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第十四話

一度家を出て、シルヴィアの服を揃えたり、日常品や生活雑貨を買ったりしている内に夕方になってしまった。


「よし、一緒にお風呂に入ろう」

「いいですね。シルヴィアさんの髪、結構傷んでしまっていますし」

「い、一緒にでありますか?別に1人でも入れるでありますよ?」

「いや、ダメだ。俺が楽しめん」

「は、はあ。わかりましたであります」



俺達はお風呂場に来ていた。


「おおー!広いお風呂場でありますなー!」


無邪気に喜ぶシルヴィアのお尻には立派な尻尾が揺れていた。………あの尻尾はどうなっているんだろう?


「シルヴィア、風呂に入る前に体を洗ってやろう」

「は、はい。よろしくお願いするであります」


俺はシルヴィアの体を隅々まで洗った。尻尾を洗おうとすると、


「へにゃふにゃ!?」


と、変な声を出したので、執拗に洗ってしまった。

現在風呂に浸かっている真っ最中である。


「はー、生き返るー」

「はい………」

「気持ちいいであります………」

「なんの、この後はもっと気持ちよくしてやるぜ」

「もう、ご主人様ったら」

「はわわ………であります」



俺達は寝室にいた。


「それではシルヴィア、こっちに来なさい」

「は、はい。ふ、不束者ですが、よろしくお願いするであります」


俺はシルヴィアに口づけた。



目を覚ますと、両側に美少女がいた。こ、これが両手に花というものか。なんて素晴らしいことなんだ。

などとアホなことを考えていると、2人が起き出してきた。


「おはようございます、ご主人様」

「………おはようであります、ご主人様」

「おはよう、2人とも。シルヴィアはその口調続けるのか?昨日みたく喋ってもいいんだぜ」

「あ、あれはご主人様が苛めるから思わず出てしまっただけであります。あれは自分ではないのであります。ご主人様は外道であります、鬼であります、悪魔なのであります」

「酷いなあ、俺はシルヴィアが素直になるよう促しただけだって」

「うう~」

「悪かったよ。ほら、ナデナデしてやるから。ナデナデ」

「わふぅ~ん、ハッ、ダメです、惑わされてはいけないのであります。これは悪魔の手つきなのであります。に、逃げなければ!で、でも、わふぅ~ん」

「あの、ご主人様、私にも………」

「ああ、おいで、エレミア」

「「わふぅ~ん」」


すっかり息のあった2人であった。



俺達はシルヴィアの冒険者登録とパーティー登録のために冒険者ギルドに来ていた。


「………はい。シルヴィアさんの〈ステータスカード〉です。パーティー登録も済ませておきましたよ」

「ありがとうであります」

「これからラビリンスに挑戦されるんですか?」

「はい、そうですが」

「ラビリンスは他の〈迷宮〉と違うところが多いので、ご説明させていただきます。まず違うのはその広さです。他の〈迷宮〉の2倍以上はあると考えてください。そのため外に出るための転移装置が5層ごとにあります。また、外からラビリンスに入る時は、攻略済みの層なら入る層を選べます。31層から先は立体構造になっていて、先の層に進むにはどこかにある転移装置を使う必要があります。地図の作成技術がしっかりしているか、〈地図作成〉のスキルを持っている人がいないと苦戦するそうです。35層からボス戦は5層ごとになります。しかもボスは倒しても一度部屋を出ると即復活します。ラビリンスの迷宮構造が変わるのは1ヵ月に1回と他の〈迷宮〉と一緒ですが、宝箱の中身は1日1回復活します。月末の迷宮構造改変時はラビリンスに入れないので注意してください。なにか質問はありませんか?」

「深い層では実質1ヵ月以内に攻略しなければいけないんですか?」

「さすがにそれではラビリンスを攻略できないので、〈地図作成〉を持っている場合、攻略進度に合わせて地図が解放されるそうです。」

「解放?」

「具体的に言うと、ある層の地図を1ヵ月かけて2割埋めたとします。次の月にはその地図は無駄になってしまうんですが、〈地図作成〉のスキルを持っていると、その層の新しい地図の情報が2割埋まった状態で攻略を開始出来るんです。ただし、埋まる情報は完全にランダムなので、そう簡単に攻略はできないんですけどね」

「ラビリンス攻略に〈地図作成〉は必須であると」

「そうですね。最前線にいるパーティーには必ず1人はいるみたいです」

「そうなんですか………今の最前線を教えてください」

「81層になります。………それと、ラビリンスに挑む前に、転職の儀を試されてはいかがですか?もしかしたら上位職につけるかもしれませんよ?」

「上位職ですか………試してみます」


その結果、俺は当然上位職など存在せず、新しい職業にも就けなかったが、エレミアは上位職の〈賢者〉に転職できた。


「ありがとうございました。それと、どこかいい武器・防具屋を教えてください」

「承知いたしました。紹介状をお書きしますね。地図も一緒に入れておきます」

「ありがとうございます」

「………はい、こちらが紹介状と地図になります。またのご利用をお待ちしています」


俺はギルド内の人間を片っ端から〈鑑定〉し、〈地図作成〉のスキルをコピーした。


「それじゃあ、武器と防具を買いに行くか」

「かしこまりました」

「はいであります」



俺達はギルドで紹介状を貰った武器・防具屋に来ていた。

カウンターには小さい女の子が立っていた。


「あの、すいません。武器と防具がほしいんだが」

「はい、いらっしゃいませ!どのような武具をお探しですか?」

「金に糸目はつけないから、最高のものが欲しいんだ」

「ん~、といっても、あなたの力量にあった武具じゃないと使いこなせませんよ?」

「大丈夫だ。腕に自信はあるからな」

「じゃあ、これを振ってみてください」


女の子が取り出したのは、一本の透明な剣だった。


「この〈色分けの剣〉は振った時の剣速と技量で色が変わるの。これでどれだけの技量か計ることができるわ」

「わかった」


俺は剣を構えて集中し、一気に剣を振り下ろした。


「セイッ」


すると刀身が金色に光り輝いた!


