70/75
善人
今まで生きてきた70年において
私は一度の間違いも悪事も働いていないと
神や仏に誓って言えるというくらいには
善人であろうとしている人間だ
子供の頃からずっと良いことと
呼ばれることばかりこなしてきたつもりだ
品行方正、真面目、と呼ばれてきた
だがこの生き方を誇ったことは一度もない
善に縛られていることを
いいことと思ったことはないからだ
人間は善にも悪にもなる生き物だから
だからこそバランスが大事なんだ
偏りすぎてはいけない
仮に善に偏るとその人間はきっと
とんでもない悪事を起こすことになるだろう
善に縛られているからこそ私は
今、目の前で苦しんでいる猫に
引導を渡すことができない
それが長く彼を苦しめることになるのだとしても




