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第41話

「なるほど、そんな事が」


ホバは紅茶の入ったティーカップを傾けながら、サクラの語る今までの経緯に興味深そうに相槌を打つ。


「それで今街に入れず困っている。どうにか出来んか?」

「僕にもどうしようも無いですね、現地の方達の判断ですから」

「お前だって街に入れないぞ、困るだろう?」

「僕は野宿の準備があるので問題ありません」


ホバはそう言って、空になったティーカップに紅茶を注いだ。

街の方から視線を感じる。街に入れる事も出来ないが、街の入口に座りこまれてお茶会を開かれれば迷惑だろう。


「どこかに移動しようにも、どこにも行けないからなぁ」

「人間の領域に行くのはいかがでしょうか?」

「王命を受けた部隊とやりあったし、きっと反逆者認定されている。入国も厳しいどころか、下手すりゃ追いかけ回される」

「ふむ、でしたら噂を消せば良いのでは?」


ホバは平然とそう言った。

俺達は顔を見合せ、頭に疑問符を浮かべた。


「簡単な話です。魔族側の権力を持つ者に掛け合い、噂はデマだったと証明してもらえばいいのです」

「ふむ、魔族側の権力者と言うとベルフェゴール家辺りか」


リーリャンが呟くと、ナナは飲んでいた紅茶を勢いよく吐き出した。


「ゲホッゲホッ! 他にも有力な魔族はいっぱいいるでありますよ!? 別にベルフェゴールに掛け合わずとも何とかなるでありますよ!」

「なんだ? 何か関係があるのか?」

「ゲェー! なんも無いでありますよ旦那様!」

「ベルフェゴールと言うと、最初に変異した最古の魔族。元の魔物はもう存在しない悪魔だと言われている一族ですね」

「ホバ、そのベルフェゴールがいる所まで案内してくれ!」


サクラがそう頼み込むと、ホバはしっかりと頷いた。


「いいでしょう、僕に出来る限りのお手伝いをしましょう」


ホバはみんなの持っているカップを回収し荷物の中にしまうと、地面に指で円を描き始めた。


「ほれほれ、きちんと中に入れ!」

「なんだなんだ?」

「押さないでくれるか、少し窮屈だ」

「リーリャンの胸がデカイから邪魔であります!」


わちゃわちゃと円の中に収まった俺達に、ホバは笑みを投げかける。

サクラは円からはみ出している部分が無いかと周囲をぐるりと一周し、円の中に飛び込んだ。


「では、送りますね」

「おう! また後でな!」


地面に手をつくホバに対して、サクラが手を振る。

次の瞬間、俺達の足元の円が光りだした。

あまりの眩しさに目を瞑ると、一瞬で空気が変わった。


「うわーーーっ!!!」

「・・・なんだ?」


ナナの絶叫が響く。

目を開くと、空は暗く木々は枯れ、まるで魔界の様な景色が広がっていた。

少し遠くには、巨大な城と城下町が広がっている。


「なぁサクラ、今のは? それにここは?」

「その説明は僕からいたしましょう」


振り返ると、ホバが平然とした様子でそこに立っていた。


「我が王の力を借り、あなた達を風に乗せて運んだのです。目的地は魔界の長ベルフェゴールが治める街、デビルシティです」

「デビルシティ? 随分なネーミングセンスだな」

「絶対行かないであります! 絶対絶対絶〜対ナナは行かないでありますからね!」

「落ち着けよナナ、一体どうしたってんだ言うんだい?」


暴れるナナを、リーリャンがなだめている。ナナは大剣を抱き枕の様に抱き、地面に寝転がり足をジタバタと動かしている。


「あれはどうした?」

「さぁ? ナナ、どうしたんだ?」

「行きたくないであります! 絶対に!」

「さっきからずっとこの様子なんだよ、君達原因を知ってたりしないかい?」

「いや、一切心当たりがない」

「我も」


ひとまずナナをサクラと抱え上げ、街に向かって歩く。ナナは自分のマントに包まり、まるで荷物の様に振舞っている。

街の関所に入ると、俺達は当然のように止められた。


「何者だ、この街に来た目的を言え」

「俺達はベルフェゴール? って言う人に会って自分達の悪い噂を取り除いてもらおうとしているんだよ」

「・・・?」


門番は頭に疑問符を浮かべ、俺達に疑いの眼差しを向ける。当然だ、突然街に来て一番偉い人に会わせろと言うのはおかしな話だ。


「・・・はぁ」


ナナが観念したように、マントを解き地面に降り立つ。

その顔を見た門番は、目を丸くした。


「ナナであります、帰ったと父に報告して欲しいであります」

「ナ、ナナ様!? ただいま報告してまいります!」


門番は慌てた様子で門の内側に引っ込むと、あっという間に門が開いた。


「もうここまで来たのであります、とっとと要件済ませて次の街に行くでありますよ」

「何がどうなってるんだ?」

「はぁ〜〜〜」


ナナはいつもと様子が変わり、わざとらしく大きなため息をついている。

俺達は不思議がりながらも、デビルシティに足を踏み入れた。

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