「わあ!」

「きれい………」


「そんなまさか………金色だなんて。………父ちゃんを呼ばなきゃ。父ちゃーん!ちょっと来てくんな!」


女の子は工房があるらしい裏手からヒゲモジャで背が小さい男を引っ張り出してきた。


「なんじゃい、母ちゃん店のことならまかせて………この輝きは!」


刀身の輝きはしばらくすると消えてしまった。


「驚いたわい、まさかその剣を金色に光らすことができる者がいようとはな」

「それで、最高の武具は売ってくれるのか?」

「うむ、ちょっと待っとれ、今とってくるからの」


そういって男は工房に戻っていった


「父ちゃんが認めるなんて、あんた相当なもんだよ」

「あの、父ちゃん母ちゃんって、お2人はどういったご関係で?」

「あらやだ。まだ自己紹介もしてなかったね。あたしはアカシャ、あっちは旦那のベルンドだよ」

「旦那ってことは夫婦!?………なるほど、ドワーフだったのか」


すると、奥の工房からベルンドが出てきた。


「待たせたな、坊主、これがウチにある最高の武器じゃ」

「これは………刀?抜いてみても?」

「ああ、いいぞい」


刀を鞘から抜くと、刀身が一瞬金色に輝いた。刃渡り1メートル20センチほどの長刀で、触れれば何でも真っ二つになってしまいそうな迫力がある。


「これは………何で出来ているんですか?」

「ヒヒイロカネという金を〈錬金術〉で変質させた物質で出来とる。折れず、曲がらず、刃こぼれもしない。芯にミスリルを使ってあるから、魔法も斬れるぞい」

「〈錬金術〉?」

「ああ、儂の………というか〈鍛神〉のユニークスキルじゃ。」

「!!!」


すかさず〈鑑定〉した結果によると、〈錬金術〉とはある元素を魔力によって別の物質に変化させる技能らしい。凄そうだ。


「これ、魔法を斬るってことは〈付与魔法〉とかも無効化しちゃうんじゃないか?」

「たしかにそうじゃが、そんなもんは必要ないわい。なにしろヒヒイロカネよりも硬くて頑丈な物質は今のところ存在しない。どんな物質よりも硬いということはどんなものでも斬れるということじゃ。そのかわり魔法に弱いんで、芯に魔法を無効化するミスリルを使ってある。ミスリルの魔法無効化圏にヒヒイロカネの刀身が収まることによって弱点を無効化するばかりか、魔法をも斬る最高の剣になったという訳じゃ」

「それって………無敵なんじゃないか?」

「どんな剣も技術が進歩すれば追い抜かれる時が必ず来る。それにどんなに剣のできがよくても使い手が良くなければなまくらになる。使い手が剣の力を最大限に引き出した時こそ、最強の剣と呼ばれるようになるんじゃ。………もしも使い手が剣と共に生涯負け無しなら」

「最強無敵の剣になる?」

「まあ、そんなものは夢物語じゃがな」

「親父さん、この刀気に入ったよ。銘はなんていうの?」

「銘はまだない。お前さんが付けてくれ」

「そうだな………旭。この刀の銘は旭だ」

「うむ。その刀、旭に対して他の装備がちと貧弱じゃな。どれ、儂が見繕ってやるかの。まずは獣人のお嬢さん。この〈色分けの剣〉を振ってみてくれるかの」

「わかったのであります」


シルヴィアが〈色分けの剣〉を振ると、剣が銀色に輝いた。


「ほう、銀色か。これまた大した才能じゃの。お嬢さんにはこのオリハルコンの双剣じゃな。オリハルコンはヒヒイロカネほどじゃないが、鋼鉄よりも硬く、頑丈で、魔法にも強い。ミスリルは使ってないから〈付与魔法〉による属性付与もできるぞい」

「ありがとうであります!」

「エルフのお嬢さんには弓の方がええな。こいつはユグドラシル・トレントという魔物が残す木材と、アライブ・アラクネーという魔物が残す糸を使った弓で、使い手の魔力を増幅し、魔法の威力を高める効果がある」

「ありがとうございます」

「お次は防具かの。前衛の2人にはダークネス・ドラゴンという魔物が残す革でできた黒竜の革鎧じゃ。斬撃に強く、強靭で、状態異常を防ぐ効果がある。後衛のお嬢さんにはファー・フェアリーが残す毛皮でできた妖精のローブじゃ。物理的な防御力は少ないが、魔力の通りがよく、魔法に強い。こんなもんじゃな。しめて3億円というところじゃ」

「高いな………まあ、仕方ないか。はい、朱金貨3枚」

「うむ。確かに受け取った。………頑張るのじゃぞ。儂の最高傑作を振るうからには中途半端な結果では承知せんぞい」

「ああ、必ずラビリンスを攻略してみせるよ」

「大きくでたの。じゃが、ラビリンスは生半可な覚悟では攻略できんぞ」

「わかってるさ」


俺達は店を後にし、迷宮に向かったのだった。

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