親ばか再び
「どうしたんだ? 俺だけに話なんて」
「またパパが変なこと言いだしてね。今回の大会もしもチームセンヤのメンバーが優勝できなかったら私は冒険者をやめなくちゃ行けなくなったんだよ。本当、パパはしつこいんだから」
勘弁してくれよ、そんなの俺かユウナしか無理だろ。うん? それならなんで俺だけにこの話をしてるんだ? ユウナにもしたほうがよくないか?
「ユウナには話さなくても大丈夫か? ユウナのほうが優勝しそうな気がするんだが」
「センヤは甘いね。大会が一日で終わるんならそうかもしれないけど、三日間も続くんだよ。ユウナの体力が最終日まで持つと思う? 絶対、途中で力尽きるよ」
そこまで考えてなかった。言われてみればユウナが三日間の大会を乗り切れるかと言われればかなり不安な気がする。そこで体力面での心配がない俺と言うわけか。
「なんでまたこんな話が出てきたんだ? 俺があのSランク冒険者に勝った時点でモエナは俺のパーティのメンバーになったはずだ」
「パパは心配性だから。大会で負けるようなら、今後の冒険でも負けちゃうかもしれないって。冒険者なんだから危険が付きまとうのは当たり前なのにね」
あの国王は単なる心配性じゃないと思うんだが、親ばかの極みだな。しつこいのもほどがある。
「それで優勝者のパーティになら入ってもいいて言われたんだ。でももう私はチームセンヤの一員だから、そんな真似はできないっていっちゃったんだよね。だから、お願い!! 絶対優勝して!!」
モエナのパーティ加入を決めるための決闘の記憶が頭をよぎる。あの時もこんな感じでお願いされたっけ。こんなかわいい子にお願いされて断れる男なんているんだろうか? しょうがない。この大会、本気で勝ちに行こう。報酬は魅力的だったんだが、あまり目立ちすぎるのもよくないかと思ってそれなりに強い相手と当たったときに負けるつもりだったんだよな…………目立つの上等だ。俺が優勝してやる。
「任せてけ、なんてったってモエナはもうパーティの一員だからな。そんなしょうもない都合で抜けるなんて許さねぇからな。俺が絶対に優勝してやる」
「ありがとう、センヤ。私もできる限りがんばるから」
「それと、この話はユウナたちにもしたほうがいいと思うんだ。少しでも可能性を上げたほうがいい」
「わかったよ、明日みんなにも伝えるね」
こうして俺はモエナの部屋を出た。まさかこんなに本気で大会にのぞむことになるなんてな。
「おっはよーー!! ついに来たよ、この時が。今日は頑張ろうね」
「うわ!!」
いや、声がでかすぎる。何事かと思って飛び起きてしまったんだけど…………これはもうだめだ、戦闘に支障が出るレベルで耳をやられた。すげぇキーンってする。
「ほら、起きたんなら早く来てよ。ご飯食べて会場に行こっ」
「わかったから、引っ張るなって」
俺にはもう平穏な朝は訪れないのだろうか、もしかしてそういう呪いにかかったんじゃ。
「遅いわよ、相変わらずね。少しは自分で起きるっていう気持ちを持ちなさいよ」
「いつまでも甘えてたら立派な大人になれません。しっかりしてください」
なぜ俺は責められてるんだ。まだ寝坊とかそんな時間じゃないだろ、お前らが起きるのが早いんだ。俺だってこんな朝っぱらじゃなかったらちゃんと起きれるんだからな。
「今日の朝ご飯は一段と豪華だからしっかり食べてね。センヤには絶対優勝してもらわないといけないんだから」
「ちょっと待ちなさいよ、優勝するのは私なんだからね。センヤに負けるなんて嫌よ」
なんか少しむかつくが俺に対抗意識を持ってくれるのはいいことだ。これで大会へのモチベーションも上がってるだろう。
「私は報酬が出るところくらいまでは頑張るから」
「目標がしょぼいですよ、ルリ。全員優勝目指して頑張りましょう。目指せ、上位独占です」
もうこれなら昨日の話をしなくてもいいくらいにみんなの士気が高まってるな。ルリは若干自信なさそうだけど…………でもルリもAランク冒険者だし、いい順位に期待できるはず。
モエナの言った通りいつもよりも五割増しで豪華だった朝飯を食い終え、俺たちはさっそく会場へと向かった。
「そういえば会場ってどこにあるんだ? よく考えたら下見にすら行ってないよな」
「センヤは知らないの? 有名な場所だからてっきり知ってるかと思ってたよ。王都では王城と並ぶほどの有名スポットなんだよ」
城と同じくらいとなると相当すごいな。まさかそんな場所が王都に隠されているなんて。
「私も知らないわ。一体どんなところなのよ?」
「私も知りません」
「え? ユウナにテリアも!? 一般常識だと思ってたのって私だけ?」
ユウナは知らないにしても、テリアも知らないとはな。テリアの過去は全く知らないし、テリアは本当に何者なんだろうな。
「あ、見えてきたよ、あれが会場のランジニアコロシアムだよ」
前を見てみると、やたらと高い壁に囲まれた建造物が見えていた。あれが会場か、ちょっと名前はダサい気がするがそんなことはどうでもいい。もうかなりの人がある待っているみたいで、周囲には人があふれていた。
「二万人も入れるんだよ、大体王都で何かあるときはここを使うんだから」
そんな巨大なコロシアムに俺たちは今日まで気付かなかったのか? もう少し、周りのことも見ておこう。ただのあほだと思われてしまう。
「いよいよ、到着です。気を引き締めていきましょう」
モエナの今後の冒険者生活が懸かってるんだ。絶対に負けられない。




