悟りを開いた人がいます
ついに到達した二十四階層、思いっきり二十三階層と同じでした。なぜだ? なぜ二十三階層までこれて二十四階層にはこれなかったんだ? そんなにぎりぎりの状態だったのか? すっごい拍子抜けなんですけど…………。
「なんなんですか? 気合入れて降りてきたのに何も変わらないとか馬鹿にしてるんですかね?」
「ほんとにその通りよ。とんだへっぽこパーティだったんでしょ。二十三階層まで来てたんなら、絶対いけるわよここ」
二人ともご立腹だ。ほんとにここまで到達したパーティは何やってんだか…………。もう少し根性見せろよ。
「でもここから未到達階層なだけで、まだ下には階層があるはずだろ? そっちに期待するしかないと思うぞ」
「私はこれ以上強いモンスター出てこなくていいんだけど…………」
ルリは危険度Aのモンスターですでにおなか一杯みたいだ。これで危険度Sのモンスターとか出てきたらどうするんだろうな。ユウナに任せるしかないか。ルリとモエナじゃきついだろうしな。
それにしてもこの階層も普通に危険度Aのモンスターが出現してくる。それをものともせずに進んでいる俺たちのパーティは明らかにAランクパーティにしてもらってもよかったよな。このクエスト達成したら、上がったりするかもしれないな。この調子でどんどん活躍していけば遠くない将来Sランクパーティにもなれるはずだ。
「私も戦いたいよぉー。ここからはもっと強いのが出てくると思って期待してたのに。もうクエストは達成したんだし、少しペースが落ちてもいいでしょ? 私にも戦わせて、お願い」
モエナはあのリザードマンとの戦闘一回きりだもんな。戦闘を楽しみにしてきたんならそりゃ物足りないよな。
「いいわよ、私も飽きたしちょうどいいわ。その代わり、ちゃんと倒しなさいよ」
「ありがとう、ユウナ!!」
再び最後尾を歩いていたモエナが先頭にやって来た。
「ルリも戦わなくていいんですか? 今日はまだ一回も戦ってないですよね? いいですよ、モエナと一緒に戦ってあげてください」
「え? 私はいいよ」
拒否しているルリはテリアにより、問答無用で先頭へと押し出された。
「本当によかったのに…………」
「一緒に頑張ろう、ルリ」
このテンションの差は何だろう。俺には何の変化もないんだよな。戦闘しなければユウナが自分で歩いてくれるわけでもない。ただ、後ろに下がるだけだ。もちろん、ユウナはもう俺に全体重を預けるように密着している。これがなければ正直おんぶとかしていないかもしれない。
少しペースは落ちたものの、二人はサクサクモンスターを狩っていった。ユウナのように毎回一撃とまではいかないが、モンスターからは一撃ももらうことなく倒している。
二十四階層もテリアのおかげで一度も道を間違えることもなく、最短の経路で階段についた。
「階段があるってことはまだ下の階層があるってことだね。もう帰りたいよ。これ以上下にもぐったりして危険度Sのモンスターなんか出たら私の手には負えないから。モエナもきついんじゃないかな?」
「私は大丈夫だもん。いざとなったらセンヤが助けてくれるしね」
もちろん助けますとも、命かかってますから。でも、ユウナをおんぶした状態となるとしんどいかもしれないな。まあ、本気でやばいと思ったら、おんぶしたまんまでも割って入るけどな。
「どうしますか? 進むんですか? 戻るんですか?」
「なに言ってるのよ。ここで戻ったりなんかしたら、二十三階層で引き返したポンコツパーティと一緒じゃない。それは嫌、私は一人でも行くわ…………嘘よ、おんぶ係は連れて行くから」
ユウナの言う通りだ、ここで引き返すわけにはいかない。でも危険度Sのモンスターなんて出てきたらモエナに危険が…………。くそっ、俺はこんなことも決めれないのか。
「それではセンヤさん以外で多数決取りましょうか。進みたい人ーー」
なんで俺だけ流れるようにハブられてるの? まさかこんなことも決めれないと思われてるのか? 心外だな。さすがの俺でもこれくらい時間をかければ余裕で決めれるぞ。
「私はもちろん進むわ」
「私もーー」
ユウナとモエナが手を挙げた。これで、テリアが進みたい一派だった場合、ルリの敗北が決定する。
「ルリには悪いですが、ここまで来た労力を考えるとここで引き返すのはありえません。なので私も進みたいです」
終わったーー、ルリが負けた。手を上げることもできずに。いや、俺もこの三人が戻ろうなんて言うわけないのはわかってたけどさ。
「そうなるよね。わかってたよ。多数決ならしょうがないよね」
しょうがないとか言ってる割に顔がガチで嫌そうですけど…………。
「それでは次の階層行っちゃいますか。センヤさんはいいですよね?」
「ここでは聞いてくれるんだ。もちろんいいぞ。次からは俺も多数決に入れてくれると嬉しいんだが」
「それは無理です」
即答された。なんで? そんなにテリアの前で俺の優柔不断は猛威を振るったのか? 時間をくれ、そしたらきっと決まるから。俺だって、一度くらい多数決してみたいんだよ。
「かわいそうにセンヤ。でも私もあんたを多数決には入れようとは思わないけどね」
「おい、ユウナお前ここでおろすぞ」
「そんなこと言うのね。私の胸が当たってデレデレしてることみんなに言うわよ」
それはマジで勘弁して下さい。それより、気づいてるならやめろよ。その体預けてくるの。
「冗談だよ。いやなら、もっと離れればいいだろ」
「フフッ、もう私にそんな腕の力は残されてないわ。それにもう私は悟りを開いてるから大丈夫よ、かわいそうなセンヤに私がせめてもの幸福を与えてあげてるの」
そこはありがたいけど、なんかむかつくんだよな。
「それじゃあ、行くよ。私とルリが先頭でいいよね?」
「任せたぞ」
こうして俺たちは二十五階層へとつながる階段を降り始めた。




