表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/102

第37話

「そんなものか魔族共!」

「そ、そんな!?」


父上は肩で止められたナナの大剣を掴み上げ、ナナごと上空に放り投げた。


「《《勇者流》》・・・!」

「まずい!」


サクラが飛び上がり、ナナと父上の間に割り込む。

それと同時に炎の翼を広げたリーリャンも、サクラの前方に入り込んだ。


「《《烈地斬》》!」


父上はナナの放った技を完全にコピーして、ナナに打ち返した。

巨大な斬撃が衝撃波となって突き進み、リーリャンの体を真っ二つに切り裂いた。その後ろにいたサクラも咄嗟に爪でガードするが、爪が砕けナナと一緒にコロッセオの天井に叩きつけられる。

それでも尚衝撃波は進み続け、天井が大きく歪む。

歪みに耐えきれなくなったコロッセオの天井は崩壊し、地上にあったレニィの街並みが落下してきた。


「【反転】!」


俺は自分の真上に落ちてきた瓦礫を吹き飛ばし、身の安全を確保する。

コロッセオの天井には丸い穴が開き、そこから雨と瓦礫が絶えず降り注ぎ続ける。


「ふははははは!」


父上の歓声にも似た笑い声が、暗くなったコロッセオに響き渡る。

俺は瓦礫の裏に隠れながら、サクラ達を必死に探す。


「お、お前様・・・」

「サクラ!」


瓦礫に押し潰される様な形で身動きが取れていないサクラを見つける。出血も酷く手などはボロボロであった。


「ナナは無事だ、我のすぐ下にいる」

「今引っ張り出す、少し耐えてくれ」

「お前様、今の我らでは奴には勝てん。どうにかして逃げてくれ」


俺はサクラの腕を引っ張りながら、首を横に振る。


「嫌だ! 見捨てられるか!」

「頼む、我が時間を稼ぐから」

「ふざけるな! 逃げるなら絶対一緒だ!」

「お前様・・・」


俺はサクラの上にのしかかっている瓦礫に手を伸ばす、その時背後で物音がした。

振り返ると、そこには宝剣を構えた父上がいた。


「今トドメを刺してやる」

「く・・・!」


俺は地面に落ちていた瓦礫を拾い上げ、父上に向かって投げ付ける。父上は宝剣を軽く振り、飛んでくる瓦礫を粉微塵に砕く。


「来るな、来るな!」

「無駄だ、魔族は皆殺しだ。その後この街を手に入れる」

「来るなぁ!」


俺は瓦礫の中に混じって、ナナが持っていた水筒を投げ付けた。父上は何も気にすることなく、他の瓦礫と同じ様に水筒も真っ二つにした。


「これは《《契約》》だ! 自由の身にしてやるから俺達を助けろ!」

『・・・承諾』


水筒から飛び出したヴェールの核は空中で雨を吸収し、あっという間に巨大なスライムの形になった。瓦礫を持ち上げまるで鎧の様に装着し、更に雨を吸収しあっという間にコロッセオを覆い尽くした。


「サクラ! ナナ!」


俺はヴェールが持ち上げた瓦礫の下からサクラとナナを回収し、ヴェールに押し出される形でコロッセオから放り出された。


「ぐ、まだ痛むであります・・・」

「お前様、助かった」

「いいや、まだだ」


俺は踵を返し、コロッセオに戻った。膨張を続けるヴェールの体に飛び込み、顔を動かしリーリャンを探す。


(見つけた!)


リーリャンは壁に寄り掛かる様に倒れており、その肩に手を回して今来た道を泳いで戻る。

次の瞬間、俺のすぐ側を巨大な斬撃が切り裂いた。

ヴェールの中心部では父上が剣を振り続け、ヴェールを片っ端から粉々に切り裂いていた。


『損傷率十五パーセント』


ヴェールがそう言うと同時に俺達を押し流し、出口に運んでくれた。


「リーリャン!」

「まずい、息をしていない!」

「人工呼吸するであります!」


ナナが人工呼吸をしようと顔を近付けた瞬間、リーリャンの口から炎が吐き出された。

炎を咳き込みながら、リーリャンが目を覚ます。


「ゲホッ、ここは?」

「コロッセオの出口だ、俺達じゃ勝てないからヴェールに代わってもらった」

「時間稼ぎか・・・これからどうする?」

「正直な話奴に勝てるとは到底思えん、我ですら勝てるかどうか」

「ここは逃げよう」


俺の提案に皆渋い顔をする。


「どうせすぐ追いつかれるであります。次に追いつかれた時には、死を覚悟しなければいけないでありますよ」

「いや、その心配はない」

「どうしてだい?」

「この街にいる兵士はほとんどリーリャンが焼いて殺していた、大規模な軍を動かす事は出来ない」

「でも一人でも追ってくるかもしれんぞ」

「そうは思えない。奴らの目的はあくまでこの街、魔族の討伐はそれに付随する業務だ」

「この街を明け渡せと言うのか!?」


リーリャンが怒り、俺の胸ぐらを掴み上げる。

俺は冷静にその腕を抑え、リーリャンの目を真っ直ぐ見つめる。


「俺達の力不足だ、ごめん」

「く・・・クソ!」


リーリャンは俺を投げ飛ばし、頭を掻きむしってその場にうずくまった。

そして何かを決心したように立ち上がり、街の端を指さした。


「あっちにも普段は使われていない出入口がある。孤児院の人達を逃がしたいから手伝ってくれ」

「分かった。サクラ、ナナ、すまないが休んでいる暇はないみたいだ」

「大丈夫だお前様、もうひと踏ん張りだ」

「任せてください旦那様! ナナは丈夫でありますからね!」


次の瞬間、コロッセオの天井に開いた穴から何かが吹き飛ばされた。それは天高く打ち上がり、続いてもう一つの小さなものがその何かを貫いた。


「不死魔王ヴェール、討ち取ったり!」


天高く飛び上がり勝どきを上げたのは、紛れもない父上だった。

ヴェールの体はバラバラに散らばり、街のあちこちに散らばった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