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通りすがりの陰陽師2  作者: チャーハン・神代
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九十一、交換条件

『グ…ウウ。』


「おお、起きた起きた。どや?気分は。」


 目を覚ました龍に、紡さんはケロっとした顔でそう話しかけた。


『…何が…どういうことだ…。』


「あぁ、あんたさっきうちらと戦って負けたやろ?ちゅー訳で、たった今からウチの式神な。」


『は…はぁぁぁ!?』


 相変わらず、悪戯っ子というよりは明らかに悪人寄りの笑みを浮かべて、紡さんは笑った。


 紡さんが使った陰陽戦術『為虎傅翼』は、翼が生えた虎の様に、陸でも空でも向かうところ敵なしの鬼に金棒状態になる、物理攻撃の攻撃力が格段にアップする能力らしい。但し、攻撃力が向上する分、行動速度が少し落ちるそうだ。

 そして彼女が使わせた、未完成である拳心さんの陰陽戦術『牛歩戦術』は、術の対象となる生物や物質の時間の経ち方を遅くするものらしい。

 拳心さんが陰陽戦術の会得に時間がかかっている理由。優菜さん曰く、拳心さんの式神が『丑』であるが故の、特殊な因果関係によるものだろうということだ。

 牛の歩みは遅い。陰陽戦術の能力にも現れている様に、一見地味なように感じるが、時間という宇宙のことわりをねじ曲げる強力な力であるがために、正確にコントロールできるようになるには手間も時間もかかる。

 そして何より、『丑』だけが他の式神たちと決定的に違う点が一つある。

 丑の刻。

 丑三つ時。

 丑の刻参り。

 闇の者たちが活発に活動を始める、魔の時間。

 仲間たち式神の力を高めると共に、倒さなければならない魑魅魍魎たちの力までも強力にしてしまうサブスキル。

 拳心さんの陰陽戦術は、他の人たちとはまた違った意味で制限のかかる、難しい術だった。

 未完成でありながら、それが今回問題とならなかった理由は、対象が龍であったからに他ならない。

 龍とは本来、とても神聖な生き物である。信じる者、第六感が優れている者にしかはっきりと視ることができない、魑魅魍魎とはまた違った別次元に生きる者である。

 例えそれが、人間から姿を変えた者であったとしても。

 故に、紡さんの陰陽戦術のみが強力になり、その龍を圧倒するまでの力を出せたということらしい…が、圧倒された側は納得がいかないと言いたげな顔で拗ねていた。


『はっ…ただでさえ新米龍の乱心のせいで頭上が騒がしくて腹が立っていたと言うのに、人間の式神にされてしまうとは…屈辱だ。』


「あぁ、ちぃとうちも調子乗って痛めつけ過ぎたわ。堪忍してや。」


『できるか!馬鹿もん!!!』


 式神になったことで威厳が失われたのだろうか、先ほどまでと少し龍のキャラが変わっている気がする。


「まぁ、今回うちらに協力してくれたら、この陰陽師と式神の契約破棄にしてもかまへんで。」


『この私に交換条件を提示するとはいい度胸だ。』


 ニヤニヤしている紡さんに、龍が必死に強がっている構図がそこにはあった。

 ここで紡さんから、とどめの一撃が入る。


「あんたの奥さんも、協力することで騒ぎも収めてくれんなら、条件飲んでもええ言うてんで?」


『何!?』


 龍、八郎太郎の奥さん。…奥さんということで良いのかよく分からないが、要するに旦那さんに振り向かれた龍の辰子姫が肯定するように首を縦に振った。龍になっても、奥さんの尻に敷かれたりすることがあるのだろうか?八郎太郎は諦めたようにかぶりを振った。


『分かった…。分かった。協力しよう!』


 最早やけくそ、という表情だった。


『さぁ、言ってくれ。私は何をすればいい?』


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