50話
最終話です。視点が変わります、ご注意下さい。
「は?」
私はあまりに衝撃的な報告に素っ頓狂な声をあげた。「魔王復活」の神託を受けたその後、私は魔王復活した時の為、対策を練っていた。様々な街に飛び、魔物が入れないように結界を施したり。騎士達の訓練には一層厳しくした。それなりに良い動きになったと思う。元々鍛えている人間たちなので筋は良いのだ。魔王対策の手紙もなるべく分かりやすくなるようにまとめている。
そんな事を王城でやっていた訳なのだが……。
「も、もう一度言ってくれる……?」
私は信じたくなくて、聞き間違いだと思いたくて、もう一度聞いてみる事にした。報告しにきたギルが仕方なくと言った風に溜息を吐いてから、言い聞かせるように口を開く。
「だから、『閃光烈火』パーティーが魔王討伐の神託を受けたんだって」
ギルは先ほどのセリフと全く変わらない言葉を吐いた。『閃光烈火』パーティーは私、ギル、マリア、リョウ、ラインハルト、クラウド、レイの事だ。
それが魔王討伐メンバーに選ばれただって?私は血の気が引いた。
私の仲間が、全員私を殺すメンバーに入っていると?どうしてそうなった?私は入ったとしてもマリア位だろうと考えていた。マリアは聖女だから、主にヒーラーの役割を担うから大丈夫だろうと考えていた。
私を攻撃するなんて、マリアには出来ないだろうから。回復職のみでも役に立つマリアだけならば、私が魔王でも大丈夫だろうと考えていた。甘かった。あまりの動揺に、精神が大きく食われるのが分かった。頭がクラクラしてきて、殺したくて殺したくて、仕方がなくなる。
神託とは絶対だった。神託を受けた者は魔王を討伐する上で必要最低限必須とされる。メンバーを増やす事は可能だろうが、減らす事は出来ない。それくらい神託は強制力を持っている。
彼らに、私を殺せって?それは、なんて残酷な……。殺される私は別にどうでもいい。けれど彼らは?彼らは私が少し傷ついただけでも怒るほど心配してくれる優しい人達なのだ。それがなんだ?私を殺せ?出来るのか?彼らに……。
マリアだけなら大丈夫だろうと言う考えで、ずっと黙っていた私の罰なのかもしれない。或いは、聖女を助けたのがそもそもの間違いだったのか……。
「主……」
心配そうに声を掛けてくるラインハルト。彼は私が魔王だと知っている。私は大きく息を吸って殺人衝動を無理矢理押し込める。気持ちの悪さに吐いてしまいそうだった。大きく蝕まれた精神がもう長く無いと思い知らされた。それでもなんとか自我を保とうと努力する。
「アル?体調が悪いのか?」
ギルが心配そうに顔を覗き込む。その殺したくなるような顔から目を逸らし、ラインハルトと目を合わせる。こちらも随分と殺し甲斐のありそうな顔だった。すでに命令はしている。腹は括っているだろう。魔王を主にしようとした時点で彼の運命は決まっていたのかもしれない。
「ふっ……はは」
乾いた笑いが漏れる。彼らは私を殺すメンバーに入ってしまった。どうしてそうなったのか、運命とは酷いモノだ。私は彼らを、そんな運命に巻き込んでしまった。そんなのが望みではなかった。ただ、彼らと共に、平和に、穏やかに……どうして私が魔王なのだろう。
震える手で、そっとギルの手に触れる。
「いっ!」
ギルの手が砕けた。パタパタと鮮血が零れ落ちる。
「あ」
腕の加減を間違えてしまった。失敗した。ギルが腕を押さえて後ずさる。その顔には冷や汗が浮かんでおり、痛みを我慢しているのが分かる。
「主!?」
「アル!?」
