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第17話

朝がやってきた。岩石の噴出は留まる所を知らず、俺達は街近くの森まで避難を強いられていた。


「ジハードさん、ギルドマスターからお話があると」

「俺に?」


怪我人の手当の手を止め、他の人間に引き継ぐ。俺はエルサの案内で、ギルドマスターとやらに会う事になった。


「あんたがギルドマスターか?」

「いかにも。私がこの街のギルドマスターだ」


小さなテーブルと、ヨボヨボのおじいさんが一人だけ座っていた。


「お前さん達の警告のおかげで死人は出なかった、まずは感謝を述べる」

「別に、大した事じゃない。それに俺じゃなくてサクラに言うべきだ」


当のサクラ本人は疲れからか、テントの方で眠ってしまっている。

ギルドマスターは深々と下げた頭を上げ、鋭い目線を俺に向けた。


「して、今回のダンジョンの異変。疑うようで悪いが君達が原因ではないかと声が上がっている」

「それに関しては否定したいが、原因は俺達にも分からない。ダンジョンの中で岩人間に襲われて、必死に逃げたらこうなったんだ」

「報告に聞いている。溶解液に包まれた岩人間、聞いた事もない魔物だ」


ギルドマスターは髪の報告書を机の上に置き、大きなため息をついた。


「エルサから強い推薦があってだな。この一件の解決を君達に任せたい」

「エルサさんから?」

「私の目は可能と判断しています」

「原因も何も分からない、自然現象かもしれないものの解決がか?」


俺にはエルサの意図が全く読めなかった。どうして俺達をダンジョンに行かせたがる。どうして解決が可能だと言い切れる。どうしてエルサはこのダンジョンに執着しているのか。


「・・・まさか」

「旦那様!」


街でダンジョンの見張りをしていたはずのナナが、俺の元に駆け付ける。


「ダンジョンの入口に岩人間達が集まっているであります!」

「なに!」


俺はナナの案内でダンジョンの入口が見える高台に移動する。

確かにダンジョンの入口には岩人間達が集まり、何かを探す様に外の様子を伺っていた。


「どうやらあなた達の事を探している様ですね」

「冗談やめろよエルサさん、俺達は何もしていない」

「そちらこそご冗談を」


エルサは俺の方をじっと見て、静かに頭を下げた。


「これはギルドからの正式な依頼です。どうかこの異変を収めてください。あなた達ならそれが可能なはずです」

「・・・分かった、引き受けよう。ナナ、サクラを起こしてきてくれ」

「かしこまりました!」


サクラを起こしてきたナナと合流し、俺達は軽く準備を行う。ボロボロだった服は新しくしてもらい、サクラには腹一杯の食料を。ナナには大剣のメンテナンスを厚意でしてもらった。


「じゃあ、行ってくる」

「はい、どうかご無事で」


エルサに軽く別れを告げ、俺達は徒歩で街の方に向かう。街の様子は打って変わって、岩石に押し潰されどの建物も跡形しか残っていなかった。唯一ギルドだけが綺麗な状態で残っていた。

またダンジョンの上方から岩石が吹き出す。岩石は俺達の頭上を通り越し、ギルドに直撃した。避難を促すための鐘を破壊し、鈍い鐘の音が鳴り響く。

ダンジョンの入口に辿り着く。岩人間達は俺達の姿を見るや否や、興奮した様子で溶解液を撒き散らす。


「退けよ」

「ぎぎ、人間、戦士長様がお呼び、だ」


驚いた事に、岩人間達は言葉を放った。俺達を招き入れる様に道を作り、ダンジョンの端に寄った。

俺達は警戒をしながら岩人間達に囲まれ、ダンジョンの奥に進んで行った。内部の構造は昨日見た様子とは違い、岩が剥がれ落ちブヨブヨの壁が所々に見て取れた。


「ぎ、ここで待て」


俺達は小さ小部屋に通され、入口が閉ざされる。すると、ゆっくりと部屋全体が下降を始めた。


「まるでエレベーターだな」


しばらく下降すると速度が遅くなり、やがて部屋の下降が止まった。部屋の入口が空くと、溶解液の凄まじい臭いが漂ってきた。

俺達は部屋の外に出る。そこは広い空間が広がっており、中央に巨大な岩人間が立っていた。


「俺は《《自然魔王ガルガンチュア》》、お前達の名を聞こう」

「・・・俺はジハード・アーサー」

「サクラ」

「ナナであります」

「そうか。ここに呼んだ要件は一つ、供物になって欲しいのだ」


ガルガンチュアはそう言って、地面から巨大な岩の剣を引き抜いた。

俺達は一瞬で戦闘態勢になる。


「供物? 随分な物言いだな、誰の為の供物だ?」

「無論、俺の為のだ」

「なら部下の岩人間共にやらせればいい、お前が出る幕は無いはずだ」

「口数が多いな、恐れているのか?」

「いいや、疑問を晴らしに来ただけだ」


俺は姿勢を低くし、小声でサクラとナナに話しかける。


「俺が合図したらバラけろ、俺の予想が正しければアイツは動けないはずだ」

「どうしてであります?」

「分かったぞお前様」

「えっ、りょ、了解であります」


サクラは即座に頷き、ナナは遅れて頷いた。

俺はゆっくりと前進し、ガルガンチュアの目の前にまで進み出る。


「間合いだぞ」

「それはこっちのセリフだ」


ガルガンチュアが剣を振り上げる。

それと同時に飛び上がり、剣を振り下ろそうとするガルガンチュアの腕に触れた。


「【反転】!」

「ぬっ!」


腕は逆方向に弾け飛び、剣はその腕から吹き飛び壁に突き刺さる。

ガルガンチュアは空いた手で地面に腕を突っ込む。すると、壁に刺さっていたはずの剣が地面から引き抜かれた。


「今だ!」


俺の合図と同時にサクラとナナがバラバラに走り出す。ガルガンチュアは一瞬迷った様な素振りを見せ、腕を地面に押し戻した。


「サクラ!」

「おっ!」


俺が呼びかけた瞬間、サクラのすぐ側の壁から剣が腕ごと生えてくる。サクラはそれをギリギリで躱し、壁から伸びる腕に向かって爪を振り抜いた。しかし爪が腕に接触した瞬間、煙と共に鈍い音が響いた。


「痛っ!」


サクラを見ると、爪がパックリと折れていた。断面は溶けた様にドロドロになり、腕は剣ごと壁に吸い込まれて消えた。


「縦横無尽、俺の剣はこの部屋の全てが間合いだ!」

「そうかよ!」


俺は地面を踏み込み、ガルガンチュアの腹部に向かって腕を伸ばす。だがその瞬間、ガルガンチュアは地面から腕と剣を引き抜き、俺の腕を防いだ。直後手の平に激痛が走る。一瞬しか触っていなかったのに、俺の手の平はドロドロに溶けていた。


「クソ!」

「無駄だ、この溶解液は今までとは濃度が違う!」


ガルガンチュアが剣を振り抜く。

剣をコーティングしていた溶解液が粒となって飛び、ナナの進路を妨害する。


「動く必要など無し! ここからお前達を溶かし尽くして殺してやる!」

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