第六章「ほの暗い緑の匂い」1
「それでこれからどうするんだ?」
「三手に別れて行動をする」
リアとの通話が終わり、質問をしてきたゼノにまずは簡単に答える。
そして詳細を待つ3人に1人ずつ役割を話すことにした。
「まずはゼノ。お前には城に残ってもらう。役割はディルの監視がメイン。いざという時には竜の迎撃を頼みたい」
「まあ、この中で城に入れるのは俺かござるの2人だからな」
ゼノはこれをすんなり受け入れた。
少し食い下がって来る可能性も考えていたが、それは杞憂だったようだ。
「次にリリィはリアと合流して、竜退治の役割を担ってもらう。おそらく1番大変な役回りになると思うが、くれぐれも無茶はせず、無理だと思ったら逃げてくれてもいい。絶対命題は死なないこと。多少防衛ラインを下げたところで、ディル達が動かないといけなくなるだけだからそうリアにも伝えてくれ」
「分かりました」
「最後に正成は俺に附いてきてもらう。城に残しても行動が制限されるし、竜の迎撃なんてできるはずもないからな」
「言い方が酷いでござる……しかし御意のままに行動するでござる」
口ではこんなことを言っているが、正成の能力には大いに期待をしている。
おそらく俺がするべきことを1番うまくアシストできるのは正成に他ならないからな。
「それでマスターはどうするのですか?」
「竜退治の専門家を探しに行く。前にアマゾネスに言ったときそういう話を小耳に挟んだからな。デマかもしれないが確かめる他にないだろう」
デマかもしれないも何も、たった今俺の考えたデマであることは言うまでもない。
しかし、リリィはその言葉を疑うことなく受け入れた。
「分かりました。それではヴァレリアさんと合流する前に、マスターたちを送り届けた方がいいですね」
「ああ、頼む。帰るときにはまた連絡するから」
「はい!」
そうして今後の方針が決まった。
正成には別行動になってから話すとして、後はこちらを睨むように見ているゼノをどうごまかすかだな。
「これで決まりなら俺は早速城へ戻る。いつでも動けるように準備は整えておくから何かあったら連絡を入れてくれ」
しかし、ゼノは何も言わずに城へと戻っていった。
察してくれたのか。
それとも元々の目付きの悪さを睨まれていると勘違いしてしまったのか。
そこ辺りはよく分からないが、ムダなリスクを増やさないで済むのなら助かるから気にしないことにしよう。
「それじゃリリィ。俺たちも行動開始だ」
「はい──」
そしてリリィがワーティを唱えて俺たちはアマゾネスの城門前にやって来た。
「それではマスターたちも頑張ってくださいね」
リリィは天使のような微笑みで俺たちにそう言い残すと、今度は完全版の詠唱をしてリアの元へと向かった。
「今回は女装をしなくてもいいのでござるか?」
「多分な。フランの名前を出せばどうにかなるだろう」
どうにもならなかった時はめちゃくちゃ困るだけの話である。
その時は腹いせも込めてライドラに城門突破をお願いしよう。
魔王城の上に住む奴ならば何だかんだ捕まることもなく生き延びてるだろうからな。
そして俺たちは城門へと歩いていった。
「おい! 貴様ら止まれ! ここは男子禁制の街だ! お引き取り願おう」
「フラン様の遣いの者だ。結界の件で話があると上に伝えてくれ」
フランを様付けで呼ぶのは少し癪だが、まあ、そこは我慢することにした。
そのおかげで以前のように門前払いから、上への確認までは持っていけたわけだからな。
「フラン様の遣いだと名乗る男2人が来ているのですが、いかがいたしましょうか?」
『その男というのはどのような風貌をしていますの?』
「1人は黒いローブに剣を3本挿しています。もう1人は口元に布を巻いた小柄の男です」
『それなら通して良いですわ。護衛をつけて私の元へと連れてきてくださいな』
「はっ! 了解致しました」
うん。
どうやらこの選択は間違いではなかったようだ。
護衛をつけると言っているのは、おそらく先日の帰りのことがあったからだろう。
「それではこちらへどうぞ」
そして俺たちは女装をすることなくアマゾネスの中へ入る。
城門を抜けるなり女どもから注目を浴びているが、まあ、この状況だから気にしないことにしよう。
そして歩くこと20分。
俺たちはアマゾネスの王宮へと到着した。
「女王様、連れて参りました」
「入りなさいな」
そして門の見張り番を残して、俺と正成は部屋の中に入る。
そこにはムダに丁寧っぽい話し方をする王女様がいた。
「フラン様はお元気ですの?」
「ああ、今は大変そうだけどな」
少なくともここで拘束されているなんて事実は言えない。
そんなこと言ったらただでさえ特徴的な女王の顔が余計特徴的になりかねないからな。
「それであなたがたが来たんですのね。それで用件は何ですの?」
「りゅ──」
「エルフ族の協力を得るために彼らの住むエリアへ入りたい」
俺の言葉を真に受けて『竜退治の専門家を』と言いかけた正成の声を遮って本題を切り出す。
「分かりましたの。出発はいつを予定していますの?」
「今、これからすぐ」
「それは急過ぎますの……さすがに2日は時間を欲しいですの」
2日って。
そんなに待ってたらリリィとリアの命がいくつあっても足りねぇよ……
仕方ないから無理を通すしかないな。
「今すぐだ」
「話を聞いていましたの!?」
「ああ、だから今すぐやれ」
「この人会話する気もありませんの……」
「会話する気なんてない。てか2日も待っているような時間もない。お前らが代わりに竜の餌になってくれるなら話は別だけどな」
そういうと王女の表情が固まった。
そして魔法のようなものでどこかと連絡を取り始める。
そしてほどなくして話がまとまったようである。
「せめて1時間は待ってほしいですの。結界を一時的に開けるためには時間がかかりますの」
さっきは2日とか言っていたのに1時間でできるんじゃねぇか……
これはもう一声かけたら絶対短くなるやつだな。
「その間に食糧を買いに行く。店と結界の出口の地図を寄越せ」
「分かりましたの……」
王女は『これだから野蛮な男は嫌いですの』と愚痴を漏らしながら地図を認めてくれた。
そして俺たちは適当な女の衛兵を護衛につけられアマゾネスの街中へ戻っていくのであった。
うん。
衛兵つけるなら地図いらなかったな……




