第十三話
俺達はギルドに紹介状を貰った奴隷商店に来ていた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
「ああ、奴隷を買いに来た。これが紹介状だ」
「お預かりします。………はい、確認いたしました。お客様はどのような奴隷をお望みで?」
「女性の〈永久奴隷〉を買いたい」
「女性の〈永久奴隷〉ですか………〈永久奴隷の首輪〉は貴重なものなので、当店には女性は今一人しかいないのですが………。これが少し厄介な事情を抱えていまして」
「かまわない。とりあえず見せてくれ」
「はい。ではこちらにお越しください」
俺達は奴隷商人に連れられて奥の部屋へ向かった。そこには鉄格子があり、その中には一人の少女がうずくまっていた。
すると頭の上にある耳がピクリと動き、少女がこちらを見た。
美しい少女だった。ショートカットの銀色の髪に銀色の瞳、野生的な美貌に溢れるその顔は、攻撃的な意志に満ち満ちて………?
「グルァウグルァッ!」
「………彼女が?」
「はい。当店唯一の女性の〈永久奴隷〉、シルヴィアでございます。………見ての通りすでに理性はございません」
「なぜこうなったか聞かせてくれ」
「はい。彼女は銀狼族という獣人の一族で、15歳までは理性もあったそうでございます。銀狼族は15歳の成人の時にとある試練を受けます。その試練を突破すると〈狂戦士の加護〉という加護を授かることができるそうです。狂戦士と言っても実際には理性を失うなどということはなかったそうです。しかし、試練を終えた時にはすでにシルヴィアは理性を失っていたそうでございます」
「そうか………」
とりあえず〈鑑定〉してみる。
〈シルヴィア〉
年齢:15
Lv.1
種族:獣人・銀狼族
職業:奴隷/剣士
体力:400/400
魔力:100/100
筋力:130
耐久:130
器用:1130
敏捷:1130
智慧:0
精神:0
レアスキル
〈二刀流〉Lv.4
スキル
〈剣術〉Lv.3
〈回避〉Lv.3
加護
〈狂戦士の加護〉
称号
〈麒麟児〉〈追放者〉〈永久奴隷〉
〈剣士〉
容量10の職業。筋力、敏捷の成長率を60%上昇させる。
〈二刀流〉
同種の武器を両手に2本持って闘う技術を身につけた者の技能。両手に武器を持った時の武器の重さをLv.×1%軽減する。
〈狂戦士の加護〉
体力、筋力、耐久、器用、敏捷が100上昇し、智慧、精神が100減少する。動体視力、反射神経、思考速度に補正。智慧、精神がともに0の時、理性を失い本能のままに行動する。
〈麒麟児〉
生まれもって優れた才能を持った者の称号。器用、敏捷が1000上昇する。
なるほど、やはり〈狂戦士の加護〉が原因か。となるとなぜシルヴィアだけが理性を失ったのかだが………。
「なあ、試練ってどんな内容なんだ?後、普通どれくらいかかるものなんだ?」
「試練は比較的魔物の多い森を突破して、そこにある祠に祈りを捧げるものだそうです。普通は1週間かかるそうですが、シルヴィアは1日で帰ってきたそうです」
なるほど、普通はレベルアップしながら進むから智慧と精神が100より大きくなって、理性は失わない。しかし、シルヴィアにはなまじ〈麒麟児〉があるので、智慧と精神が100を越える前に試練を突破してしまったんだな。それならなんとかなりそうだ。
「よし、後はこちらで何とかするから、契約をしよう」
「それが、一筋縄ではいかないのです。理性を失っているせいか、こちらの命令がいっさい効かず。無理やり契約しようものなら暴れる始末でして」
「えっ?それは参ったな………」
「ご主人様、シルヴィアさんを助けてあげてください。ご主人様の優しさなら、シルヴィアさんにもちゃんと伝わると思います」
「エレミア………。よし、わかった。やるだけやってみる」
俺は鉄格子の隙間から左手を差し出してみた。
「ガァウッ!」
当然のごとく噛まれたが、耐久が高いおかげかあまり痛くない。
「よーしよし大丈夫だぞー痛くない痛くない」
俺は右手でシルヴィアの頭を撫でてみる。
「グルルルル………」
「もう大丈夫だ。お前に酷いことをするやつはいない。俺がお前を守ってやるからな」
「グルル………クゥーンクゥーン」
思いが通じたのか、噛みついていた手を離してそのまま舐めてきた。
「ほほう、シルヴィアが懐くとは、これも運命の導きですかな?」
「じゃあ、シルヴィアと契約してもいいんだな?代金はいくらだ?」