慌てるマリアとラインハルト。彼らは私の魔王化を知っている。だからすぐに私の異変に気が付いた。私は後ろに下がり、首を振る。いや、違う。攻撃するつもりなんて……。自分の手を見ると、ギルの血が付いている。
「アル!」
後ろに下がろうとする私の腕をリョウが掴む。バチッという音がして、リョウの首が飛んでしまった。そんな光景を、全員が信じられないモノを見るような顔で見つめてくる。
リョウの首が飛んだ後、そこからは血が噴水のように溢れ出す。そんな、殺してなんか……私の足にリョウの血が流れてくる。そのどうしようもない現実に背筋が凍る。
嗚呼、もう、良い。もういいや。もう何も考えたくはない。別に私が殺すわけじゃない。だから平気だよ。
なんで今まで彼らを生かしておいたのか、分からない。分からない、分からない。こんなにも心地よい。彼らを殺せば、もう何も考える必要性はない。
「主!しっかりしてくれ!」
「アル、ダメ!」
ラインハルトとマリアが耳障りな声を発する。
五月蠅い2人を無視して、兄の方に視線をうつす。疲れた顔を浮かべた兄は、どこかホッとしたような顔をした。意味が分からない。今から殺されるってのに……似た者兄妹だったんだね。精神では兄妹ではないはずなのに、変なところで似てるんだな。そっとその胸に触れてから、そのまま兄の心臓を抉りだす。
その光景に恐れ戦くマリアとラインハルトは、じりじりと後ろに下がる。そんな風に後ろに下がっても無駄だよ?この街から出たとしても、すぐに追いついて殺してやる。殺してやる。殺してやる。
まずは逃げ出したレイを索敵し、後ろに降り立つ。真っ青な顔をしているレイが無性に可笑しくって何度も剣を刺した。
ラインハルトは、泣きそうな顔を浮かべた後、頭を垂れる。それは、殺してくださいと言っているようなものだった。いいよ、楽に殺してあげる。
「アハハ!」
心の底から笑いが漏れる。血に染まる床がとても綺麗で、清々しい。頭を下げているラインハルトの背中に剣を深く突き刺す。ラインハルトがヒュ、と浅く息をして、声をあげない様に耐えているのが分かった。
次にマリアを見据える。掴んだその手が火傷する。なんて忌々しい女なのだろう。震えて、涙を流す姿は本当に反吐が出る。私が笑うと、マリアはビクンと跳ねた。とても失礼な女。私から彼を奪っておいて……。
「なん……なんで、だ。アル……!?」
腕を押さえて、泣いているギル。最後まで私を魔王だと気付かない愚か者。女だというのにも全く気が付かない馬鹿者。そんな彼の事は気に入っていたよ。
だから最後に殺して、踊ろうと思うの。
マリアを犯させて、マリアが泣いて喜ぶ。ギルが泣いて喜ぶ。なんて素敵な光景なのかしら。
マリアの目が暗く澱んだら、この遊びはおしまい。さっさと殺して、最後はギル。
「お前が魔王か」
ギルが私に杖を向ける。その瞳からは涙が零れ、憎しみが込められている。ああ、これだ。この目が好きなの。ギル、言ったものね、私を止めてくれるって。クスリと嗤って、クルリと回る。
ああ、殺してくれ、殺してくれ、殺してくれ、殺してくれ、殺してくれ。
―――頼む。
ああ、でもギルでは弱すぎた。
私の攻撃にギルは為す術もなく崩れ落ちる。
なんで?なんで?なんで?どうして貴方は私を殺してくれないの?
勇者、ゆうしゃ、殺してよ。
―――こんな世界、いらない。
「―――っ!?」
ハッとして起き上がる。ドッドッドと心臓が速くなる。生々しい殺した感触が蘇り、ゾッとする。
―――いつだ?いつから夢を見ていた?どれが現実だ?嘘だろ?殺してないよな?
