久しぶりの国王
城に到着すると、いつもの門番の騎士が立っている。毎日ご苦労なことだ。俺にはこの仕事はたぶん無理だろう。
「お帰りですか? どうぞ」
俺たちに気が付くと、すぐに扉を開け通してくれた。これもモエナがパーティにいるからできることだもんな。ほんとに城に顔パスで入れる冒険者パーティなんて俺たちだけだろう。
前回のようにユウナとテリアが騎士に声をかけているが、当然無視された。
城に入ると、モエナに連れられて国王がいる部屋へ向かった。今回の最たる目的は金貨の交換だからな。まずは国王のところだろう。
「パパ、入るよ」
モエナがノックをしながら、部屋の中へ声をかけた。するとすぐに国王からの了承の返事が返ってきた。返事を貰うとモエナは、そのまま部屋に入っていった。
モエナが部屋に入り、少し待っていると…………ドアが少し開き、モエナがひょこっと顔を出した。
「みんなも入っていいよ、早く済ませちゃおう」
どうやら今回は俺たちも入ってもよさそうだ。入らないと話ができないのだからしょうがないのかもな。
「久しぶりだな、娘に手を出したりしてないだろうな?」
いきなりこんな確認してこなくてもよくないか? どれだけ過保護なんだ…………。
「してませんよ、それよりも今日は話があってきたんです」
「危なかったな、もし手を出していれば即刻処刑していたところだ…………チッ」
なんで舌打ちしてんの? 俺を処刑するつもりだったのか? この国王マジでやばいぞ。
「パパ、ふざけてないで話を聞いてよ」
「すまんすまん、俺にとっては娘のほうが大事だからな」
娘よりも大事なことなんてないだろ、絶対。それよりもやっと話を聞いてもらえるのか。
「実は、今日ダンジョンで金貨を見つけたんですけどそれを引き取ってもらいたくて」
「そんなものギルドでやればいいだろう、わざわざ俺のところに持てくる必要があるのか? まあ、娘に会えたからいいだろう」
当然の反応だな、今回の金貨はちょっと特殊だし実際に実物を見せたほうがいいか。
「それがちょっと金貨のほうが問題で。テリア、金貨を出してくれ」
「仕方ないですね、本来ならセンヤさんの命令を聞くのはあまり気乗りしませんが今回は特別ですよ」
そう言うと、テリアが金貨を一枚出してくれた。
「これです」
国王へテリアが金貨を手渡した。すると、国王の表情が変わった。
「なぜこれがダンジョンなどに? これならばギルドで買い取れないのも納得がいく。しょうがない、これは俺が買い取ってやろう」
「ありがとう、パパ。それでいくらくらいで買ってくれる?」
モエナに甘い国王のことだびっくりするくらいの価格で買ってくれてもおかしくないな。
「そうだなぁ、娘が頑張って手に入れたことを考えると…………この国のすべての金でどうだ?」
あほだ、前も似たようなこと言ってなかったか。
「ちょっと待ってください、金貨はそれ一枚だけではないですよ」
テリアは宝箱ごと、収納していた金貨をすべて出した。
「は? これが全部そうなのか? とんでもないことだ。さっきのは冗談として、それ全部で三億Rでどうだ?」
三億R!? とんでもない大金だぞ。ほんとにそんなに貰ってもいいのかよ。でもこれだけの金貨だ、それくらいで妥当なのかもしれないな。
なぜかユウナとテリアがひそひそと話をしている。耳を傾けてみると、そんなものですか? とかもうちょっとふんだくれるんじゃない? とか言っている。余計なことを言い始める前に話をつけよう。こいつらのせいで報酬がもらえなくなるのは流石に困る。
「わかりました、それでお願いします」
「明日までには用意しておくからまた取りに来てくれ。それとも今日も泊まっていくのか?」
どうだろうか? あ、そう言えば大会にエントリーしたんだった。きっと王都で開かれるんだろう。そうなると滞在しておいたほうがいいかも知れないな。でも戻ったほうがいいかも…………。
「今日も泊まっていくよね? 大会もあるし、そのほうがいいよ」
俺が考えていると、モエナが先に話を振ってくれた。
「そうね、そのほうがいろいろと都合がいいわ」
「転移魔法を何回も使うのは疲れますからそっちのほうがいいです」
「みんながそれでいいなら私も賛成だよ」
どうやら全員王都に残るのに賛成みたいだ。そうなれば俺も反対する意味もない。
「俺もそれでいいぞ。飯もうまかったしな」
「それじゃあ、決まりだね。パパ、しばらく泊まるけどいい?」
「当たり前だ、ずっと居たっていいんだぞ」
国王は上機嫌に答えた。よっぽどモエナが泊っていくのがうれしいんだろう。
話も終わったので、俺たちは部屋を後にした。すぐに食事になり、無駄に豪華なフルコースを堪能した。
「ちょっとセンヤ、なんでさっきは三億でいいなんて言ったの? もう少し行けたでしょ」
「そうですよ、折角私とユウナで作戦を練ってたのに」
それがわかったからだよ。この前の不動産屋で懲りろよ、余計なことするのは。あれのせいで俺たちは未だに家を持ってないんだぞ。
「国王の機嫌を損ねたりしたらどうするつもりだったんだよ。三億でも十分すぎるだろ」
「それはそうだけど…………」
「欲が出てしまうんですよ」
ほんとに危なかった。こいつらにしゃべらせてたらどうなっていたことか。
「もういいだろ、さっさと部屋に帰って寝ようぜ」
こうして俺たちの長い一日は終わった。




