千個我(四):「色心はあるが色胆がないね!」
良い物語はまだ続く——入院2日目の夜か3日目の夜か、同じ場面だった。昏睡から目覚めると、病室は静まり返っていた。かすかに、初日の夜に話したおじいさんが出院したようだった。
ただ、新たに現れたのは、優美で端正な女性と、車椅子に乗った神妙な顔つきのおじいさんだった。なぜか背中に冷たい風が通り抜け、また震えが始まり、呼吸のリズムも乱れた。
車椅子を押すその女性はあまりにも美しかった。彼女の顔は私の目を刺すほどで、一瞥しただけでそれ以上顔を上げられなかった。顔が真っ赤になり、心の緊張がそのおじいさんの前で丸裸になった気がした。
もしもう数回見つめたら、おじいさんの威厳を冒してしまうと思った。でもその瞬間、背中の冷気が羞恥心を吹き飛ばしていた。
「色心はあるが色胆がないね!」おじいさんが口を開いた。「まあいい、そういう奴はトラブルを起こさない。」
——若いのに、なかなか頑固者だな。小僧、お前は純粋すぎる。この世は強い者が正義だ。勉強ができても役に立たん!自由も尊厳も殴って勝ち取るものだ。お前が殴れればどんなに良かったか!
その口調は、まるで目の前で光る刀が揺れているようだった。彼がまだ何か言いたがっているのは分かっていた。
凍えるような緊張の中、私は最後の瞬間を待っていた。
——でもお前もただ者じゃないな。祥子が言ってたよ。蘭州で祥子に真っ向から立ち向かう奴はそういない。だから俺はお前を見に来た。お前の親父がお前を売り飛ばしたって聞いた。負け犬みたいになってるんだから、そんなに強がるな。
お前は殴れないなら、ちゃんと勉強して、他人に頭を下げることを覚えろ。さもなきゃ命をかけて、他人をお前の下僕にしろ。人は死を恐れる。お前が本気になれば、相手は萎縮する。
彼が何を言いたいのか分からなかったが、その穏やかな口調には少し好感が湧き、息苦しい圧迫感が和らいでいた。彼がどんな人物かは分かっていたが、想像していたような凶悪さはなかった。
——こうしよう、華清。お前に二つの選択肢をやる。一つ目は、俺に謝って、「間違ってました」と一言言えば、お前を生かす。お前は真面目に勉強して、汚職だの三農問題だの研究なんて毎日騒ぐな。頭を下げるところは下げて、終わったら良い仕事を見つけてやる。二つ目は、今日、お前は死ぬ。祥子にお前を麻袋に詰めて黄河に捨てさせる。安心しろ、皆が飯を食ってる間に蘭州を出られるよ!
まるで氷に包まれたように動けず、雷鳴が晴天を裂くようだった!私はそこに呆然とし、天地が静止し、時間が止まった。しばらくして、耳元を風が掠めた。
——言うのか、言わないのか?
——いや、僕は誰とも揉めてない。江濤に殴られたけど、それまで全く知らなかった……
——言うのか、言わないのか?!言えよ、「ごめんなさい」の三文字で命が助かるんだぞ!
私は口を開かないと決めた。死にたくない。私はまだ19歳だ。まだちゃんと生きてない。愛が何かも知らない。正義も見てない……でも、尊厳を失い、黒白を逆転させるわけにはいかない。
朦朧としながら、枕に寄りかかって半ば横になっていた。起き上がろうとしたが、体がだるく力が入らなかった。
その瞬間、温度のない汗が額を濡らし、目を混乱させた。私はもう自分を差し出したようなものだった。ただ待っていた。首を刎ねる命令を待つばかりだった。目を閉じられず、天井の白さを見つめ、裁きを待った。
——最後に聞く。言うのか——言わないのか?
時間が再び止まった。叫びたかったが、天地に喉を塞がれた!死にたくない。屈辱的に生きたくない——天よ、なぜこんな目に……
「早く言え——早く言え!早く言え——今すぐ言え——」女の泣き声が響いた。その黄昏、その美しいお姉さんが私に残した唯一の言葉だった。彼女はあんなに美しく、泣き声さえ慎ましかったのに、私に生きてほしいという願いはあまりにも純粋だった……
——ご……ごめんなさい……
——声が小さすぎる、聞こえねえ!
——ごめんなさい!!!
——よし、小僧。おめでとう、生き延びたぞ。ほら、生きてればこんな美人もいる。いいだろ!ハハ、お前今頃恥ずかしがって硬くなってるだろ、ハハ、硬くなるのはいいぞ、絶対にインポになんなよ。行くぞ、帰る時間だ……
ぼんやりと、美しいお姉さんが急いで目を拭い、両手で車椅子を握るのが見えた。停滞していた空気がゆっくり流れ始めた。彼女に感謝だ。声を出す理由をくれた。車椅子と一緒に消えたのは、蘭のように高貴な彼女の姿だった……
記憶では、それからすぐだったと思う。看護師が病室に飛び込んできて、私の手をつかみ、顔を上げ、涙に濡れた顔で叫んだ。
「泣けよ!泣け——泣き出せよ——」




