第29話 電話に出た女性
「どうして、凱斗と付き合っちゃったりしたんだろう…」
――――あの頃…急に再会して会うようになった凱斗は、すっごく優しくて、一緒にいるとほんとに楽しくて…色んな所が似てるし、好きな物も一緒で…私はいつの間にか凱斗が大好きになってた。
”高校の時から好きだった”って言われた時…
あの頃私も凱斗の事、”ちょっといいな”って思ってたのを思い出す。
だけど凱斗には彼女がいたし、私はアメリカに行くことが決まってたから…
夏休み前に一緒に行った“back number”のコンサートーー
凱斗が一緒に行くはずだった朔ちゃんが熱を出して、急遽空いてるかって誘われて…
私、お母さんに内緒で、塾さぼって行ったんだった…
世界が違うってそう思ってたから、いつの間にか思い出に閉じ込めてたけど…
―――高校の時から、桜庭の事好きだったんだ…俺…―――って…
そう告白されたあの日…
私は、凱斗の手を取ったんだ…
そう言えば帰国してからも、大学の時も、凱斗の隣にはいつも違う女の子がいたな。
だけど“友達だ”って言う凱斗を、信じてた…
「ちょっと、よく話し合うべきだよ」
璃子が、凱斗の話ばっかりするから―――
なんだか…とても彼に会いたくなってきた…
声が聴きたい…
「璃子ぉ私、凱斗に電話したい…」
「えっ今?!あっち何時よ?!あいつ今アメリカでしょ?!」
「サンフランシスコは、今何時だぁ~」
「やだ…え?モヒート2杯で酔ってるの??」
―――「あ、それうち”ラムダブル”なんで、普通より濃いんですよ」
隣のテーブルに食事を運んでた店員さんが、璃子の言葉に反応してにっこりと対応。
「えっとぉ…時間時間」
「そうね。恋なんて人それぞれだし…まぁ私はいつだって花凛の味方…」
「朝の5時半かぁ…凱斗なら起きてる…」
私は濃いめのモヒートを空腹に飲んじゃって、なんだかそれが急に回ってきたようだ。
ほろ酔い気分で、思わず凱斗にLINE電話をする。
「もしもーし」
≪んっ……もしもし…≫
誰……女の人の声だ。
咄嗟に通話を、切ってしまった―――
「何…凱斗繋がらない?」
「……」
「なによ、やっぱやめたの?」
璃子が目の前のヤンニョムチキンに、呆れながらフォークを立てたのをじっと見つめる。
「璃子…どうしよう。女の人出た」
「え?!マジで??」
「……星野さんかな…」
「え?待って…朝の五時半に凱斗の部屋にいるの??まさか出張って同じ部屋??」
「知らない…」
「朝から仕事してるとか?!仕事の時は、凱斗結構早起きじゃなかった?」
「でも声が…多分寝起きだった…」
「やだぁ!もう凱斗何してんの!!嘘でしょ!!」
どうしよう…騒いでる璃子見ても…この動揺が…
ほろ酔いも一気に冷めた…胸がドキドキする。
「LINE通話、もう一回かけてみてよ」
「やだ。無理」
「貸して!私がかける!」
「やめてぇ璃子ぉ」
「もう別れな。それかちゃんと問い詰めるか」
「問い詰めて、“ウザ別れよ”って言われたらどうするの!」
「そんなの…そうするしかない。別れなよ!」
「……」
「だって、ホントにそんなのでいいの?
”優しいから”とか”かっこいいから”とか、そんなのだけでしがみついたって、利用されるだけでしょ!」
「違うもん…かっこいいとかじゃないもん」
「花凛…」
璃子は、泣きそうになった私を切ない目で見つめた。




