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初クエストで蹴り神降臨

 テリアが持ってきたクエストの紙にはでっかくモンスターの討伐と書かれていた。


「おい、いきなりモンスター討伐クエストに行く気かよ!! 最初はもっと……こう……採集クエストとかいろいろあるだろ」


 俺がそういうとテリアは、



「何言ってるんですか? 今、クエストを見てきた感じからするとどう見ても採集クエストなんかより討伐クエストのほうが報酬がいいんですよ。私たちは期待の新人なんですよ、いきなり採集クエストなんかに行くわけないじゃないですか。もっと大胆に行きましょう。安心してください。私がついてます」


 なんでこいつはこんなに自信に満ち溢れてるんだ。テリアが高いって言われたのは回復魔法とサポート魔法だろ! 全然戦闘向きじゃないじゃん。これ結局俺だけ戦わされるやつだろ……。


「それでよく見えないがどんなモンスターの討伐クエストなんだ? 初心者の俺達でも行けそうなやつなんだろうな」


「もちろんですよ。私だって無茶して死にたくはありませんからね。今回は無難にキングコボルトの討伐です。私たちが通ってきた森の主のような存在らしいです。これくらいなら私一人でも余裕ですよ」


 なにいってるのこの子? 頭おかしいのかな? さっきの森の主をいきなり倒す気ですか? しかも私一人でも余裕って言ってるよ。胸張ってなんか誇らしげだし……。なんかこの光景見たことあるぞ。…………そういえば初めてあった時もこんな感じだったよな。もしかしてこの子ちょっとあほなの? こんなクエストいきなり行くなんてありえんだろ。



「俺は今回は辞退させていただきます。モンスターと戦ったこともないのにそんなクエストに行くとか普通に無理です。ごめんなさい」


「なんで急に敬語になってるんですか?! まあそんなことはいいです。見てくださいよこのクエストの報酬金額百万Rですよ!! これをクリアできれば当分はお金を気にしなくて済むと思いませんか?」


 そういうことか報酬金に目がくらんだんだな。ただのやばい子かと思ったわ。でもいくら報酬がいいからといってこれはさすがにないよな。誰が初めてのクエストで森の主を倒しに行くんだよ…………。


「流石にこれはやめとこうぜ。もっとクエストをクリアして経験を積んでから受けるクエストだろ……どう考えても。しかもそんなに報酬金が高いってことはそれだけそのキングコボルトが強いってことだろ」


「そうですか。さすがに無理ですよね……。そう思ってもう一つ選んできてるんです。これです、どうぞ」


 そう言い少ししょんぼりしながらクエストの紙を渡してきた。


 見てみると森トカゲ三匹の討伐と書いてあった。

 トカゲかぁ。それくらいなら俺達でもいけるんじゃないか? そんなクエスト持ってるんなら先に出せよな。


「おお、いいじゃないか簡単そうでこれにしようぜ」


「わかりました。今日のところはこのクエストに行きますか。そうと決まればさっそく受付をしに行きましょう」


 テリアは受付のお姉さんのところへ走って行った。


 日本でのトカゲを想像しておっけー出したけど流石に大丈夫だよな。でかくても三十センチくらいだろう。


 少し不安だったがあまり気にせずテリアの後をついていった。


「すいません。このクエスト受けたいんですけどいいですか」


「はい、わかりました森トカゲ三匹の討伐ですね。報酬金は2万Rになります。さらに一匹多く狩るごとに5千R報酬が追加されます。ぜひ頑張ってみてくださいね」


 すげーなトカゲを三匹狩るだけで2万Rかさっきの宿だと五回泊まれるじゃん。しかも追加報酬もあるなんて……。よし、頑張ろう。でも俺武器とか持ってないな…どうしよう……まあトカゲだし素手で行けるか。


「ではセンヤさん、特に持っていくものもないので出発しますか。生息地はさっきの森らしいのでそこまで行きましょう」


「ああそうだな。やることもないし早速行くか」



 やばい……初クエストでテンションが上がりまくりだ。それにしても初クエストがトカゲかぁ……もうちょっと異世界っぽいのがよかった気もするな。


 当然だが移動中なのでテリアをおんぶしている。もうなんか当たり前みたいになってきたな……。


 少し歩くと森に入り、この森ならどこにでもいるらしいので道から外れて中に入っていくことにした。


 適当に歩いていると少しひらけた場所に出た。


「いましたよ。あそこの日陰のところで寝ています。これはチャンスです。やっちゃいましょう」


 森トカゲを発見したのかテリアが急に右のほうを指さして小さい声で囁いてきた。

 そちらを見ると確かに日陰があり、よく見るようなトカゲが寝ていた。……でもなんかおかしいな。主にサイズが……。少し距離があるのにも関わらずかなり大きく見える。


 おかしいと思ったんだよ三十センチくらいのトカゲ三匹で二万とか。なんだよあれ? 俺何も武器持ってないんですけど。


「やばいだろ。あのトカゲ相当でかいぞ。素手でどうにかなるレベルじゃなくないか?」


「なに言ってるんですか? トカゲくらいにビビらないでくださいよ。あんなのにその調子じゃ私のパートナーとしては失格ですね。見ててください私がサクッと狩ってきますから」


 なんでこの子こんなに自信に満ち溢れてるの? しかもパートナーて何? 

