呼び笛の音は、遠くへと
皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます!
先日の催し物で公開していた分が前回で終わり、ここからは誰も知らない『こひつじちゃんとおおかみくん』の始まりとなっております(何か略称みたいの考えたいですね)
ではでは、本編スタートです!
『どっか行けよ、この依存体質女!』
俺が遥を追い払ってから、しばらく経った頃。まだ遥が人間であったかも知れない頃。
当時の町の話題は、遥がどこに行ったのかということばかりだった。もちろん何も犯罪がないなんてことはないが、ニュースで見る都会と比べればそれなりに平和だった町で、遥の失踪はあまりにも衝撃的だったのだろう。
加えて、遥は日頃から誰にでも明るく元気に接して、まあよく言えば純粋な性格だったこともあって、道行く誰もが遥の身を案じているような状態だった。
『どこ行っちゃったのかね、ひとりでどこかいなくなるような子じゃないはずだけど』
『いつも誰かと一緒にいるような子だから、なんで……』
『たまたまひとりになった時を狙われたのか』
『まさか誘拐だって言いたいの!?』
『ひとりになることなんてあったのか』
『いなくなった日、何かあったんじゃないの?』
行く先々でそんな話ばかり聞いた。
いつ俺の名前が出るのか、怯えずにいられなかった。
俺が遥に向けた言葉が誰の口から漏れるとも知れないなかで、少しずつ俺の心は磨り減り始めていた。
当然だが、両親からも遥の話題が出てくることもあった。もちろん、俺を責めるようなことを言われたわけではない──むしろ、俺が気にしすぎないようにと気を遣ってくれていた節さえある。だが、やっぱり生活している以上、遥の話題になることは避けられない。どんなに言葉を濁してくれていても、俺に心当たりがあるというのもあってか、その態度によって言外に責められているように思えてならなかった。
どこにいても、息が詰まった。
逃げ場所なんてなくて、みんなが俺を責め立てているように感じた。
中でも辛かったのは、遥の両親と鉢合わせたりしたとき。当時はまだ、母親の方は優しく『心配させてごめんね』なんていうくらいだった。父親の方も、取り立てて俺を責めるような物言いはしなかった。それでも、日を追うごとに憔悴して、たまに何も言わずに俺を見つめるだけのときもあったのが、苦しかった。
言いたいことを、必死に飲み込んでいるがゆえの沈黙だと思った。何を言われたって仕方ないなんて悟ったようなことを思っていたって、いざそういう場面に出会しそうになるのが恐ろしくて、だんだん俺は人と話すのが怖くてたまらなくなっていた。
そんな俺を救ってくれていたのが、奏田だった。
遥がいなくなってすぐ、俺のところに来た奏田は、あろうことか『悠真、何か知ってるんじゃないの?』と直接尋ねてきたのだ。奏田は学校での様子も知っている……それも込みで、遥に何か言わなかったかと尋ねてきたのだ。
そこまで言われたとき、俺はようやく、自己嫌悪せずにいられないようなあの言葉について打ち明けることができた。
『うわ、ひど……』
心底呆れたような、引いたような顔でそう言われたのを覚えている。
『だよな……俺、なんてこと言ったんだろ』
『ほんとだよ。悠真が言ったのは相当ひどいことなんだから、絶対謝んなきゃダメ』
『あぁ……』
『そんな顔しないの。悠真よりも遥の方が傷ついてるんだからね? もし言いづらくても逃げるとかナシだよ。そうなったら私が引っ張ってでも連れてくから』
『なんだよ、厳しいなぁ』
『当たり前でしょ、遥は大事な友達なんだから!』
そういやそうだ、部活とかで一緒に過ごす時間が減っていただけで、一緒のときはまるで遥の姉か何かみたいに世話を焼いているというか、過保護というか……。奏田は、そんなやつだった。
『だからさ』
『……?』
『だから、私も一緒に待ってていいかな? 遥がいつか戻ってきたら、そのときは一緒におかえりって言おう』
そう呟いた奏田の顔は、本当に心細そうで。
崩れそうな自分を、遥が絶対に帰ってくると信じることで保っているようにも見えて。
『悠真は謝んなきゃいけないこともあるもんね!』
そのくせ、たぶん俺を気遣って軽口を叩いてくれるようなところに、俺は救われていたと思う。そんな奏田と一緒なら、俺は遥を待っていられる──遥にあの日の暴言を謝って、それで言えていなかったことも伝えられると思っていた。
遥が、羊になって帰ってくるまでは。
* * * * * * *
『ほんと? 本当に、何もないんだよね?』
「大丈夫だって、心配しすぎだよ。俺も、高校でうまくやってっからさ。そっちは?」
『私もボチボチかなぁ。高校違っちゃったのは残念だけど、まぁ、こうやって時間も作れるしね』
「そういうこと!」
必死にいつも通りの声を絞り出す自分が、空々しくて気持ち悪い。俺、ついさっき遥に何を思った? 何を想像した? 何をしようとした? 頭のなかで、あの蒸し暑い部屋の記憶がぐるぐる回っていく。
スマホの向こうでは、奏田が楽しそうに学校での出来事を話している。体験入部したスポーツ系の部活全般でけっこうな活躍をしてみせてらしい。昔から身体動かすの得意だったもんな、奏田は。
奏田の声が、俺を少しずつ現実に──あの家の外に連れ出してくれるような気がする。その感覚に安心しながらも、やはり後ろめたさが拭えなくて。
楽しそうな電話越しの声が、やたら遠くに感じた。
『……それでさ、今度の日曜日行ってみない?』
「え、あ、あぁ……!」
やべ、なに喋ってたんだ、今!?