冷や汗がとめどなく流れる。体は冷え切ってしまい、震えが止まらない。
ストンと闇を伝ってギルの寝室に降り立つ。眠っているのか、死んでいるのか分からない程綺麗な顔だった。震える手で、そっとギルの首に触れる。その首は泣きたくなるくらい暖かかった。良かった、生きている。殺してない、やっぱりあれは夢だ。落ち着け、私がそんな事するはずがないんだから。
生きているのを確かめるように、そっとそっとギルを撫でる。どこまでが夢で、どこまでが現実か、分からない。ああ、彼らは魔王討伐メンバーに入ったんだったか?あれも夢?……夢であってほしい。彼らにそんな重責を負わせたくはない。
ギルの頭に手を乗せたまま、浅い呼吸を繰り返していたら、私の手にギルの手が触れた。
「……アル?」
少し頬を赤らめる姿は、いつものギルだった。ホッと胸を撫で下ろす。ベッドから起き上がり、真っ直ぐに私を見据える。
「討伐メンバーに入ったって言った後、すぐに倒れたんだ。覚えているか?というか、本当に体調は大丈夫なのか?どうして俺を殺したんだ?」
「―――え」
なんだ?ギルを殺した?私が?違う、殺していない。見つめるギルの瞳は濁って、腐りかけている。……嫌だ。違う。生きている。
「どうしたんだ?アル?おい!」
ユラユラ揺られてハッとした。大丈夫、ギルは生きている。それは生者の目だ。辛い、生きている事が辛い。怖い、殺していないか、怖い。大丈夫、大丈夫……と繰り返しても、不安が拭えない。
―――これが魔王。
私では、手におえない、はやく殺して欲しい。早く、速く。
憎い、心配げに見つける彼の顔が憎い。キラキラ輝くその髪が憎い。全て、全て壊してしまいたい。
「―――アル?」
呑気な顔をして私を眺めるギルを、ベッドに押し倒す。
「ア、アアア、アルッ!?」
ギルの胸に顔を埋めて唸る。ああ、殺したい、殺したい、殺したい。この目の前の温もりを全て壊してしまいたい。だが、それではダメだ。
だって私は死にたいのだから。
そっと笑ってギルから離れる。顔を真っ赤に染め上げたギルに首を傾げる。なんで、赤くなっているのだろう?―――だが、今となってはどうでも良い。
……ギル視点……
最近本当に、アルは具合が悪そうだった。急に倒れるなんてザラだった。その度に血の気が引いた。好きな女の子が死にそうな顔を浮かべているのに、平気でいられるはずがない。
アルは大丈夫と繰り返す。だが、容体は段々と悪くなっていく。聖女であるマリアも、顔色を悪くして首を振るばかり。
―――ウソだろ?
本当に、死ぬのか?
いやだ。
まだ、好きだとも伝えていない。
そんな事、あって良いはずがない。
クラウドも、具合が悪くなっていくアルを見て、顔を青くしている。王城の図書館に篭って、何か原因や薬はないか探し回っているようだ。夜も付きっきりで見る時もあり、憔悴しきっている。正直、共に死んで行くのではないかと思うほど。
そんな時、『閃光烈火』が勇者パーティーに選ばれた。それは名誉な事であるが、命の危険が生じる。アルが元気だったときならまだしも、今は不安しか感じない。アルが『閃光烈火』の主戦力だったのだ。そのアルが死にそうになっている今、何故『閃光烈火』が選ばれたのか、訳が分からない。
神託に最低限必要である人間がいけなくなっている状態なのだ。これでは、魔王が討伐出来ないかもしれない。それも俺達の不安を煽った。
アルにその事を伝えると、アルはまたすぐに倒れてしまった。酷い汗をかいて、魘されている。まるで死の淵に立っているような絶望をその顔に浮かべている。
「主に触れるな」
俺が抱き起そうとしたが、ラインハルトが制止した。その真剣な声色に、思わず俺の手も止まる。アルを抱きかかえるラインハルトは、義務のように無感情だった。あれだけアルの事を慕っていた割には、冷静だった。
ラインハルトが通り過ぎる瞬間、アルが魘されながら小さく呟いたのを聞いた。
「殺してくれ」
切実に、心の底からそう願っていた。何故。何故アルはそんな事を言う?どんな悪夢を見れば、その言葉が出るんだ?アルは死にたがっている。その理由は?トリエステの大量殺人だとも考えたが、あれはどう見ても善行。優しいアルならば確かに苦痛に感じるのかもしれないが、そこまで思いつめるほどじゃない。
