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ピアシリュージョン・ブレイド  作者: 白金 二連
第三幕 神は天に居まし、人の世は神も無し
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49.シーン3-15(コクヤ)

 出会い頭の挨拶がてらに少し話し込んでしまったものの、このまま立ち話を続けているわけにもいかない。それから私たちはフルーラさんの家宅へと向かい、当初より教会の詰め所へ泊まる手筈だった私とキュリアさん以外は中に入ることになった。しかし、到着したあとさあお邪魔しようというところになって、カインが黙り込んだまま一行の後方から動こうとせず、フルーラさんの手前で少し困ったキュリアさんが機転を利かせ、自分が泊めてもらうことにすると私に向けて小さく告げた。


 余程この家に泊りたくないということなのか、小声で私が向かってくださいとマントの裾を引っ張ってみたところ、見事に彼は無言で私の手を振り払った。

 本当にこれで三十路近い、いい歳の大人なのかと疑いたくもなってしまうところである。このままもたついてこの男が渋っているとフルーラさんに感付かれてしまっては、せっかく善意で赤の他人を泊めてくれているファレンシア家に申し訳が立たないと、私にさっと目配せされたキュリアさんの焦った視線が告げていた。


 兵装の私よりも、教会要職の彼女のほうが適任だろう。私は静かに頷いて、カインを詰め所で管理しますと目で答えた。そして、ミリエ、オルカ、キュリアさんがフルーラさんの邸宅へと入っていく様子を見送ってから、私もあらかじめ聞いていた教会の詰め所へと足を進めた。


 船の中で、マナの解放は明日行うとの日程を聞いている。まず今日は、宿泊先へ腰を落ち着けること、そして解放組は明日に備えて万全を期すこと、私は教会や聖都絡みの荷物の配達と船から一部持ってきた書物の写し作業が予定されている。教会の詰め所で再開したゴリオさんに急遽こちらへ来ることになったカインを預け、私は詰め所で聞いた品々をコクヤの街からかき集めて港へと運ぶために表へ出た。


 人で賑わい所狭しと様々な店が並ぶ商店通りから、技術職が腰を据える一角までを順番に回っていく。ある程度荷を集め終えたところで、私は背後からずっと付いてきている不穏な気配を振り返った。


「何してるんですか」


 無言で付いて来られると少し気味が悪いので、出来ることなら声をかけるなり何なりしてもらいたい。


 ギャラクシー・パラリラは私の問いには答えることなく、私が抱えた大きな布の塊を掴み取ると、そのまま黙って突っ立っている。いいよ何だよ私が持つから帰りなよという目で見上げながらその旨を伝えようと口を開きかけたのだが、有無を言わせぬ鋭い視線で見下ろされ、私はあえなく口をつぐんだ。目付き、目付きが悪くて非常に怖い。あれだけ散々やりたい放題できていたのは周りに人がいたからなのだと思い知り、自分の小物具合を嘆く。


「明日があるから休んだほうがいいんじゃないですか」


 彼はやはり無言だった。眉ひとつピクリとも動かさず、私を黙って見下ろしている。何だ。言いたいことがあるなら言ってみろ。ここまでやってきた以上、私の勝ちは変わらないんだからせいぜい覚悟するがいい。


 どうやら彼は私同様に荷運びをするつもりでいるらしいが、馬車と船と少しの徒歩であろうとも長時間の移動というのは疲れるものだ。その手段は問わないが、思い思いの方法で羽を伸ばして気や身体を休めておくに越したことはないだろう。そのほうが私は良いと思うのだが、それでも無言でついて来られる以上、無理やりに押し返してまで断るほどの理由もなし、私にはどうにもしてやれない。詰め所で聞いた量が量であっただけに、助かるのも事実である。


 せっかく居心地の悪かった彼の魔力圏から離れる機会だったのにと、こっそりと心の中で肩を落として、私は再び荷運び作業を続けるために歩き出した。彼は今日いっぱい荷運びに付き合うつもりなのだろうか、三十路近くが体を酷使し、万が一腰を痛めたり筋肉痛で動けなくなったりでもしたら、どうしてくれるつもりだろうか。


 一巡目に集める手筈だった粗方の品々を無事回収し、港へ向けて歩いていると、道の途中でフルーラさんとミリエとオルカに出くわした。主に商店や宿などが賑やかに軒を連ねているメインストリートの片隅で、もう一人見慣れぬ人物と会話しているところだったようだ。


 ミリエは無言で私へ向けて「アンタなんでその人こき使ってんのよやめなさいよ」といった感じの視線を送る。私はなるべく「知らないよ勝手に付いてくるんだよ」といった感じの表情を意識しながら首を小さく左右に振った。


 なんでも、気分転換に少しコクヤを観光しようと出ていたらしく、その途中でフルーラさんの知り合いと遭遇したところだったのだとか。キュリアさんは諸々の仕事の為に、私たちが抜けたあとの詰め所へと向かったらしい。


 フルーラさんの横に立つ人物は、どうやら少年のようだった。歳のほどは彼女と同じくらいであろう。キリリと清々しい目鼻立ちを飾るがごとく、とにかく白くて繊細な色調で全身がまとめられている。髪は真っ白、目も灰色、真昼時には炎天下にもなろうかという日差しの下で果たして大丈夫なのだろうか、肌も透けるほどに白い。彼女と横に並んでみると、黒と白で対照的だ。だというのに、なぜか非常に二人は似ているのではないかという気がしてくるのだ。


 相違と類似の中に混じる得体の知れない不気味な何かの所在を果たして掘り当てて良いのかどうか、迷いながらしばらく黙って見ていたところで、私のそばへ寄ってきたミリエが私を肘でちょいちょいとつっついて、ねえちょっとと耳打ちしてきた。


「二人の魔力、雰囲気がすごく似てる気がするのよ。共振者だったりして」


 耳打しているはずのわりにはずいぶんと弾んだ声でミリエが話す。


「二人が話してるとこ見てたらなんだかんだで仲良さそうだし。やだもう、運命の人っ?」


 頑張って声量を抑えているのであろうが、しかしキャッキャウフフと耳にかかる息づかいが有り余って凄まじい。とっても盛り上がってしまったミリエの声が聞こえたらしく、フルーラさんと少年は赤い顔で気まずそうにお互いから目を反らした。

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