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世界一醜いS級冒険者がタイプです。~美醜逆転世界の受付嬢は今日も全力で口説きます~  作者: ぽぺっち


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7/7

大失敗

休日はあっという間に終わった。

 いつもの制服に袖を通し、鏡の前で身だしなみを整える。

 そして机の上に置かれた、小さな紙袋へ視線を向けた。

 昨日買った、紺色のマフラー。

 銀色の髪に絶対似合うと思って選んだ、自信作だ。


「……よし。」


 私は紙袋を抱えて家を出た。



 ◇



 ギルドへ着くと、朝からいつも通りの忙しさだった。

 依頼書を整理し、冒険者の受付をしているうちに、あっという間に昼が近づく。

 そして。

 ギルドの扉が開いた。

 銀色の髪が目に入った瞬間、胸が高鳴る。


(来た……!)


 アシュレイさんだ。

 今日はいつもより少しだけ機嫌が良さそう……に見える。


 いや、眉間に皺は寄っているし、相変わらず怖い顔だけど。

 昨日会えなかったせいか、それだけで少し嬉しくなってしまう。


 依頼を受け取り、踵を返したところで、私は慌てて受付を飛び出した。


「アシュレイさん!」


 その一声だけで、周囲の冒険者たちが一斉にこちらを見る。


「また始まった。」

「今日は何だ?」


 そんな囁きも、今は耳に入らない。

 私は紙袋をぎゅっと抱きしめる。


「これ、よかったら……!」


 差し出した瞬間だった。

 アシュレイの視線が紙袋へ落ちる。

 そして、心底うんざりしたように目を細めた。


「……何だ。」

「寒くなってきたので、マフラーです!」

「いらん。」


 即答だった。

 それでも私は諦めない。


「似合うと思って選んだんです!」

「そうか。」

「だから──」

「受け取る理由がない。」


 冷たい声だった。

 それでも、昨日までとは少し違う。

 アシュレイは紙袋から目を逸らさない。

 私はもう一歩だけ近づいた。


「お願いです!」


 その瞬間。

 アシュレイは紙袋をひったくるように手に取った。


(やった……!)


 一瞬だけ胸が躍る。

 けれど。

 次の瞬間には、その紙袋は地面に叩きつけられていた。


ぐしゃり。柔らかい紙袋が、衝撃で歪む。


「ほんとに馬鹿だなお前は」


 ギルドが静まり返る。


「……え?」


「こんなものを渡せば、俺が喜ぶと思ったのか。」


 吐き捨てるような声だった。


「何度言えばわかる?迷惑だ。」


 そう言い残し、アシュレイは去っていく。

 私はしばらく、その場から動けなかった。

 紙袋を抱えたまま、立ち尽くす。


「リリア……。」


 先輩が心配そうに近づいてくる。

 私は慌てて笑顔を作った。


「だ、大丈夫です!」


 ……少しだけ。

 本当に少しだけ、泣きそうだった。



 ◇



 一方、その頃。

 ギルドを出たアシュレイは、人気のない路地へ入ると足を止めた。

 拳を強く握り締める。


(……何なんだ。)


 思い出すのは、紙袋を差し出すあの笑顔。

 あれが演技だというなら、大した役者だ。

 もし本気だったとしても。


(そんなわけがない。)


 過去にもいた。

 「プレゼントをあげる」と笑いながら、箱の中に虫を詰めてきた女。


 「似合うよ」と服を渡し、人前で笑い者にした男。


 期待した分だけ、最後に笑われる。

 そんなことは嫌というほど知っている。

 だから受け取らなかった。

 それでいい。

 ……それで、いいはずなのに。

 ふと脳裏に浮かぶのは、あの紙袋を抱きしめたまま俯いていた少女の姿だった。

 舌打ちを一つ。


「……くだらん。」


 誰に言い聞かせるでもなく呟き、アシュレイは足早に歩き出した。

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