第15話 「黒幕を探せ!!!」
前回までのあらすじ! 脱税の罪で投獄されたポーラの父・クロードを救うため、1000万ゴールドの詰められたバッグを持って城に向かうアルノ! だがそんな彼のもとに2人の怪しい男が現れ、バッグを強奪し消え去ってしまった! 果たしてどうなる!?
「な……なんてことをしてくれましたのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「も、申し訳ありません、お嬢様……」
アルノが1000万ゴールドを奪われてから数分後!
すぐさま宿屋に戻った彼は、これまでの経緯をポーラに説明した!
すると怒髪天の勢いで怒りだし、アルノの胸をぽかぽかと殴りまくるポーラ!
「ふざけんじゃないですわよ!!!!! どう落とし前を付けるつもりですのよ!!!!!」
「面目ない……」
ポカポカポカポカ!!!!!
「超がんばってお金を貯めたのに!!!!!」
「すいません……」
ポカポカポカポカ!!!!!
「ごめんで済んだら警察はいらないのですわ!!!!!」
「はい……」
ポカポカポカポカ!!!!!
どれだけ殴られても、アルノは平謝りをするしかない!
「もうおしまいですわーーーーー!!!!! 私の人生はお先真っ暗ですわーーーーー!!!!!」
そしてポーラは床にうつぶせで寝っ転がると、泣きわめきながら右に左にと縦横無尽に転げまわり始めた!!!
ゴロゴロゴロゴロ!!!!!
それからなんやかんやあって1時間後。
「まあ、過ぎてしまった事をくよくよと引きずっていても仕方ありませんですわね」
ようやく落ち着いたポーラは、椅子に腰かけて足を組み、紅茶を優雅に飲みながらさらに続けた。
「ねえアルノ、こんな格言を知ってる? “女児向けアニメを見ながら飲むビールが結局一番うまい”」
「いえ、存じ上げませんね」
「そりゃそうですわよ。今考えたんだから」
「は、はあ……」
困惑顔で立ち尽くすアルノ。するとポーラは、懐から1枚の名刺を取り出し、それをアルノに差し出した。
「これは……?」
アルノが眉をひそめながら、彼女から名刺を受け取る。
そこには、“占い師ギュスターヴ”、“貧民街でいつでも営業中”と達筆の書体で書かれていた。
「これは……あの時の占い師の名刺ですか!」
「ええ、そうよ」
ポーラは以前、インチキ占い師になって金儲けをしようと企んだ事がある。だがそれをインチキだと見破って、彼女の計画を破綻させた男がいた……それが、占い師ギュスターヴだ。
いつもニヤついた笑みを顔に浮かべており、飄々としている。だが占い師としての実力は本物であり、さらに没落令嬢として生きるポーラの身の上を心配したりする、優しい性格の持ち主でもあった。
「執事神拳を極めたアルノからバッグを奪ったというその2人組は、どう考えてもただのひったくりではありませんわ。きっと、何者かから命令を受けたプロの傭兵のはず」
「ええ、そうでしょうね」
「そこで、その黒幕が一体誰なのかを、この男に占ってもらうとしましょう」
「なるほど……それはいいアイデアですね! お嬢様!」
「おーっほっほっほ! 私を誰だと思っていますの? 世界最強の没落令嬢なんですのよ!!!!!」
ポーラはやることなすこと破天荒で、少し目を離せば何をしでかすか分からない、とにかくクレイジーな女性だ。
が、ここぞという時の頭の回転の速さには目を見張るものがあった。
早速ポーラは、アルノを引き連れてボナパルト王国の貧民街へとやって来た!
そこは華やかな繁華街の裏手にある薄暗いスラム街で、雨風をしのぐのがやっとといった感じの貧相な小屋が、細い通路に沿ってずらりと並んでいる!
「まったく……私がこんな小汚いところに来るなんて、最悪ですわ!!!!!」
ポーラは渾身の大声で叫んだ!
