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玉の輿に乗った派遣施工管理と、眩しすぎる彼女  作者: 伊織


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第四十九話:変わらないもの

 いっちゃんが泣いてるってイジられながら、百貨店の前で別れた。俺は「目薬を買ったら合流する」と言って、百貨店の入り口付近で、ただ人混みを眺めていた。


 自動ドアが開くたびに、館内の暖かい空気と香水みたいな匂いがふわっと流れてくる。


「はぁ……」


 急に泣き出すなんて、俺らしくもない。最近やけにネガティブで思い詰めていたからか、心が疲れているんだろう。


「え、すみません。ポケモンやってますか?」


「あ、やってます! レイド待ちですか?」


 ぼーっと人混みを見ていたら、目の前に小学校高学年くらいの男子たちが集まってスマホをいじっていた。画面を覗き込むように輪になって、指先だけが忙しなく動いている。すると何かに気づいたように、中高生くらいの男子二人組が声をかけていた。


「俺ら柏で飯食って、これから池袋いくんすよ」


 そういえば七海が昔……ポケGoするなら池袋、みたいなことを言って、イベントがあるたびに出かけてたな。最近はそんなことも言わないから、すっかり七海のポケモン熱は落ち着いたもんだと思っていた。


「えー、いいな。俺らも行く?」


「え、俺、池袋とか行ったことないからわんねー」


「金、厳しいかも」


 千葉県の小学生に池袋は早いだろ。茨城県の小学生の柏デビューくらい早い。


 そんなことを考えているうちに、集団はお互いのスマホを近づけていた。


「インスタ交換しよー」


「あ、フレンドなりません?」


 最近の子供は、好きなもんが一緒なら年齢は誤差なんだろうな。というか、ラインじゃなくてインスタなんだ……俺でもやってないのに。


 男子たちがフレンドやらインスタの交換を終えて、手を振りながら別れる。その姿に、今時の子達なんだろうな、なんて鼻で笑った。


「いや、あんま変わんないのかもな」


 小学校のとき、近所の公園で一人ゲームをしていた。当時は3DS。ベンチの端に座って、周りの視線を気にしないふりをしながら、どこかで「なにやってるの?」って声をかけてくれる人を期待してた節があった。


 ――三組の山本?ゲーム好きなの?


 俺の策略にハマったやつがいた。そいつとは幼馴染って言えるくらいずっと一緒で、今もたまにゲームをする仲だ。


 昔と比べたって、何も変わらないんだろう。俺達の時代の3DSが形を変えて、より多様に……年齢の垣根を超えて彼らは出会った。それだけのことだ。


「男子にとっての、NIKEやアンダーアーマーの意味がわかった……」


 七海の昨日の言葉の意味がわかった。七海は高校も大学もスポーツの名門だからな。男子のイメージはスポーツウェアなんだろう。スポーツブランドの靴や衣服を着ていれば、似たようなものを着ていたり集める人たちと親しくなる。そういう人たちにとっての人と出会うきっかけは、ウェアであり、スポーツなんだ。


 それが女子にとっては、一番身近な化粧品だったってことだろう。


「俺も好きなシリーズのゲーム手に持ってる人がいたら、声かけるかもな。オタクなもんで」


 綾香ちゃん、いい化粧品見つけられたらいいな。

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