 そんなことを考えているとテリアが森トカゲに近づいていった。


「おい、何してるんだよ危ないぞ早く戻ってこい」


「大丈夫ですよ。私に任せてください。いきますよ。まずは一匹です!!」


 そう言い何をするのかとはらはらしながら見ていたら足を大きく振りかぶり渾身の力でキックを繰り出していた。


「やぁー!!」

 

 まあしかし渾身のキックといっても女の子のキックなのでトカゲはびくっとなったもののノーダメージのようだった。


 当たり前だが寝ていたトカゲを起こしてしまっている。身の危険を感じたのかテリアはこっちに全力で逃げてきた。するとトカゲは怒ったのか急にうめき声のような咆哮をあげた。……周りから森トカゲがぞろぞろと集まって来てしまった


「何してんだよ!! マジでやばいぞこれどうする? 逃げるか? でも逃げたら今日の宿代が、くそぉせめてなんか武器があれば。素手でどうしろってんだよ!!」


 そんなことを言っているうちに一匹のトカゲがこっちに突進してきた。


 このスピードなら何とかよけれるか? 


 いざよけようと思い集中しているとなぜか俺の服の後ろ袖がきゅっとつままれていることに気づいた。

 後ろを見てみるとテリアがとても怖そうにぶるぶると震えていた。しかも泣きながら。あ、これ俺がよけたらテリアに当たっちゃうな……。よけられないじゃん。あんなに自信満々だったくせに…………仕方ないな。ここは俺が守ってやるしかないか。


 そう覚悟を決めトカゲの体当たりを受け止めるために腰を少し落とし重心を前に置いた。身体能力高いって言われたし俺ならトカゲの体当たりくらいじゃ死なないだろ。そう信じてトカゲの体当たりを受け止めた。


 ドンッ


 俺はなんとか吹っ飛ばされないように本気で力を入れていた。あれ? おかしいな? 思ったよりも全然衝撃がないぞ?


 ついビビってつぶってしまっていた目をゆっくりと開けた。目を開けると俺に体当たりしてきたトカゲが苦しそうにもがいていた。


 あれ? なんか逆にダメージ受けてるんですけど……なにこの状況、え……俺ってもしかしてかなり強いの? 全然痛くなかったぞ。もしかして俺ならテリアみたいにキックしたら倒せるんじゃないか?


 少し冷静になり今の状況を分析していたら先ほどまで苦しんでいたトカゲが少しずつ回復してきているようで起き上がろうとしていた。


「やばい、とりあえずこいつをやらないと……俺も渾身のキックをお見舞いしてやるか。いくぞ! おりゃ!!」


 ブンッ  ドカッ


 かなりすごい音がして、遠くのほうになにか飛んで行った。


「え??」


 目の前にいたトカゲの胴体だけが残り頭がきれいに消えていた。うそぉ? 俺のキックやばくない……さっき飛んでったのトカゲのあたまじゃんか。とんでもない飛距離出てたぞ。これサッカーだったらどこ蹴ってんだよって大ブーイングだな。て言うかトカゲグロッ。


「おーい、テリアとりあえず一匹やったぞ」


 俺がテリアにそう呼びかけると背中からひょこっと出てきた。トカゲの死体を見て少しびっくりしていたがこっち見て、


「…………あれ? え?…………流石は私のパートナーですね。でもやはり私のキックがきいてたようです。もうかなりふらふらでしたから」


 それは俺に体当たりしてきて逆にダメージ食らってただけだよ。すごいなまだ涙目なのに頑張って強がってるよ。……なんかかわいいな。いやいやまだトカゲいるの忘れてた。さっきの調子ならキック一発で倒せるな。よし一気にかたずけよう。


「じゃあ俺は残りのトカゲを倒してくるからそこで待ってろ」


「はい、私がいざというときは回復させてあげるのでご心配なく。後ろは私に任せてください」


 相変わらず言動だけは素晴らしく頼りになるな。見たところあとは五匹なので頑張りますか。


「よっと。……あれ?」


 トカゲに接近しようと足に力をこめダッシュしたら、驚く程早くて横を過ぎ去ってしまった。足もこんな速くなってんの?俺ほんとに身体能力やばいな。気を取り直して少し軽めにダッシュし、一匹ずつ蹴り飛ばした。途中からはトカゲたちも逃げまどいだしなんかかわいそうだったが報酬がかかっているので心を鬼にしとどめを刺した。


「五千! 五千! 五せーーん!!!」


こいつが一匹当たり五千になることを思い出しついうれしくて叫んでしまった。


「よし、終わったな」


「すごすぎですよ。なんですか……あれ? とんでもない速さで移動しながら全部一撃で仕留めてましたよ。もう人間業じゃなかったです。一体今までなにして生きてきたらそんな身体能力が身につくんですか?」


「まあまあそんなことは今はいいじゃないか。それより早く帰ってクエストクリアしたって報告しに行こうぜ。あぁーなんかすっきりした」


 なんか今日いろいろあったけど体を動かしたらすっきりしてきた。なんかテリアに疑われてるけどまあしょうがないか。疲れたし後で考えよう。さあ、帰るか。


「帰るんならおんぶしてくださいよ。さっきの戦闘でもう動けないんですよ」


「なに言ってんだよ、戦ったのほぼ俺じゃんか。俺のほうが疲れてんだよ。自分で歩けよ」


 そんなことをいって一度は拒否したがテリアが不機嫌になり駄々をこねだしてしまい、結局おんぶする羽目になった。あーあ俺これからもテリアの足になるのかな?


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