三章 鱗のある少年:君たちの安全は僕が守る
ホークの怪我が完治した。
「おめでとう。本当に、治って良かった。注射や飲み薬を嫌がるから、一時はどうなるだろうって思ったけどね」
彼に関しては、僕が必死で学んだ知識はあまり役に立たなかった。
傷を縫ったり消毒したり、包帯を巻くくらいのことしかさせてくれなかったから。
そうそう。ホークはなぜか、塗り薬は受けつけた。今思えば注射や飲み薬を嫌うのは、毒を警戒する気持ちが強かったからかもしれない。
一塗りするだけで死んでしまう毒薬があることを知ったら、塗り薬も駄目になるだろうか。僕はわざわざ言ったりしなかった。
彼の身の振り方はずっと考えていた。
また危ない旅に出るよりも、このままここで一緒に住む、なんてことは、望まないだろう。
ホークは豪快というか奔放というか、決まりごとに従うのが好きじゃない。決められた時間に寝て、決められた時間に食事をすることさえ、嫌そうにすることがある。
「ここにいる限り君たちの安全は僕が守る。でも君はきっと、出て行くんだろうね。せっかく綺麗に治ったのになぁ……」
また傷ついてしまうのが惜しくなるほど完璧に治った腕を撫でていると、ホークはくすぐったそうに腕を引く。
それが答えのような気がした。
「寂しいならもうちょっといてやってもいいけど?」
これは冗談だ。短いつき合いだけど僕には分かる。なぜならホークは、嘘が下手だ。
嘘をつくときというのは人それぞれの癖がある。しきりに顎をさする人もいれば、視線を泳がせる人も。
彼は何かをごまかすときに、わざと軽い口調で言うんだ。
「本当に?」
何も気づいていないふりをして、本心では喜んでいないことを隠すように笑う。僕は嘘をつくのが得意なほうだ。
するとホークは困ったように少し目を逸らす。それにも、気づかないふりをする。
「……本当に」
「やった! 君なら大歓迎だ! いつまででもここにいてね!」
もしホークが明日また出ていくような話をしても、僕は似たようなことをするだろう。
こんな場所でも、旅に出るよりは安全だから。




