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第75話 俺の反省会


「で?なんでうちに…」


「一人で、家に帰れるような状況じゃなかったんだ…」


「じゃあ、花凛(かりん)ちにでも行けばよかったのに」


俺は、花凛を恵比寿のマンションで下ろした後、真っ直ぐに(さく)の家に向かった。


最近しょっちゅう、朔の白金の実家に来てる気がする…

「花凛とはうまく行った」って報告がてら朔んちに来たら、”また来たのか“って…


「花凛ちには、行けない…」


深刻な顔でそう言うと、朔は鼻で笑って「何で」って呆れて笑った。


「朔…相楽(さがら)…花凛に昨日マジ告白したらしい…」


「だろうね」


「え?」


「まぁ…そろそろ、そうなるんじゃないかなとは思ってた」


「朔…なんか花凛から、聞いてるわけ…」


「まぁ…凱斗(かいと)よりはね」


「全部教えてくれよ!!」


「あぁっ…もうウザいな…」


ソファに座る朔の横で縋る俺に、すごく冷たい態度だ…


「お前は、いつだって花凛の味方だもんな…俺よりも!」


「何言ってんだよ。俺は相楽に取られないように、そろそろ仲直りするよう言っただろ」


「いつ!」


「いつって…この間、麻布で肉食った時言ったじゃん」


「……」


相楽(さがら)もアメリカ行くからって」


「お前“一緒に行く”って、俺けしかけたのそれで?!花凛ロンドン行くって言ってたぞ!」


「そうだよ。だから”一緒に留学する”とは言ったけど”一緒の国に行く”とはいってないだろ」


「……」


「二人とも世話が焼けるよ…」


「屁理屈だよ、そんなの…」


「大体…花凛は花凛で凱斗の事ばっか。凱斗は凱斗で花凛の事ばっか…なのにお互い意地張って…さっと仲直りすれば済む話でしょ」


「……」


「まぁ、良かったよ。丸く収まったみたいで」


「そう思ってたら…相楽が…」


「それは花凛を信じて待つしかないね」


「朔…」


「相楽は結構賢いよ。俺は花凛が、今まで靡かなかっただけでもすごいと思うよ」


「え…」


「花凛は、かなり相楽に助けてもらったから」


「……」


「凱斗が離れてる間に、花凛仕事で結構大きなミスしたんだ」


「花凛が?」


「連日帰宅もできないくらい大変で、恐らく寝てなかったと思う」


「……」


「留学が決まってるプレッシャーもあったし、凱斗の事でも弱ってたし相当精神的にきつかったと思うよ」


「……」


「俺も話は聞いてたけど、やっぱり同じ業界じゃないから助けてやれなくて…。でも…それ全部一緒に乗り越えたのあいつだから。それに無茶苦茶優しいんだ…相楽。大人だしな」


「……」


「凱斗も大変だったから、俺は何とも言えないけど…あんなことあったら花凛はきっと、相楽を無下にはできないと思う」


「そんなの…それとこれとは違うだろ…」


「相楽はさ…花凛の気持ちを最優先するんだ。だけど…ここで告白したって事は、本気できてる」


「……」


「いつだったかな…半年くらい前…ちょうど凱斗と秘書の騒ぎが出た頃だったかな?一回台湾で、あいつ花凛に気持ちを伝えてるしね」


「…それは…今日、花凛からも聞いたけど」


「だけど、それから今まで何も言わないってある??隣に凱斗いないのに」


「……」


「それって、どう見てもタイミング見てたでしょ」


「……」


「花凛も昨日すぐ断らなかったのは、気持ちが揺れたからだよ…そんな気がしたんだ。話の中に「相楽君がね」ってのが、最近増えたからね」


「朔…」


「とりあえず、ギリギリセーフだ。これもう少し遅れてたら、花凛は相楽の物になってたな」


「……」


「まぁ、よかったじゃん。花凛は一応、“凱斗の彼女”に戻ったんでしょ?」


「……一応って…」


「今日実家に泊るの?」


「麻布に帰る…」


「あっそ。じゃあ、きをつけてね」


俺は、素っ気ない朔に見送られ麻布の家に戻った。

花凛とは楽しかったけど…今になって、どっと疲れが襲ってくる…


ここ数日…花凛とよりを戻すために、どれだけ必死で考えたか!!