『ほんと!? じゃあ、10時に駅集合ね!』
やけに嬉しそうに通話を切る奏田。俺はそれにただ唖然とするばかりで。
ちゃんと訊き返しておけばよかった──そう思ったときにはもう手遅れだったのだが、このときの俺にはそんなこと、知る由もなかった。
前書きに引き続き、遊月です。今回もお付き合いいただきありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪
私が好きなアニメに、女女・男男の関係性が恋愛アニメ並みに濃いホビーアニメ(元々はダークファンタジー世界観のストーリーが展開されるカードゲームです)があるのですが、いやあ……最新話(この後書きを書く前に放送された回)ではやってくれましたね。
元々ね、このアニメは数年前に放送された初期版からして『普通すぎる自分が嫌で、たまたま知ったアイドルの少女に自分の理想を重ねて推すようになった』少女Mと、『国民的アイドルとしての自分が本当の自分と乖離していくのが苦しくて、普通の女の子に憧れている』少女Aの出会いと衝突、そして絆を深めていく様子がねっとりとした手付きで描かれていて、これは百合アニメなのではないかとずっと言われていたんですね。続編にあたる今作でもやたら生々しい雰囲気の喧嘩をしていたり、お互いのプロフィールの「好きなもの」欄が『大切な誰かさん』『大切なあの人』になっていたり、なんなら前作から変わらず国民的アイドルであるはずのAちゃんがテレビで「大切な人がいる」と打ち明けたりしていて、もはやこのふたりは世界平和の暁には結婚しそうだなという勢いなのですが(某機動戦士でもヒロインふたりが結婚しましたからね、めでたやめでたや)、今回話題にしたいのはそんな前作キャラではなくて今作の主人公勢ですね。
『特撮ヒーローに憧れているものの周りがどんどんヒーロー離れしていくのに不安を覚えつつ、それでも自分の好きなものは好きだと信じていいのだと前を向いて進むことのできるようになった無邪気系?後輩』Rちゃんと、『好きだった先輩が目の前でめちゃくちゃにされているのをただ見ていることしかできず、あまつさえその相手に屈服する形でカードゲーム部としての活動をやめてしまったことで影を帯びたものの、Rちゃんのまっすぐな眼差しや言葉などで救われて、今は彼女たちの先輩としてカッコいい姿を見せようとしている女子たちのカリスマ的存在』T先輩。RちゃんとT先輩の関係は、先ほど述べたやたら生々しく進展したAちゃんMちゃんの関係と比べるとやや『光』寄りで、同作の先輩カップルや、昨年(2023年)を代表する名作でもある『ドロドロ、ぐちゃぐちゃ。それでも。』なガールズバンドアニメでぬちゃぬちゃした百合に慣れ親しんでいた私などは「うお、眩しっ!」と声を発したものでしたが、ここで前回ですね。
いろいろなことが起きて、いろいろな展開になっているのですが、簡単にいうとこのふたりは助けたかった人を助けられずに目の前で地割れに飛び込まれてしまいます。自分たちを「ヒーロー」「光」と呼びながらもその手が遠く、あまりに遅すぎたと呪いながら地の底へと消えたふたり。その光景を見て呆然としつつ、それでも世界を救うために立ち上がって歩かなくてはならないRちゃんとT先輩を見て、私思っちゃったんですね……。あぁ、救いたかった人を救えなかった者同士という、あまりに強固な絆が生まれちゃったね、と……!!
いやぁ、2024年の二次創作界隈、レンヒナ・ツバアンド喪失前提のレンツバが流行るんじゃないでしょうかね。喪失の痛みを埋めるためにズブズブの依存関係に堕ちていく先輩後輩とか、もう需要しかないというか、オタク心をくすぐるというか……! もう痛みを忘れるためだけに爛れたセッ
閑話休題。
奈緒ちゃんとの馴れ初めというか、どういう子なのかみたいなお話になったような気がします。高校違うんですね……と書いておきながら驚いていますが、今後はそういうのを軸に話の作りを考えていこうと思います。
さて、どうなっていくのやら……?
また次回お会いしましょう!
ではではっ!!




