる可能性が有ったかもしれないのに」

魔王?この人自分を魔王って言った?しかも自分を倒す人待っているの?

「倒すって・・殺されたいの?」

「殺される気はないわ。私は強いもの。でも、殺意を向けられると、ぞくぞくしない?

ふふふっ、挑んで負けた時のあの者達の苦渋の顔も楽しいわ」

うっとりとした顔で語られても。もう、本当に何言っているのか、さっぱり解りません。なんだろう、

この世界の美形(イケメン)って男女問わず変人しかいないのか?

けれど、悔しいけど、黒露樹(くろつゆぎ)の強さは別格なのは解る。冷や汗が顔を伝うのを感じながら質問を続ける。


「私は・・・・勇者志願者以外は始末するのか?」

「まさか、何処(どこ)で勇者の助けになるか解らないのに。私が飽きるまでは生かしておいてあげるわ」

飽きるまでって・・・。勇者希望者が玩具って事?じゃあ、今回、黒露樹(くろつゆぎ)が出て来たのはリョクがいたから?

「そろそろかしら」

「え?」

呟くと、中庭に面している崩れた壁の方に歩いて行った。人が十分通れる大きさに穴が開いており、その先の中庭を見て血の気が引いた。城にいた大勢の魔族が集まっており、軍隊の様に規律正しく整列している。先程の黒露樹が言っていた、中庭に集まれ、と。

無駄話をしている間に最悪の事態になってしまった?こんな大人数の中リョク達を守れるだろうか。

「従わない者は逃げたでしょうし、ここに集まっている者は私の配下になると思っていいのかしら?」

先程まで領主の傍にいた者が一歩前に出て、一同命令に従います。と宣言が響いた。

黒露樹(くろつゆぎ)はその言葉を確認すると薄く微笑んだ。

何か指示を出した後、再び此方に戻ってくると、また予想外の言葉を放った。

「とりあえず、もう帰っていいわよ」

「・・・・・は?」


闘いを開始されても物凄く困るのですが、脱力するってこんな状況なのだろうか。

彼女はそう言っていても他の魔族は解らない、警戒はそのまま続けていると、黒露樹(くろつゆぎ)はのんびりとした口調で言った。

「外にいる勇者候補は外の足止めで引っかかっていて、いくら待っても来る気配なさそうでしょう?次に期待するわ」

「・・・気になるから、聞くけど」

「何?気が向けば答えてあげる」

「村にいた着物の少年は、黒露樹(くろつゆぎ)?」

「どうしてそう思うの?」

()()()()、なんだ。()()、ではなく。理由は、3つ。1つ目は、面白い者がいたら、危険があっても近くで見学しそうと思った事。2つ目は、この世界何でも有の様だから、変身位有なのかと。3つ目は、笑い方が同じ」

薄く笑っていた黒露樹(くろつゆぎ)は肩を震わせ、声を上げて笑い始めた。

「ふふふっ・・・人間の癖に・・いいえ、人間だからやっぱり面白い。ふふ・・初めてよ、言い当てたのは」


「・・・・・」

(あお)は変な子よね。私を恐れないし、魔力酔いもしないし」

「魔力酔い?」

「濃い魔力を持った者の近くにいると、弱い者はそこの人間達みたいに生命維持が大変みたいね」

「大変みたいねって、大変だよ!魔力ってしまえないの?こう放出しないようにとか」

「なんでそんな面倒事しなきゃならないの?」

そうだった。普通に会話していると忘れるけど、彼女は魔族。常識や気遣いは人とは違う。

黒露樹(くろつゆぎ)は私の顔を見るとにやりと笑い。

(あお)が言うなら、今は抑えてあげる。でも、冒険者でもなく、そんなに強いのに何してる人間なの?」

「元の世界に帰る途中」

「あら、異世界の子だったの?でも帰れないわよ?」

「え?」

「この世界で食事したでしょう?魔素を含む物を体内に取り入れた後、あちらに行くと、魔素不足で消滅するわよ。(あお)も酸素無い空間で生きられないでしょう?」

「・・・・」

「まぁ、信じないなら、試してみるのも良いんじゃない?その時は見物させて貰おうかしら。じゃあ、私は、そろそろ帰るわね」

黒露樹は爆弾発言を発して、くるりと向きを変え、穴の開いた天井から飛び立っていった。


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