それが功を奏して…パーフェクトだと思ってたのに…

花凛に…「相楽」のこと打ち明けられて気が気じゃない…



俺は冷蔵庫から白ワインを取り出し、キッチンで一人で侘しく栓を開けた。

ボトルを掴んで、グラスの縁ギリギリまでなみなみと注ぎ、危うくこぼれそうになる。


それを味わいもせず一気に半分口に流し込しんだ。


運転あるからって一滴も飲めず…


”12時までに帰りたい”って言う、花凛を恵比寿に送り…


「…シンデレラかよ…」


モヤモヤして朔んちに行けば、明日イベントとかで軽くあしらわれ…


ボトルの横には、ヴァンクリの突っ返された小箱…


目の前の東京タワーが、俺をあざ笑ってる…


「ふっ…」


俺はワイングラスを片手に、ソファに腰掛けた。


そりゃ俺だって簡単に事が運ぶなんて、考えてなかったよ。

もしかしたら、断られるんじゃないかくらいは考えてた。


だけど半年で、新しい彼氏ができてるとかは夢にも思わなかったし!


って…まぁ正確には“できそうになってた“だけど…



でも…花凛って、俺の事好きだよな?

なんか今日は、それ感じたわ…


最初も、緊張してたのわかったし…


あの時エントランスで一瞬背を向けられて、帰られるんじゃないかってビビったんだけど…

車に乗ったら顔真っ赤で!!シートベルトも戸惑ったりして…


あぁ……あれめっちゃ可愛かったな。


「はぁ…」


彼女を思い出して、側に合ったクッションを思わず胸にぎゅっと抱きしめる。


砂浜でどさくさに紛れて抱きしめた時、照れて笑ってたんだよな…



あぁ…


あの時、キスでもしたらよかった…。


俺の計画は、指輪までは完璧だったんだ……


ん??よく考えたら別に今日受け取ったって、相楽は断ればいい話だよな?

≪花凛も昨日すぐ断らなかったのは、気持ちが揺れたからだよ…≫


「……」

朔が余計な事言うから、めっちゃ気になりだした…!


ヴァンクリがダメだったかな…ハリーウィストンあたりに奮発しといたらよかったか??


でも、花凛あぁ言うのに全然靡かないし…

”ブランド”より”気に入ってるもの”だよな?


いや…もしかしたら指輪じゃなくて、手編みのマフラーとかが良かったかも?


手作りとか…大好きなんだよ。

ケーキとか焼いたら、そっちの方が効果があったかも。


俺がケーキ焼くとかビビったかもだし、愛情籠った手作りケーキ…


あぁ…失敗した…


家に帰っても、彼女からは電話一つかかってこない…


「どうせ神崎と長電話でもしてるんだろ」


「飲んでやる!」


俺は残りのワインを飲み干すと、二杯目をグラスに並々注いでまたそれを口に運ぶ。



―――こういう時、酒が強いと軽く酔いもしない。


花凛は…スパークリング一杯でほろ酔いだった…。

実際あれで、上手くいったのかも。


…って、思い出すのは花凛の事ばっか!!


ダメだ…久しぶりに顔見たら、もう会いたくてたまらない‥‥

強引に、花凛ちに泊ったらよかった!


「もうシャワーして、今日は落ち着いて寝よう…明日も花凛に会えるんだし…」


≪明日の日曜日も、空いてるよん≫――って…


「かわいすぎか…ぁああっ!!」


俺はクッションを抱きしめて、そのまま勢いよくソファに寝転がる。

それから両足をバタバタさせて、声を押し殺した。






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