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プロローグ
今日は、彼女の一年の中で、最も大切な日である。
自分自身の誕生日などとは比べものにならない程に。
「元気だった?」
彼女は、いつものように語りかける。
「私はね、うーん…去年と変わらないかな。毎日楽しく過ごせてるよ。」
返ってくる声は無くとも、彼女は笑顔でこの一年で起こったことを優しく語り続けた。
何分、何十分いただろうか。
彼女は地面から腰を上げて、目の前の十字架を見下ろすように立ち上がった。
「明日も仕事だから、そろそろ行かなきゃ。」
どこか名残惜しそうな眼差しで空を眺めたが、自分の頬を数回叩く事でしゃんと背筋を伸ばした。
「また来年来るね。お父さん、お母さん。」
十字架の下に掘られた両親の名をそっとなぞって、彼女は歩き出した。