「そうですな、これたけの美貌で処女ですから、5000万円といいたいところですが、命令できないというデメリットがあるので、半額の2500万円でいかがでしょうか。」
「わかった。それでいい。」
俺は奴隷商人に代金を支払い、シルヴィアと契約した。
「クゥーン、ワンワン!」
鉄格子から出たとたん、シルヴィアがじゃれてきた。どうやら臭いを嗅いでいるらしい。
「ははは、えらい懐きようですな」
「ああ、まあな」
美少女に懐かれて嬉しくないハズがない。
しばらく臭いを嗅ぎまわっていたシルヴィアだが、疲れたのか俺にしがみついたまま寝息をたて始めた。
「ふふふ、寝ちゃいましたね」
「疲れていたのでしょうな。ここに来てからというもの警戒してばかりいましたからな」
俺はシルヴィアをおんぶした。
「じゃあ、今日はもう帰るが………女性の〈永久奴隷〉が手に入ったら教えてくれないか?」
「ええ、かまいませんよ。住所をお聞きしてもいいですか?」
奴隷商人に住所を教え、家路についた。
「ご主人様、シルヴィアさん重くないですか?私が代わりましょうか?」
「いや、全然。軽い軽い。どうしてだ?」
「だってご主人様、変な顔しているから、重いのかなと思って………」
おっと顔に出ていたか。実はシルヴィアのおっぱいが背中に当たって気持ちいいのだ。こ、これはDカップくらいはありそうだ。非常に楽しみである。
「いや、なんでもないよ。早く家に帰ろう」
「はい。ご主人様がそう仰るのなら………」
俺達は家の寝室にいた。シルヴィアはベッドに寝かしつけてある。
「さて、シルヴィアが理性を失っているのは智慧と精神が0だからだ。だから、〈スキルコピー〉で〈エルフの加護〉をコピーして、智慧と精神が上がれば理性を取り戻すはずだ。どうなるかわからないからもしもの時は一緒に説得してくれ」
「はい。わかりました」
「よし、いくぞ。〈スキルコピー〉!」
シルヴィアの体がビクッと震え、スキルがコピーされたようだ。〈鑑定〉。
〈シルヴィア〉
年齢:15
Lv.1
種族:獣人・銀狼族
職業:奴隷/剣士
体力:10400/10400
魔力:300/300
筋力:1130
耐久:130
器用:1130
敏捷:2130
智慧:120
精神:120
レアスキル
〈二刀流〉Lv.8
〈鑑定〉Lv.10
〈アイテムボックス〉Lv.10
〈隠蔽〉Lv.10
〈転移魔法〉Lv.10
〈連続魔法〉Lv.10
スキル
〈剣術〉Lv.10
〈回避〉Lv.10
〈体術〉Lv.10
〈調理〉Lv.10
〈算術〉Lv.10
〈光合成〉Lv.10
〈生命力強化〉Lv.10
〈成長力強化〉Lv.10
〈体力回復力強化〉Lv.10
〈魔力回復力強化〉Lv.10
〈突進〉Lv.10
〈指揮〉Lv.10
〈投擲〉Lv.10
〈火魔法〉Lv.10
〈魔力操作〉Lv.10
〈気配察知〉Lv.10
〈気配遮断〉Lv.10
〈鷹の目〉Lv.10
〈風魔法〉Lv.10
〈短剣術〉Lv.10
〈騎乗〉Lv.10
〈操車〉Lv.10
〈契約魔法〉Lv.10
〈槍術〉Lv.10
〈弓術〉Lv.10
〈魔弓〉Lv.10
〈生活魔法〉Lv.10
〈水魔法〉Lv.10
〈土魔法〉Lv.10
〈光魔法〉Lv.10
〈剛腕〉Lv.10
〈俊敏〉Lv.10
〈解錠〉Lv.10
〈罠発見〉Lv.10
〈罠解除〉Lv.10
〈盾術〉Lv.10
〈斧術〉Lv.10
〈槌術〉Lv.10
〈武器防御〉Lv.10
〈性技〉Lv.10
〈精力増強〉Lv.10
〈鍛冶〉Lv.10
〈細工〉Lv.10
〈木工〉Lv.10
〈縫製〉Lv.10
〈物理耐性〉Lv.10
〈威嚇〉Lv.10
〈蟻酸作成〉Lv.10
〈吸血〉Lv.10
〈魔力耐性〉Lv.10
〈暗殺術〉Lv.10
〈クリティカル〉Lv.10
〈毒針〉Lv.10
〈氷魔法〉Lv.10
〈砲哮〉Lv.10
〈拳法〉Lv.10
〈曲刀術〉Lv.10
〈細剣術〉Lv.10
〈強化魔法〉Lv.10
〈刀術〉Lv.10
〈雷魔法〉Lv.10
〈付与魔法〉Lv.10
加護
〈狂戦士の加護〉〈エルフの加護〉〈ダークエルフの加護〉
称号
〈麒麟児〉〈追放者〉〈永久奴隷〉
しばらくすると、シルヴィアが目を覚ました。
「大丈夫か?自分がどうなったかわかるか?」
「んゅ、ご主人様………わふん!」
するとシルヴィアは急に抱きついてきた!
