第四話 主題歌と試供品
『超レンタルロボ カリテンダー』主題歌
GO!カリテンダー
作詞:宇刈見栄春
作曲:ミエハル
俺はレンタル 鋼のボディ
宇宙を駆ける 商売道具
だけどわかるぜ 守る意味
この星の未来
※セリフ
ユーザー様に返却期限のご案内をお知らせいたします。
残り時間30分となりました。
超過いたしますと延滞料金が発生いたします。
「こりゃいかん、急げ千獅雄!」
「はい、博士!」
GO!GO!カリテンダー!
正義を貸し出すスーパーロボ!
地球を守れ! カリテンビーム!
今だ必殺! レンタルハリケーン!
鋼のキックだ! 即日返脚!
悪を止めろ! 延滞マイクロウェーブ!
今日も発進!
銀河を駆けろ!
超レンタルロボ
カリテンダー!!
「こんな歌はどうじゃ? 良い宣伝になるじゃろ?」
宇刈博士は誇らしげに胸を張り、千獅雄を見た。
「どうって言われても……」
千獅雄は返答に困った。
何しろカリテンダーは一昨日返却してしまったし、惑星侵略軍団ノットルもすでに撤退している。
「地球の危機も去りましたし、必要ないのでは?」
博士はチッチッチッと指を振った。
(何故だろう……妙にイラつく)
そんな千獅雄の気持ちをよそに、博士はニヤリと笑う。
「どうやら、地球に“真の脅威”が迫っているらしいんじゃ」
「なんですって!?」
「しかもじゃ――」
博士はもったいぶって間を置く。
「コスモレンタルカンパニーから、良い戦闘データが取れた礼として、カリテンダーの“試供品”が届く予定になっておる」
「試供品……?」
「これで地球を守れるぞ! そして、ワシが作ったことにすれば、ワシの株がうなぎ登りという寸法じゃ!」
「最低ですね!?」
――そのときだった。
ゴゴゴゴゴ……。
空が、唸った。
「……ん?」
千獅雄が顔を上げる。
次の瞬間、巨大な影が空を覆った。
「え」
落ちてきた。
とんでもなく巨大な“箱”が。
ズドォォォォン!!
山が揺れた。
「な、なんですかこれええええええ!?」
「落ち着け千獅雄」
宇刈博士は、やけに落ち着いていた。
目の前には――
巨大なプラモデルの箱。
正確には、プラモデル箱“風”のコンテナである。
表面には無駄にカラフルな印刷が施され、完成イメージ図が描かれていた。
「……カリテンダーじゃな」
「箱ですよね!?」
「うむ」
「どう見ても箱ですよね!?」
「試供品らしい」
千獅雄は嫌な予感しかしなかった。
ふと、コンテナ側面の注意書きが目に入る。
※写真は塗装してあります。
※パイロットは付属していません。
※組み立てには専門知識が必要です。
※小さなお子様の手の届かないところに保管してください。
「博士」
「なんじゃ」
「これ、どうやって子供の手の届かないところに置くんですか?」
博士は少し考えた。
「……宇宙とか?」
「雑すぎません!?」
そのとき。
プシューッ――。
コンテナが音を立てて展開を始めた。
外装が分割され、ゆっくりと開いていく。
「おお……」
千獅雄は思わず息を呑む。
中にあったのは――一体の巨大ロボット。
……いや。
「未組み立て!?」
「未組み立てじゃな」
しかも。
「塗装もされてない!?」
「試供品じゃからの」
「それで済ませていいんですか!?」
博士は箱の中から何かを取り出した。
ドサッ。
机に置かれたのは――
分厚い冊子の山。
《カリテンダー組み立てマニュアル 全48巻》
「雑誌ですか!?」
「説明書じゃ」
「多すぎません!?」
博士は一冊を開く。
「ステップ1、ランナーの確認」
「ランナー?」
「AからZまであるらしい」
「多いな!?」
「その後はAA、AB……」
「終わらないやつだこれ!!」
千獅雄は頭を抱えた。
「これ……いつ完成するんですか……?」
「まあ、脅威は当分先らしいからの」
「先ってどれくらいですか」
「知らん」
「知らないで受け取ったんですか!?」
博士はニヤリと笑った。
「安心せい」
「何がですか」
「こんなこともあろうかと――」
博士は振り返り、大声で呼んだ。
「新人を雇っておいたわい! おーい、ゲッカ君!」
少しの沈黙。
やがて、研究所の入口から足音が近づいてくる。
「……ゲッカ・ルナライト。年齢は十七歳。よろしく」
現れたのは、肩まで伸びた銀髪の少女だった。
小柄な体格。
どこか感情の薄い声。
千獅雄は思わず博士に小声で聞いた。
「博士……」
「なんじゃ」
「新人って、この子ですか?」
「そうじゃ。組み立て要員じゃ」
「軽く言いますね!?」
ゲッカは無言で巨大コンテナを見上げた。
「……これ?」
「カリテンダーじゃ」
数秒、沈黙。
「……プラモデル?」
「三十メートルあるがな」
ゲッカは少しだけ考えた。
「……無理」
即答だった。
「やっぱりそうだよね!?」
千獅雄の声が研究所内に響いた。
「……博士」
「うむ」
「これ、本当に三人だけでやるんですか?」
博士は、ゆっくりとうなずいた。
「まあ、何とかなるじゃろ」
――それから二ヶ月後。
本当に、完成した。
完成したカリテンダーを前に、ゲッカは固まっていた。
「……これ」
ゆっくりと振り向く。
「私、これに墜とされたんだけど」
千獅雄と博士は、顔を見合わせる。
「……え?」
その日、三人はようやく気づいた。 敵と味方が、同じ屋根の下にいたことに。




