第50話
「ここには原因のものとかないのか?」
「みたかぎりではわからないんだ・・・・それに僕らはそんなに遠くへはいけないし」
瑠奈の首ねっこをつかみつつ蓮司が問いかける。
すると少年は黙って首を横に振り、困ったように笑って答えた。
「なるほど、制限されているのか・・・・」
「余計なことしないようにわざとしてるのかもね・・・」
輝が言うとふうかはうんうんとうなづきながら推測を述べる。
「でも、そうだとすると私たちのことも予想しているんじゃないの?」
「僕もそのとおりだと思うんだけどね・・・・今はなにもしてくる気配がないということは」
「見逃してやってる感でもだしているってことだよな」
初音の疑問に少年はこんなことした奴らのことを思い出しながら話す。
話を聞いていた輝がつぶやくと。
「なにそれ、ふざけるのも大概にしてほしいよ!」
「おちょくってるわけなら、なにかしないと気分が落ち着かないね」
怒る瑠奈とにこにこしながら言うふうか。
彼女達の背後には黒いオーラがまとわれていた。
「なんだろう・・・・こんなことした人が瀕死になるんじゃないか的な気がしてきたんだけど」
「それが起きてもおかしくないくらいあいつらの気分を害したんだろ」
青ざめる少年に苦笑しながら声をかける蓮司。
「でも、止めるときは止めないと駄目だね」
「そうだな、いざというときはキスでもして止めるか」
「いやいや、なんでそうなるんだよ!?」
初音がみんなに振り向いて笑うと蓮司は頷いて笑い、慌てる輝。
その様子を少年は見て賑やかだな~と眺めた。
「ところで、検索は終わったの?」
「ああ、だけど・・・ここじゃないみたいだ」
ふうかの問いに輝は頷いて検索状況を告げる。
それを聞いて全員が落ち込んでいると。
「あれ、なにかな。このひずみは」
亀裂なようなひびを瑠奈は見つけてつぶやいた。
全員がそちらへ向かうと確かにひびが無数に広がっている。
「・・・・ねえ、ここに来たのは君たちだじゃないの?」
「ああ、そうだぜ? まあ、任務地は別々だけどな」
少年の問いに蓮司が答えた。
それを聞いて考え込む少年はあることに気づいたのだ。
「もしそうなら、別のところの人に手が回っているからここがおろそかになっているのかもしれない」
「なるほど、それならこのひずみも納得いくな」
少年の答えに輝は納得しつつ、カメラで撮ると万里達に送る。
「なにしたの?」
「ああ、こういうのを見つけたらヒビを広げといてくれっていう連絡だよ」
輝に問いかけるふうかに彼は笑いながら答えた。
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そんなことをふうか達がしている頃、屋敷側では・・・・。
「お?」
「どうしたの、万里くん?」
携帯を取り出す万里につぐみが声をかける。
「いや、輝からみたいだな」
「なになに・・・・ひびを見つけたらそれを広げておけ?」
万里がそう答えると覗き込むつぐみ。
内容を見て小首をかしげていると、なにか展開が起きたようだ。
「なんか引っかきはじめたぞ」
「もしかして、あそこにあるのかな?」
光一の声が聞こえてきたのでそちらをみると怪物がたしかに引っ掻いているのが見えた。
遠目ではよくわからないが、なにかを引っかきだそうとしているのがひばり達にはわかった。
「い、いったい何をしているんですの~」
「落ち着いてしろ。大丈夫ですから」
怯えている白姫を抱きしめる晃希。
「・・・・・・・!(こ、こここ怖くないもん!)」
「芹、ほんとうに大丈夫か?」
龍星の懐に入り込んでいる芹香。
龍星が心配そうに彼女の髪を優しくなでている。
いまだにあの時の映像が頭から離れていないようだ。