倒れたアルを看病しようと思ったが、ラインハルトやマリアが全力で止めて来た。クラウドは憔悴している為、強制的に眠らされていた。アルを失う事で、傷付く者が多い。死ぬだなんて、考えたくもない。
ベッドに横になるが、中々寝付けない。最近いつもこうだった。不安で不安でたまらない。いつアルの容体が急変するか分からなくて、怖い。
ようやく浅い眠りにつけた。だが、暖かい感触がしてすぐに目覚めた。懐かしくて、泣きたくなる程優しい手つき。目を開けると、案の定アルだった。何時の間に起きたのか、体調は大丈夫なのか、言いたい事が色々ある。
そっとその手を取って呼びかける。
「……アル?」
呼びかけた事でようやく俺が起きている事に気付いたらしい。本当に、最近のアルは可笑しい。どうみても起きているのに。
「討伐メンバーに入ったって言った後、すぐに倒れたんだ。覚えているか?というか、本当に体調は大丈夫なのか?」
「―――え」
何故かアルの顔色がザッと悪くなった。体が震えて、汗が流れている。泣きそうな顔で、首を振るアルは、どう見ても普通じゃない。
「どうしたんだ?アル?おい!」
ハッとしたアルは、俺の顔を見ると、ホッと息をついていた。本当に、訳が分からない。どうしたっていうんだ。アルの中で何が起こっているというんだ?助けたい。誰よりもアルが好きなのだから。
「―――アル?」
呼びかけると、ベッドに押し倒された。
「ア、アアア、アルッ!?」
あろうことか、俺の胸に顔を埋めてすり寄ってきた。アルの熱い吐息が胸に掛かって、思わず体が跳ねた。夜這い、夜這いなのか!?じょ、上等だっ!俺はアルの事が好きだ。だから、アルも俺が好きなら、何も問題はない。
そう思って、その華奢な体に手を回そうと思った瞬間に、その温もりが離れる。離れた後、俺を眺めるアルが首を傾げた。何をしてるんだ?とでも言ってきそうだ。
ちょっと冷静になった頭で考える。うん、夜這いとかないわ。最近アルの調子も悪いみたいだしな、うん。……別に落ち込んではない。
アルは、「何もない所から」剣を取り出し、俺に突き付けて来た。
……うん?今、どこから、出したんだ?いつもの道具箱である鞄も持っていない。倒れた時の服装だけで、その大きい剣をどこに隠し持っていたのだろう。背中、背中か?……いや、やっぱり何もない所から出て来たように見えた。
剣先とアルを交互に見比べる。これにどういう意図があるのだろう。
「ギル、私が刃を向けたら、どうする?」
その質問は、かつて船上でアルが倒れた時にした質問だった。あの時アルが倒れた時の衝撃は大きく、その質問も良く覚えている。
「……アルが道を間違えたなら、止める」
そのままあの時の言葉を返す。アルはとても嬉しそうに笑った。久し振りに見る全開の笑顔に思わず心臓が跳ねる。
「ふっ……じゃあ、必ず殺しに来い」
「え」
清々しい程綺麗な笑顔だったが、吐かれた言葉が信じられなかった。
「……楽しみに、待ってる」
そう言って、アルは「闇」に溶けた。
「は?」
間抜けな声が部屋に響き渡る。しばらく呆然と消えた場所を眺める。
アルがいた所に駆け寄って確かめるが、やはりアルがそこに存在する事はない。夢……か?そうか、夢……この暖かさも?胸に手を当ててみる。先程の感触はまざまざと思い出す事が出来る。これが夢なんてとてもではないが思えない。
思わず裸足のまま廊下に飛び出す。全力で走って、アルの部屋を訪れる。アルの部屋の前には、ラインハルトが立っていた。寝ていなかったのだろう、その服装は騎士服だった。疲れなど微塵も感じさせない程、凛々しく立っている。
「はぁ!はぁ!ら、ラインハルト、アルは……」
「ああ、主なら……行ってしまわれた」
「は?」
無感情に、無感動に、ただ淡々と言葉を吐くラインハルト。何故かアルに忠実。主、主と慕っている姿はまさに犬。
そんなラインハルトを通り過ぎてアルの部屋に踏み込む。そこには、武器の類が大量に敷き詰められていた。そこに愛しい人の姿はない。
「行くって……どこに?」
行ってしまったと言った。ならば、どこに?
