散る桜 残る桜も 散る桜
散る桜 残る桜も 散る桜
等しく訪れるものに違うところがあるならば
訪れる終わりの刻だけだ。
笑顔が眩しい君の顔に
少しずつ陰りが見え始めたのは去年の夏だった
助からない病で病は半年なのだと言う
そこまで仲のいい関係ではなかった
当時は昨日今日知り合ったばかりの赤の他人だった
それでも知り合ってしまったことに変わりはなく
聞いてしまったことを忘れることもできなかった
だからこそ何もかもを投げ出して
僕の全てでこの子のことを記憶しておきたくて
ひたすら会って書いて、描いて、書き殴った
言の葉に揺蕩う風と黒髪を
僕は全て書き連ねることができるのだろうか
君の全てを少しでも多く、完璧に
残し、残して、輪郭を捉え
消えないように
手のひらで掬った記憶の砂粒は
拾い集めて持ち上げた端や隙間から
どんどんとこぼれ落ちていってしまう
全てを拾いたくてまた一から拾い集める
だけど風に吹かれて雨に流されて。
守っても、護っても、衛っても
少しずつ失われてしまう
彼女はいつも笑っている
僕はいつも無表情で笑っている
好意なのか同情なのか
この気持ちが何なのかすらわかっていない
ただ全てが手遅れになる前に
彼女の記憶を、記録を
生きたという軌跡の奇蹟を残さなければならない
その使命感だけが僕を突き動かしていた
全てが終わった時彼女のために
そして何よりも僕のために
やり残したことがないように
そして全てが終わった時に
彼女は悲しそうに静かに
笑ってありがとうとだけ言った
僕はその笑顔を記憶した
だけど記録には残さなかった
僕の全ては正しかったのだろうか




