第弍章ー力ー
「……でも、なんでそれが理由なんですか?
さっき妖は気紛れで人に悪戯するって言ってましたよね?
それに危害を加えない生霊なのに、どうして私はこうなったんですか?」
炎陽は加那のその疑問に最もだと頷き、説明を続ける。
「一つずつ説明して行こうか。
まず、妖の仕業ではないと思った理由からだね」
人差し指を一つ立てて、炎陽は続ける。
「まず一つ。妖が原因ならば、君は五体満足でここにいない」
「……え?」
炎陽の口から出た言葉は、加那の予想を飛び越えていた。
“五体満足ではいられない”、言葉の通りならばこれからの人生の歩みを真剣に考えなければいけなかっただろう。
「さっきも言ったが、妖っていうのは酷くいい加減でね。力を持った人間、力を持たない人間の区別なしにちょっかいをかけてくる。そしてそのちょっかいと言うのが大抵の場合が酷く残酷でね。この場での明言は避けるけれども、まぁ力を持たない人間ならば生きていれば御の字だろう」
ごくりと加那は生唾を飲み込む。まさに言葉通りの意味であり、この力を得た経緯が妖由来でなくて心底ほっとした。
「二つ目の理由」
炎陽は中指を立てて説明を続ける。
「妖は君に興味を示さない」
「興味……?」
「うん、興味。何度も言うけれど妖はかなりいい加減でね。人の個体の選別なんてことはまぁ出来ない。僕たちが同じ種類の虫を区別出来ないのと同じでね。
で、人の良し悪しを何で判断するのかと言えば、大抵が人の持つ気だ」
「気、ですか?それって漫画みたいなものの?」
気と言われてまず加那が思い付いたのは、誰でも一度はタイトルを聞いた事があるであろう漫画のシーンであった。
私には見えないだけで、実はこの人達にはそんな漫画みたいな超常的な力を持っているのだろうか。もしそうならば、もしかして空をも飛んでしまうのでは、と少しワクワクし始めた加那の思考を読んだのか、炎陽はクスリと笑いを一つこぼす。




