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百折不撓のアルゴリズム-Period-  作者: 一ノ瀬隆
不撓不屈のヴァルファリア

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96話 『ネグレイア』

「なるほど......。話は大体わかった」


俺は深く息を吐き出し、円卓を囲む仲間たちの顔を真っ直ぐに見据えた。

1000年周期のループ、記憶媒体としてのディソナンス、そして帝王シンが陥った悲劇のすれ違い。五百年という途方もない時間を超えて突きつけられた、あまりにも残酷な世界の真理。

普通なら絶望して発狂してもおかしくない事実だが、俺の心は不思議なほどに静まり返っていた。


色々と考えを巡らせる必要はあったが、結局のところ、俺たちのやる事は極めてシンプルに決まったのだ。


この狂った連鎖の円環を管理している上位存在──────神である『ネグレイア』へと直接挑戦し、俺たち「人」の存在と、その自由な意志を認めさせること。

そして、その神の理を打ち破り、11回目の世界でループを終わらせる『唯一の鍵』であり、最大の切り札になるのが。


他でもない、この俺なんだ──────。


「......」


俺は、静かに右腕を見下ろした。

かつての仲間たちが遺してくれた白銀のガントレット、フェルファクナ・エデニアム。そして、左手に握る漆黒の魔剣ヴァルセリア。これらはすべて、この理不尽な運命を切り裂くために俺の手元に集まったのだ。


連鎖(ウロボロス)システムなんてふざけたもの......俺たちが、跡形もなく壊してやる」


誰かに与えられた脚本通りの滅びなど、もう二度とごめんだ。

シンの絶望も、過去の十回分の悲劇も。すべてをこの手で断ち切ってやる。


俺の静かな、しかし確かな神への宣戦布告。

その言葉を聞いて、ユキは優しく微笑み、弦弥は好戦的に口角を上げ、ローズは頼もしそうにゲヴェニアの柄を叩いた。新生エデニアムの仲間たちは皆、俺の覚悟に応えるように、無言で、力強く頷いたのだった。


『......神への挑戦は、今すぐでもできる。この私がシステムに反旗を翻した途端、強制的にそれは始まる仕組みになっている』


円卓の中心で、ロッドは淡々と、しかし重苦しい事実を告げた。


『しかし、だ。宣戦布告と同時に、我々”五選剣”の五人だけが神の元へと強制転送されてしまう。そして主力を失った下界には、システムからのカウンターとして『神の試練』なる規格外のバケモノが降臨することになる』


「神の、試練......」


俺は眉間を揉み込んだ。

神のいる上位次元と、下界での同時戦闘。俺たち五人が神の元へ飛ばされている間、この世界は完全に無防備になるということだ。


「ええっ!? じゃあアタシたちが神様と戦ってる間に、残された人たちはどうなっちゃうのよ!」


ローズが焦ったように声を上げる。ロッドは重く頷いた。


『今の残された戦力では、その試練のバケモノによって、瞬く間にこの世界は蹂躙され、滅びてしまうだろう。......だが、その理不尽な試練をただ黙って受け入れるわけにはいかない。そうだろ?』


ロッドの瞳に、神への反逆者としての狂気と、底知れぬ決意が宿る。


『だから私は、神の理を外れた”禁忌”を犯す。......レイは魔本『グリモ=メモリア』を、ローズは銃剣『ゲヴェニア』を私の元に出してくれ』


「グリモ=メモリアを? 構わないが......一体何をするつもりだ」


俺は言われるがまま、虚空から俺の魔法の触媒である古びた魔本を呼び出し、ローズもまた、背中から白銀の銃剣を外して円卓の上へと置いた。


ロッドはその二つの神代の遺物に手をかざし、そして。

五百年前、血を吐くような思いで決着をつけた俺の耳を疑うような、信じられない言葉を放ったのだ。


『──────これから、お前が討ち果たした『帝王シン』と、その配下たる『円卓』の全員を、この時代に復活させる』


「............なっ!?」


俺は思わず円卓に手をつき、ガタッと立ち上がってしまった。

ユキも目を見開き、弦弥も絶句している。


五百年前、世界を恐怖で支配した独裁者、帝王シン。

彼を止めるため、俺たちはどれほどの血を流し、どれほどの犠牲を払ったか。あの壮絶な死闘の果てに、俺はこの手で彼を討ち果たしたのだ。


「ロッドさん、本気で言っているのか......!? シンは、俺が──────」


「ああ、分かっている。だが、神の試練からこの下界を死守できる規格外の戦力など、もはや彼らをおいて他にはいない」


ロッドは俺の動揺を真っ向から受け止め、揺るぎない声で言い切った。


『システムが見せた『幻視』によって狂わされ、悲劇の独裁者となった男。......なら、本当の真実を知った彼らが、今度こそ世界を守るための『最強の盾』となって戦う。それこそが、この狂ったループに対する最高の意趣返しだとは思わないか?』


「............っ」


俺は言葉に詰まった。

かつての宿敵であり、最大の悲劇の犠牲者。彼らがもし、真実を知り、本来の気高き魂を取り戻した状態でこの時代に蘇るとしたら。


「......分かった。お前の言う通りだ」


俺は震える拳を強く握り締め、深く頷いた。

グリモ=メモリアとゲヴェニアの光が、ロッドの魔力と共鳴し、円卓の上に強大な蘇生の魔法陣を描き出し始めていた。

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