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鱗の恋――ある蛇の話  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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第一話「石の上で」


春の最初の日、石の上に出た。


長い冬だった。


石の下で、ずっと眠っていた。


眠りながら、何かを夢に見ていたかもしれない。


覚えていない。


ただ、長かった。



石の上に出ると、日が当たった。


体の芯まで、冷えていた。


その冷えが、少しずつ溶けていった。


日が、溶かしていった。



目を細めた。


草の匂いがした。


土の匂いがした。


春の匂いがした。



しばらく、そこにいた。


動かなかった。


動く必要がなかった。


日が当たっていれば、それで十分だった。



気配がした。



近くに、別の気配があった。


同じ石の、反対側だった。



ゆっくりと、頭を動かした。


見た。



いた。


別の蛇がいた。


石の反対側に、同じように出ていた。


同じように、日を浴びていた。



模様が違った。


自分より細かい模様だった。


体が、自分より少し細かった。



目が合った。


黒い目が、こちらを見ていた。



逃げなかった。


こちらも、逃げなかった。



ただ、見た。


その蛇も、見ていた。



風が来た。


草が揺れた。


石は動かなかった。



二匹で、日を浴びていた。


同じ石の上で。



(第一話 了)

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