「お嬢様、もっと声を落としてください」
「うるさいですわよアルノ! そもそも、あなたがしくじらなければこんなところに来る必要なんてなかったんですわよ!!!」
するとその時、2人の後ろからダンディーな声が聞こえてきた!
「やれやれ、“こんなところ”ねぇ……案外、ここも悪いところじゃないのに」
「「!?」」
慌てて振り向くポーラとアルノ! するとそこには、いつの間にか白いワイシャツを着た背の高い男が立っていた!
肩のあたりまで伸ばした茶色い天然パーマの髪と、ワイルドな無精ひげが毎日恋愛カテゴリのなろう小説を読む読者の皆様の心を掴む!
そう、彼の名はギュスターヴ!! 今回再登場した事によって、1話限りの使い捨てキャラではないことが判明した!!
「久々だな、二人とも。一体何の用で“こんなところ”に?」
皮肉めいた笑みを浮かべながら言うギュスターヴ!
「あなたに用があって来たんですわよ! ギュスターヴ!」
それを聞いた彼は、意外そうな顔で
「へー、マジか! んじゃ、立ち話もなんだし場所を変えよう。俺の店まで案内するぜ」
と返した!
貧民街をずっと奥まで進むと、ゴミ捨て場がある。といっても生ごみを捨てる場所ではなく、使えなくなった電化製品や壊れた家具など、粗大ごみが勝手に廃棄されているのだ。
元は広々とした公園だったらしい。都市開発の結果誰も使わなくなり、気が付けばゴミ捨て場になっていたのだ。
ギュスターヴの店である占い小屋は、なんとそのゴミ捨て場の手前に位置していた。
「まったく……なんでこんな辺鄙な場所に占い小屋なんて建てたんですの!?」
質素な木造の小屋を一瞥し、怒声をあげるポーラ。するとギュスターヴが心底愉快そうに笑う。
「貧民街に住んでる奴らっつーのは、金も希望もない“終わりかけの人間”ばかりだ。そんな奴らにひとかけらの希望を提供するのが俺の仕事。だから、あえてこういう場所に店を構えた。本当に困った奴だけが扉を叩けるようにな」
「意味が分かりませんわよ……」
そして一行は、ギュスターヴの占い小屋に入った。中は意外と広々としており、片付いている。中央には四角いテーブルがあり、その上に青い水晶がちょこんと乗っていた。
「さあ、占いの時間だ。話を聞こうか」
ギュスターヴはテーブル奥の椅子に腰かけ、水晶越しにポーラ・アルノと向かい合う。
神秘的な光を放つ水晶を見つめながら、ポーラが口を開いた。
「かくかくしかじかですわ!!!!!」
「なるほど……親父さんを牢獄から解放させるために集めた1000万ゴールドを、二人の盗人に奪われちまったのか。しかもかなりの手練れだった、と……。つまりこれは、間違いなく裏に黒幕がいるな」
瞬時に状況を理解したギュスターヴ! 流石は占い師である!
「じゃ、占うぜ」
「とっとと頼みますわ!!」
「はいはい」
傍若無人なポーラの態度に呆れたようににやけつつ、彼は水晶をのぞき込んだ。そして、青く輝くその球体を優しく撫でる。
「……」
数秒間、静寂の時間が訪れた。ギュスターヴは口を真一文字に結び、険しい表情で水晶を見つめている。
しびれを切らしたアルノが、口を開いた。
「……何か、見えますか?」
するとギュスターヴは、いつになく鋭い目つきでポーラとアルノを交互に見やる。
「あんたら、相当厄介な団体に目を付けられちまってるみたいだぜ」
「厄介な団体ですって……? 何ですのよ、それ!」
声を荒げるポーラ。果たして、その“厄介な団体”とは一体何なのだろうか……?
次回、「恐ろしき組織、暗黒お嬢様連合!!!」に続く!!!