ラインハルトは黙って、スッと指をさす。その方向は北。これから行く事になるであろう、北を指さした。
……主人公視点……
「主」
窓を眺めていたラインハルトはきっちりした騎士の恰好だった。私の気配にすぐに気付いて、頭を垂れる。サラサラと零れる青の髪が美しい。相変わらず綺麗な動きをするダークエルフだ。
「魔王討伐メンバーは、彼らで決まりか?」
「……恐らく」
「そっか……あれが夢なら、良かったんだけどなぁ……」
神というのはとことん意地悪らしい。彼らに私の討伐なんて……残酷な事を。
「後の事、任せた。もう私は出て行く」
「……は」
何故そんなに主と慕ってくれるのか、私には良く分からない。魔王なのにね。今にもラインハルトを殺したくて、ウズウズしてるような奴なのにね。ラインハルトの手は震えている。何かに耐えるように、顔を歪める。
「次はもっと良い主を探すと良い」
「主……」
どこか縋る様な声を出すラインハルト。ああ……もっと早く出て行けば良かった。
ギルを助けなければ良かった。
マリアを拾わなければ良かった。
リョウを連れ出さなければ良かった。
兄には妹だなんて言わなければ良かった。
無関係なレイは早々に里にでも帰しておけば良かった。
ラインハルトをもっときつく跳ね除けておけば良かった。
全てだ。私は全てに対して後悔している。上を見上げて嘆息する。
こんな時なのに、涙が出やしない。相変わらずイカレてる。もしかしたら、転生したのは、向こうの世界の神がこんな私を嫌ったせいかもしれない。
死ぬのは、二度目だ。怖い事なんてない。
――でも、他の人が死ぬことが何より怖い。
バサバサとラインハルトの部屋に食料や調味料を出していく。私が持っている全てだ。ここに入りきらないから、武器類は私の部屋に置いておこう。今まで貯めて来た、お金も全て、勇者に託す。
最後に、手紙をラインハルトに手渡す。
「こっちが勇者宛て、こっちが魔王対策だ。まぁ、ラインハルトの知ってる能力も載ってるよ。うん、後は任せた」
「……は」
ストンと魔王城に降り立つ。相変わらず禍々しい佇まいだ。スタスタと歩いていると、埃がたまっている事が分かる。ミトやヴァネッサ、メイド隊はいないのか……良かった。殺さなくて済む。
誰もいない、埃が積もったベッドに倒れ込む。倒れ込んだ瞬間にぶわっと埃が舞った。……あまり居心地が良いとは言えない。
そっと目を閉じ、微笑む。もうすぐだ、もうすぐ勇者が召喚される。他の世界の破壊を救う勇者。それはどんなに大変な事か……。ゴロンと仰向けになり、天井を見つめる。皆、大丈夫かな。泣いてないかな。泣いてるなら、殺してあげよう。私が楽にしてあげよう。……いやいや。ああ、殺してしまったんだっけ?……いやいや。
彼らを苦しませたい訳じゃない。
殺したくない。
死にたい。
殺して。
―――ああ、せめて。私の死後、彼らが笑って過ごせるような未来を、祈るしかない。
その日魔の森上空に、暗雲が立ち込めた。
「魔王アルリリアの報われない日々」ご愛読ありがとうございました!
タイトルの伏線を回収させて頂きました。報われない日々……です。
勇者視点へと移行します。
勇者に丸投げの主人公。全ての事を解決出来るだけの精神的余裕がもはやありません。
もし、まだ見捨てないでいて下さる優しい読者様がいらっしゃるなら、そちらも見て下さると嬉しいです。
それでは、長い間お読み頂いた忍耐強い読者様、有難う御座いました。
「勇者稼業は思いの他重い」完結しました!