「んへへ、ご主人様の臭いがするー。いい夢………くー。」
「こら、夢じゃないぞ、いい加減に起きろ!」
「んぇ?夢じゃない?そういえばここどこ?」
「ここは俺達の家の寝室だ。それで、大丈夫なのか?」
「ん?家?寝室?ご主人様。………ご主人様!?」
シルヴィアはシュバッと離れるとベッドの上で正座した。
「ももも申し訳ございません、ご主人様!下僕の分際でこのような所業!このシルヴィア、いかなる罰も甘んじて受ける所存であります!」
「あー、罰とかはいいから。それよりも、大丈夫そうだな。自分がどうなっていたかとか分かるか?」
「はい、自分はいたって健康であります!自分がどうなっていたか、でありますか………そういえば、試練の森に入って………祠で祈りを捧げてからの記憶が曖昧なような………」
「やっぱり理性を失っている間のことは覚えていないみたいだな。ん?ならなんで自分が奴隷になったことはわかるんだ?」
「じ、自分は奴隷になったのでありますか?いや、ご主人様が自分の主であることは本能で理解したといいますか………」
「そ、そうか。気の毒にな。じゃあ何があったか説明しよう」
俺はシルヴィアが〈狂戦士の加護〉のせいで理性を失ったこと、迷宮都市で〈永久奴隷〉として売られていたこと、俺が主になってシルヴィアを元に戻したことなどを話した。
「そうだったのでありますか………。ではご主人様は自分の恩人でありますな!」
「恩というならば、このエレミアにもあると思うぞ」
「?というと?」
俺は自分が〈異世界人〉であること、〈スキルコピー〉のこと、エレミアに出会い、〈エルフの加護〉をコピーしたこと、エレミアの提案で奴隷を買いに来たこと、エレミアにシルヴィアを助けるよう言われたことなどを話した。
「なるほど、そんなことがあったのでありますか………ご主人様、エレミア様、改めてお礼を言わせてください。………ありがとうございます」
「い、いえ、全てご主人様のお力ですから………それに様は止めてください。私もシルヴィアさんと同じ〈永久奴隷〉ですから………」
「ではエレミア殿とお呼びいたします」
「それで、シルヴィアを買った理由についてなんだが………俺達と一緒にラビリンスを攻略してほしいんだ」
「ラビリンスをでありますか………それは生活の糧を得るためとかではなく?」
「ああ、願いが叶うという完全攻略を目指している」
「どのような願いかお聞きしても?」
「俺は〈永久奴隷の首輪〉を解除したいんだ」
「〈永久奴隷の首輪〉をでありますか………」
「〈永久奴隷〉になると生殖機能が止まるだろ?俺はそれを復活させたいんだ。………エレミアとの子どもが欲しいから」
「!ではお2人は………」
「ああ、つまりはそういうことだ」
「わかりました!自分はお2人に救われた身、お2人の目的に協力するのは当然のことであります!」
「なに言ってるんだ?本題はここからだろうが」
「はい?」
「俺達はやるからには同じ目的を持ってやりたいと考えている。………つまり、俺はシルヴィアの子どもも欲しいって訳だ」
「へ?………へええええぇ!?」
「なんだ、ダメか?」
「い、いえ、ダメとかではなく、自分がご主人様のお、おおおお子を産むなど恐れ多いと言いますか、あのその………」
「落ち着け」
「は、はい」
「………どうしてもダメか?」
「ご主人様………。自分は理性を失っていた時の記憶はうっすらとしかありませんが、ご主人様とお会いした時のことはなんとなく、覚えているのであります。なにもかもが敵に思えていた中で、暖かく、力強い存在に出会いました。この人についていきたい、この人なら自分を守ってくれると………。だから、自分はこのままでも充分幸せで」
俺はシルヴィアを抱きしめた。
「シルヴィア、好きだ。………今が充分幸せなら、これからもっと幸せになればいい。俺が幸せにしてやる。好きな女の子に幸せになってほしい………俺のワガママを叶えてくれないか?」
「ズルいであります………ご主人様の、好きな人の臭いに包まれて、そんなこと言われたら、心臓がバクバクして、ポーッとして何も考えられなくなってしまうであります………」
「ナデナデ」
「わふんっ、ナデナデは、ナデナデは止めるであります。今ナデナデされたら、堕ちちゃう、堕ちちゃうから~」
「ナデナデナデナデ」
「くぅーん、わ、わかりました。わかりましたから!」
「んーなにがわかったんだ?ナデナデ」
「ご、ご主人様のお子を産ませていただきます。いえ産みたいです。あなたの赤ちゃんが欲しいの!」
「よくいえました」
「うう………堕とされてしまいました」
「むー、ズルいです。シルヴィアさんばっかり。ご主人様、私もナデナデしてほしいです!」
「ごめんよ、エレミア。これで機嫌を直しておくれ。ナデナデ」
「えへへへへ」
「うう………急にほっとかれたであります。2人の世界には近づけないであります」
「しょうがないなあ。ほら、シルヴィアもおいで」
「は、はい」
「ナデナデナデナデ」
「「えへへへへ」」
こうしてシルヴィアが仲間になったのであった。




