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この世界の歴史2

 天使族はこの世界に適合するため魔族になったことは理解した。しかしどうやって魔族になるのかという疑問が残る。魔王は私に頷くと、少し言い澱んだ様子を見せつつも、結局説明することにしたようだ。魔王は決心したように重い口を開いた。


「簡単だ、私利私欲を尽くせば良い。罪悪感で簡単に闇に飲まれる。当時の天使族の使っていた魔法は聖属性だった。それは潔き心と愛する心によって力を増幅させると同時に宿る。

 天使族は各々、人間を助けるのをやめ、利己的な行動をするようになり、やがて闇に飲まれ、白かった翼は黒に染まり、聖属性の力を失い、魔力を操る魔族となった。

 そうして人間に馴染む内に聖なる力も魔力へと変わっていった」


 ルシファーは太ももに置かれた私の手の上に自分の手を重ねた。少し安心した私がルシファーを安心させようとへにゃりと笑顔を作る。いつもなら微笑みかけるはずのルシファーは悲しげな顔を浮かべて私を見つめ返した。


 魔王の話はそれからも続いた。


 全ての天使族は魔に身を落としたものの、いつか世界が平穏になり、天使族がもたらした幸運が忘れ去られた時、魔族をまた天使族に戻せる存在を残しておく必要があった。そこで女王だけが聖属性を継承し、天使族として残ることになった。


 一方、魔族に身を落としたことで天使族には思わぬ弊害があった。本来の心とは正反対の事を繰り返し行った事で、体が闇属性の魔力に拒絶反応を起こすようになったのだ。生き残るために魔族になったのに自傷癖や殺戮衝動を天使族は繰り返すようになった。


 自身を滅ぼそうとするのでは本末転倒だ。そこで生まれたのが魔王だ。魔王は闇属性の魔力を全魔族から常に吸収する力を持って生まれた。天使族の女王とは別の新たな王が生まれた事で、魔族の魔力を抑え込むことに成功したものの、それでは魔王ばかりに負担がかかり、すぐに魔王が闇に飲まれて自我を失ってしまう。


 天使族の女王は魔王を支える役目が新たに加わった。女王は魔王が闇に飲まれないよう、存在だけで抑制できる。また、魔王が錯乱した際には聖なる力をもって、闇属性の魔力を魔王の体から浄化し癒すことが出来た。こうしていつか魔王が魔族を抑え、天使族の女王が魔王を抑えることとなった。


 しかし事態は急変する。天使族の女王が人間についに捕まり、乱暴に扱われた挙句、死を遂げたのだ。女王が死んだ瞬間、魔王は闇属性の魔力を抑えることが出来なくなり錯乱。同時に魔族の闇属性の魔力を吸収する者が錯乱したことで全魔族が暴走し始めたのだ。


「これが、魔族が人間の王国を侵略するに至った過去だ」

「錯乱したからと言って、なぜ侵略する必要があったのですか?」


 私はずっと疑問だった。私の持っていたベータ版ではヒロインのリリスが魔王になったルシファーの討伐に一度は成功する。討伐されたのはバグだったのか、それともリリスの光属性だけでは消滅に至らなかったのかは分からない。しかし討伐されたはずの魔王になったルシファーが王国を侵略するシナリオがあったのは事実だ。


「魔王と魔族は錯乱しながらも、天使族の女王を求めたからだ。亡骸となった天使族の女王を、それでも無意識の内に求めたのだ」


 私の中でパズルがカチリと嵌め込まれる音がした。


 ルシファーは魔王になった後、二年間これ以上は保たないという限界まで闇属性の魔力に抗い続け、自我を失いかけながらも女王を探し求めてとうとう王国にやって来たのだ。存在だけで女王は魔王の魔力を抑制できるが、過剰な闇属性の魔力を浄化する必要もある。このことから推測するに、ルシファーは恐らく女王の聖属性を教会に感じ取り、向かったのだ。


 しかし女王はそこにいなかったか、又はそこで限界を迎えて殺戮衝動に飲まれた。正規版にはこの描写はなかったとネットでは指摘を受けていた上、私がプレイしていたベータ版では、これがバグとして扱われていたが、真相に一番近かったのではないだろうか。


 幸いにも天使族の女王の能力と存在はこの世界を構成する一部であるため、輪廻するのだと魔王は言った。私はハラハラしながら魔王に問いかけた。


「女王は亡くなったものの、次世代が生まれればまた平穏が訪れますよね?」

「ああ、しかし輪廻するまでには時間が空く。女王が転生するまでの間、世界は闇に飲まれた。魔族は長い間、殺戮と陵辱を繰り返し、ある日また天使族の女王が生まれた事で、平穏が訪れたのだ」


 私が魔王の話を聞いてほっと胸を撫で下ろしていると、今までずっと黙り込んでいたルシファーが口を挟んだ。


「いつのまにか天使族の女王は魔族や人間と混じり合い、その身体的特徴を失い、一般人に紛れるようになった。しかし顕著な先祖返りを見せるものが王族の血筋に現れたことで、あなたよりずっと前の魔王が女王を保護することに成功し、また天使族の女王を魔族の手で守ることができるようになった……」


 魔王はルシファーに驚いた目を返すと、コクリと頷いた。


「そうだ。もう知っていたのか。秘匿されてはいるが、当時女王は王族に捕まったのだと私は推測している。王族が最も魔力が強いのも、女王が昔王族の子を産み落としたからではないかと考えられる」


 女王の血を引く王族だからこそ、ルシファーは強い魔力を持っているのか、と合点がいった。魔王が言っていた反転とはこの事だったのだ。


 魔王城に着いた時に魔王が言った言葉を思い出す。

『先祖の血が色濃く出たは良いが、聖属性は女にしか現れぬから、反転でもしたか?』

 男児であるルシファーが女王の力を持つことはない。光属性を浴びせられ続けた魔族から生まれたリリスは状況に適応するため反転して光属性を有することになった。天使族も魔族になった時に闇属性に変化した。だから聖属性から反転したルシファーは闇属性を持つことになったのかと私は理解した。


 私が納得したような顔をしていると魔王は意味深な笑みを浮かべ、言葉を続けた。


「聖属性を有している間の女王は人間や魔族による信仰の力で守られているので病気一つしないが、女王が母になると女の子どもへ身体的特徴と能力が受け継がれる。そして受け継がれた瞬間に母体はその力を失う。その際死ぬことはないが、加護を失うので普通の人間並みに病気にかかることは出てくる」


 それを聞いて私はハッと息を飲んだ。


「アンジェラもそれで流行病にかかり病死してしまった。ここまで言えば分かるだろう。クレアも自分の正体が気になっていたんじゃないか?」

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