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青藍のストライダー ~星々を駆ける冒険者たち~  作者: Omega Blue
エピローグ 新たな伝説の担い手

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エピローグ 新たな伝説の担い手 2

 翌日からレヴァリスは冒険者ギルドの支部施設に呼び出され、グランドラールに関するあらゆる情報を徹底的に聞かれることになった。

 支部施設には本部から急いでやってきた生物学者、さらにはグランドラールを追う上級冒険者などが待っていた。

「グランドラールはどんな性格をしていた?」

「尾の一撃の威力はどれぐらいだった?」

「明確な知性を持っていると言ったが本当か?」

「おいおい、そんないっぺんに聞かないでくれ……」

 矢継ぎ早の質問に、レヴァリスは早くも辟易していた。

 彼らにとっては、300年ぶりの討伐に関する貴重な証言なのだ。戦った本人を前に冷静ではいられないのだろう。

 記録を残すことは大切である。実際、レヴァリスは他にも戦闘記録や映像などあらゆる物を提出している。

 また、グランドラールの遺体はすぐに崩れ始めたが、その場にいたエレフィエル達が幾つかの部位の採取に成功していた。

 数日間に渡る事情聴取が終わると、レヴァリスはアリエカから採取された鱗と血液の一部を手渡された。

「討伐したのは貴方なのですから、これだけですが手渡しておきます」

 渡されたのは黄金の鱗が5枚、そして血液の入った小瓶が2本であった。採取された鱗や血液の残りは、研究資料としてギルドが保管しているらしい。

「鱗は1枚、血液はこの小瓶1本で、それぞれ数千万リイルは下りません。取り扱いにはくれぐれもお気をつけください」

「マジか。これっぽっちでそんなに価値があるのか……」

 あまりの高額さにレヴァリスは思わず目眩がした。掌に収まるほどの鱗と血の入った小瓶を、すぐに腰のユーティリティポーチにきっちりしまいこむ。

 これだけの価値のある物を手に入れたのは初めての経験だった。超大型貨物船ぐらいなら、余裕で買うことができるだろう。

 とはいえ、売却しようにも貴重すぎて、誰にどう売ればよいのか見当もつかなかった。

 レヴァリスは使い道が見つかるまで、大切に保管しておくことにした。

「ところで住人から銅像を建てたいという要望があるのですが、許可します?」

「勘弁してくれ。せめて俺が死んだ後なら良いが、恥ずかしいから生きてるうちはやめてくれ」

「そうですか。それは残念ですね」

 そう言ったアリエカの背部のサードアームには、銅像のポーズ案なる紙が握られていた。

 本当に建てる気だったと知ったレヴァリスは思わず唖然とするのだった。


 冒険者ギルドの支部施設から出ると、ようやくレヴァリスは解放された気分となった。

「お疲れ様です」

「ああ、やっと解放されたぞ。学者連中の相手は疲れる」

「さっき職人の方が来て、フォトンブレードの修復が完了したそうです」

「本当か? どうやってフォトンクリスタルの代替を作ったんだ?」

「さあ、私も特には……。まずは工房地区に行きましょうか」

「そうだな」

 外で待っていたサレナと合流したレヴァリスは、工房地区を目指して歩き始める。

 グランドラール討伐の報せによって、フロンティア・ナリスは銀河中から注目される開拓地となっていた。

 訪問者や移住希望者が相次ぎ、街ではさらなる拡張の話まで持ち上がっていた。

「俺のフォトンブレードがある工房はどこだ?」

「えっと、鍛冶職人さん達の所だそうです。こっちですね」

 サレナに案内されてレヴァリスは工房地区の中でも、ひときわ大きな工房へと足を踏み入れる。

「お待ちしておりましたレヴァリスさん」

 工房の中に入ると複数の種族からなる職人達が出迎えてくれた。

 彼らはだいぶ汚れた格好をしており、直前まで作業をしていたらしい。

「お預かりしたフォトンブレードです。修復が済みました」

 職人の1人がフォトンブレードを取り出して、うやうやしくレヴァリスへと差し出した。

 見たところ金属の柄そのものには変化がない。

 フォトンブレードを起動すると、そこには白い刃ではなく澄んだ青色の刃が展開された。

「これは……」

「とても綺麗な色ですね」

 隣でサレナが目を輝かせながら、青く澄んだ刃を眺めている。

 以前の白刃に浮かんでいた幾何学模様はなく、刃は澄んだ青一色に輝いていた。

「実はグランドラールの胸の部分から、小さなクリスタルが取り出されたのです。我々職人の間では“ドラールクリスタル”と呼ばれる幻の物質でした。伝説ではドラールクリスタルは、フォトンクリスタルと似たような性質を持っているそうです」

