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『遺棄された列島』を重機で掘り起こせ! ~元現場監督の50歳、ゾンビアポカリプスで道を作って日本を再建する。返事は「ご安全に!」  作者: さじ


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第1話:鉄の心臓を呼び覚ませ

本作は、作者が生成AI(Google Gemini)と共同でプロット作成・執筆を行っている作品です。

ゾンビ・アポカリプスという絶望の中、銃ではなく「重機」を、破壊ではなく「建設」を武器に戦う一人の男の物語をお楽しみください。

 世界が静まり返ってから、もう何度目の冬だろうか。

 剛田ごうだは、使い込まれた軍手でパッキンの油汚れを拭い取った。吐き出す息は白く、指先の感覚はとうに消えている。だが、ボルトを締める手元に迷いはない。

 かつて、この国は音に溢れていた。

 車の走行音、人々の話し声、そして何より、街の至る所で響いていた建設現場の槌音つちおと

 それが数年前、突如として発生したパンデミックによって、すべてが「捕食者の足音」へと書き換えられた。

 目の前に鎮座するのは、錆びた山の中に残された黄色い怪物――油圧ショベル、コマツのPC200だ。

 かつては工事現場の主役として土を喰らい、道を作ってきたこの機械も、今は死んだように黙り込んでいる。周囲には、人間に興味を失い、ただあてもなく徘徊する「動く死体」たちの足音が、カサカサと枯れ葉を鳴らして響いていた。

「……よし。機嫌直してくれよ、相棒」

 剛田は呟き、改造した給油口から、貴重な精製済みの軽油を流し込む。

 この軽油を手に入れるために、どれだけの廃車から燃料を抜き取り、どれだけの死線を潜ったか。だが、剛田にとってそれは「投資」だった。

 ゾンビを銃で撃ち抜くよりも、剣で切り伏せるよりも、今の日本に必要なのはこの鉄の腕だ。

 道が塞がれ、物流が止まり、電気が消えた。人間が人間らしく生きるための「血管」がズタズタに引き裂かれたこの国で、土木こそが最強の武器になる。剛田はそう確信していた。

 運転席に乗り込み、冷え切ったシートに腰を下ろす。

 レバーを握る感触が、震えるほどに懐かしい。

 剛田は祈るようにイグニッションキーを回した。

 キュ、キュキュ……。

 セルモーターが虚しく回る。その金属音に反応し、数体のゾンビがゆっくりとこちらを向き始めた。腐り落ちた顎がガチガチと鳴り、濁った瞳が獲物を捉える。

「……来い!」

 剛田が吠え、もう一度キーを深く捻る。

 ドオン!

 腹の底に響くような轟音と共に、ディーゼルエンジンが目を覚ました。

 マフラーから黒煙が噴き出し、冬の冷たい空気を激しく震わせる。力強い振動が操縦席を通じて剛田の背中に伝わってきた。

 それは、この死に絶えた世界で唯一、明日へと続く「鼓動」のように思えた。

「さあ、仕事の時間だ」

 剛田はアクセルダイヤルを回し、回転数を上げる。

 ゾンビたちが、唸り声を上げて運転席の強化ガラスに飛びかかってきた。だが、剛田の操作は速い。

 右手のレバーを横に振る。巨大な鋼鉄のバケットが、まるで巨人の拳のように横薙ぎに振り抜かれた。

 ――グシャッ、という鈍い音が響く。

 重さ数トンに及ぶ鉄の塊にまともに衝突し、ゾンビの身体は木の葉のように吹き飛んだ。一人や二人ではない。軌道上にいた三人がまとめて、路肩のガードレールまで弾き飛ばされた。

 しかし、ゾンビには恐怖がない。仲間が砕け散るのも構わず、次々とショベルの足回り――クローラー(キャタピラ)に群がってくる。

「……足元を汚すな。整備が大変なんだよ」

 剛田は舌打ちし、今度はブーム(腕)を高く振り上げた。

 そのまま、地面を「掘削」するようにバケットを叩きつける。

 ドゴォォォォン!

 アスファルトが砕け、土煙が舞い上がる。その衝撃波だけで、足元に群がっていた数体のゾンビがバランスを崩して転倒した。そこへすかさず、クローラーを前進させる。

 ギリギリ、バリバリと、不快な破砕音が鉄の下から響いてくるが、剛田の表情は変わらない。

 彼は戦っているのではない。

 ただ、現場を「清掃」しているのだ。

 一分と経たぬうちに、重機の周りに立っている動く死体はいなくなった。

 バケットを地面に軽く擦らせ、付着した汚れを落とす。

 剛田はフロントガラス越しに、遥か先、放置車両が幾重にも重なって「ダム」のようになっている国道を見据えた。

「あと数キロ……。まずはあそこの車をどけて更地にするか」

 剛田が再びアクセルを吹かしたその時、視界の端で何かが動いた。

 瓦礫の影から、ゾンビではない――泥だらけの顔をした若者が、信じられないものを見るような目でこちらを見つめていた。

「……信じられない。本当に、動かしたのか……?」

 若者は、恐怖と驚愕のあまり、手に持っていたバールをアスファルトに落とした。

 剛田は操縦席のドアを力任せに開け、ヘルメットを被り直すと、ぶっきらぼうに言い放った。

「おい、小僧。死にたくなければ後ろにいろ。……今からここを『日本で一番安全な現場』にしてやる」

 それは、後に伝説となる「剛田組」の、そして日本の再起動が始まった瞬間だった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

本作は全12話、完結まで執筆済みです。

【次回の更新予告】

本日、2月11日(水)はこの後以下の時間に最新話を更新します!

・第2話:本日 12:00 更新

・第3話:本日 18:00 更新

・第4話:本日 21:00 更新

明日以降も、剛田の「現場」を毎日定時に更新していく予定です。

面白い、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想をいただけますと執筆の励み(重機の燃料)になります。

それでは、次回の現場で。

「ご安全に!」

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