このツンデレが!!
買い物を終えた俺たちはいつものごとく宿へ帰った。誰かさんたちが余計なことしてくれたおかげでまたここにとまることになってしまったじゃないか。こことはもうおさらばだと思ってたんだけどな。
「俺たちが泊ってた部屋ってまだ借りてるのか?」
「帰ってきたときに泊まるところがなかったら困るから、念のためずっと借りたままにしてるんだよ。ちょっとお金はかかったけどね」
そんなこともできるのか。便利なもんだな。とりあえず部屋がないと言う事態はこれで避けられるわけだな。
「五人であの部屋一つだと狭くないですか? もう一部屋くらい借りましょうよ」
「そうだな。俺だけ別の部屋に泊まることにするか」
「まあ、それが妥当でしょうね。でも四人でもかなり狭かったような気がするわよ」
そこは我慢してもらうしかないだろう。王都でもあれだけ節約とか言ってたしな。
宿への道のりはもう慣れたもので、すぐに到着した。
中に入ると、ルリが店員と話をし始めた。借りていた部屋の話をしているのだろう。一部屋くらい空いてるといいんだけど……大丈夫かな。
話が終わったようでルリがこっちへ帰ってきた。
「一部屋でだけ空きがあるって、もうお願いしちゃったけどよかったよね?」
「ナイスッ、ルリ! これで俺は一人部屋だな」
よかったー。五人で一部屋とかマジできつかったし…………いや、少し残念な気持ちもあるな。四人ともかわいいし、同じ部屋で寝れること自体はうれしいが……それだと、果たして俺は眠ることができるのだろうか? 緊張で一睡もできないに違いない。
「なんか気にくわないわね。センヤだけ一人ってずるくないかしら」
「そんなこと言ったってしょうがないだろ。じゃあ、誰か俺と同じ部屋で寝るのか?」
俺がそういうと、ユウナは黙った。流石に男の俺と寝るのは嫌なんだろう…………男だから嫌であって俺だから嫌とそういうわけじゃないよな? 後者だったら泣いちゃうな俺…………。
「じゃんけんで負けた一人がセンヤさんと寝ればいいんじゃないですか? そうしたら、二人と三人でいい感じに分かれますよ」
テリアの提案に女子の三人が反応した。
「それいいじゃない。そうしましょう」
「また私が負けそうなんだけどな…………」
「私がセンヤと寝ようか?」
え? モエナはいいのか? 俺と一緒に寝るの嫌じゃないのか?
「えー、じゃんけんしましょうよ。そっちのほうがおもしろいですし」
「そういうのはよくないわ。なんか私たちが圧力をかけたみたいじゃない」
「うん、ここは正々堂々じゃんけんで決めよう」
どうした? お前ら? 実は俺と一緒に寝たいツンデレさんなのか? そう思うと三人が妙に可愛く見えてきてしまう。
「三人がじゃんけんでいいって言うならそれでいいよ」
モエナもどうしても俺と一緒の部屋がいいというわけではないらしく、じゃんけんで決めることに了承した。
「それじゃ、行くわよ。じゃんけん、ぽん」
ユウナだけがグー、ほかの三人はパー。
「うそ…………私の一人負け?」
「どう見てもユウナの負けです」
ユウナが信じられないという顔で固まっている。
「それじゃ、部屋わけも決まったことだしご飯食べようよ。宿のご飯でいいよね?」
「俺も今から外に出歩くのはめんどくさいわ。ここでいいぞ」
俺に続きテリアとモエナも賛成みたいだ。ユウナはまだ現実逃避をしているのでテリアに引っ張られて連れて来られた。
ご飯を済ませた俺たちはとりあえず自分たちの部屋に向かった。俺とユウナの部屋は元の部屋のすぐ隣でまったく同じ作りになっている。二人で泊まるとなると、スペースにもかなり余裕があり広く感じる。あの四人で寝たときに比べれば非常に快適だ。
「まさか私が負けるなんて…………」
「おい、まだそんなこと言ってるのか。よく考えてみろ、こっちのほうが一人少なくて部屋を広々使えてラッキーじゃないか」
ずっとこのままというのも面倒なので、何とかユウナを正気に戻らせようとこっちの部屋になったメリットを挙げてみた。
「それはそうだけど、私がじゃんけんに負けたという事実が信じられないの。私、初めてじゃんけんに負けたのよ。天界でも一度も負けたことないのに」
「普通にすごいな。まあ、今までは相手がとてつもなく不運だったんだろ。じゃんけんなんて運ゲーなんだし、そんなに気にするだけあほらしいわ」
俺と同じ部屋と言うのが嫌でこんなに落ち込んでるのかと思ってかなりへこんでたんだぞ。まさかこんなしょうもな理由だったとはな。だからじゃんけんに賛成だったのか。なぜそこまで自分の運に自信が持てるのだろうか? 謎で仕方ない。
「もういいわ。私と同じ部屋で寝れることを神に感謝しなさいよ。きっと私が負けたのも神がセンヤを憐れに思ったからに違いないわ」
ユウナの言動にいちいち腹を立てていてもしょうがない、ここは俺が大人の対応をしてやろう。
「本当に神様に感謝だな。こんな美少女と同じ部屋で寝れるなんて嬉しすぎて泣きそうだ」
「急にどうしたのよ。なんか調子狂うわね」
ユウナが美少女っていわれてちょっと照れてる。顔が赤くなってるぞ。なんか少しやり返せたような気がするな。今度からもこういう感じで行こう。
その後はほんの少し上機嫌になったユウナから前のように部屋の廊下部分で寝れとは言われずに少し布団を離すだけで許してもらえた。ユウナは褒めれば案外ちょろいな。まあ、相変わらず緊張でなかなか寝れなかったけどな。