 説明を聞いて光刃を収め、柄の内部を確かめる。そこには、美しい青色の結晶が収まっていた。

 人工的な見た目をしたフォトンクリスタルとはまた違った趣がある。

「幸い、柄の機構は無事でした。この結晶を動力源に使えると分かり、数日かけて調整したのです」

「なるほど。もしかしてフォトンクリスタルは、ドラールクリスタルを人工的に再現しようとしたものなのか?」

「可能性は十分ありますな」

 あまりにもこの武器にしっくりとくるため、レヴァリスはそのような仮説を呟いた。

 もしそうであれば銀河帝国の技術力をもってしても、模倣するのが精一杯だったのかもしれない。

「ところでこのクリスタルはどうしたんだ? ギルドが真っ先に回収しようとしただろうに」

「実はギルドの方々の調査の時点では見つからなかったらしいのです」

「そいつは妙だな、ギルドの本格的な調査ならば見つからないわけがない」

「その後、骨から何か作れないかと我々も調べたのです。ところが胸部にはいつの間にか、このクリスタルがあったのです」

「いつの間にか? まるで意思でもあるかのようだな」

「そうですな。このクリスタルに触れた時、まるで我々を待っていたかのような気がしました。冒険者ギルドにも報告しましたが、アリエカさんはそれこそが、レヴァリスさんに与えられるべき物だと考えたようです。我々にはそれを使い、故障したフォトンブレードの修復を指示なさいました」

 どうやらレヴァリスの手に渡るように手筈を整えたのは、支部長であるアリエカらしい。

 彼女なりの矜持があったのか、それとも開拓地を救った礼としてそうしたのかは分からなかった。

「何でも、そのフォトンブレードは大切なものだとか」

「ああ、俺にとってこれは命にも代えられんものだ」

「左様ですか。では、どうかその武器をご大切に」

「修復してくれて感謝する。これでまたあの人との縁を途絶えさせずに済んだ」

 色は変わっても、握り慣れた柄の感触は変わらない。もう一度この剣を携えて旅に出られるのだと思うと、胸の奥がようやく軽くなった。

 腰のユーティリティポーチにフォトンブレードをしまうと、レヴァリスは職人達に礼を言った。

 工房を後にすると、レヴァリスはサレナと共に<ペイルライダー>へと戻った。


 多目的室で食事を取りながら、レヴァリスとサレナは次の目標を考えていた。

 [アルファーニア]には今や大勢の冒険者達がおり、この惑星の開拓や探索は彼らに任せても大丈夫だと考えていた。

 また、レヴァリスもいつまでも好奇の目に晒されるのは、居心地が悪かった。

「次に行くとしたら、お前はどこに行きたい?」

「私が決めるんですか?」

「ああ、次の行き先はお前が決めて良い。別にアルカナリス星域の惑星じゃなくても構わんぞ」

 ホロテーブルに浮かぶ星図を見ながら、サレナは次にどこへ行こうかと悩んでいる。

 その姿を見ながらレヴァリスは思った。彼女との出会いが、思えば自分を大きく変えてくれた。

 かつては、誰かを失うことを恐れて独りで旅をしていた。それが今では、次に訪れる星を2人で選ぶことが当たり前になっている。

 [カダーディアⅢ]での救出劇から[アルファーニア]でのグランドラールとの激闘まではあっという間であった。

 彼女とのこの縁を、失いたくないと感じていた。

「次はこの惑星とかどうでしょうか? ……レヴァリスさん?」

「ん、ああ。そうだな、この惑星も悪くなさそうだ」

 考え込んでいたレヴァリスは彼女に呼ばれ、慌てて返答する。

 彼女と一緒ならば、何処へでも行けるような気がした。


 出発の日、[アルファーニア]の軌道上を<ペイルライダー>は航行していた。

 通信機には別れを告げるメッセージが大量に受信されていた。

 レヴァリスはそのうちの幾つかを再生する。

『僕はしばらくこの惑星に残るよ。またいつか会おう』

 映像に映るエレフィエルは街の北側で捕獲した小動物を手に抱え、優しい笑みを浮かべながら別れの挨拶を言った。

『レヴァリス殿、幸運を祈ります。いつかまた酒を酌み交わしたいですな』

 画面の中で、イエーニがぴしっと敬礼した。

『レヴァリスさん、お世話になったっす! 当分はここで頑張るっす!』

『またねー、サレナ!』

『ギギ、さラばダ』

『またどこかでお会いしましょう』

 ヴェオル達4人がそれぞれ挨拶をする。どうやら4人もまた[アルファーニア]で冒険者稼業をするようだ。

 他にもギルド支部長のアリエカ、開拓長のエセル、ルーゼルやクジェリア、さらに住人達や他の冒険者達からも、2人への別れのメッセージが山のように届いていた。

 それらを再生しながらレヴァリスは、この惑星では多くの縁に恵まれたと感じていた。

「レヴァリスさん、超光速航法(ハイパーダイブ)の準備が整いました」

 サレナが計器を確かめ、こちらへ顔を向けた。

「行くとするか」

「はい、行きましょう!」

 レバーを力強く引くと、<ペイルライダー>は星の海から銀色の世界へと突入する。

 2人の旅路はまだ始まったばかりだ。

8月の後半から書き続け、ようやく一段落がつきました。

ひとまずレヴァリスとサレナの物語を書ききった事に、ほっと安心しています。

SFというジャンルは今ではすっかり衰退してしまいましたが、私自身は今もSFが好きです。

青藍のストライダーの構想は学生時代に考えていたのですが、この歳になってようやく形にできました。いつかは続きを書きたいとは思っていますが、まだ次の構想が練れていません。

次の作品は違う形となりますが、またいつか続きを書こうとは思っています。

ここまで見てくれた読者の方々にはとても感謝しています。

次の作品はハイファンタジー物でいこうと思っていますので、どうかまたその時はよろしくお願いします。


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