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第86話 戦準備の問題

こちらは本日1話目です。

次話は18時の更新の予定となっております。

執筆の関係で多少遅れて投稿になるかもしれませんので予めご了承下さい。

対ゴブリン戦力ということでオリ爺のことも紹介することにした。


以前までは不可能であったが、《念話》のスキルを得たことにより、スムーズな意思疎通が可能になったからだ。


やはりというか、魔物が拠点内にいたということで少なからずショックを与えてしまった。

しかも、リメのような可愛らしい大きさではなく、周囲の木々と変わらないほどの大きさだ。

与える印象は大きく変わってくる。


そんな中でも真っ先に受け入れたのはファナとバンダーであった。

それぞれ《鑑定》の、さらに上位のスキルを持っていることもあり、拠点に来た初日に既に気付いていたそうだ。

所持スキルを看破した結果、念話系スキルを持っていなかったため、直接接触することは控えていた、とのこと。


ファナ達が接触したことで、その後恐る恐るだが、他の者達もコミュニケーションを図り始めてくれた。


ある程度経った所で俺は、紹介した意図を話した。


「オリバー殿による監視計画、と?」


「そうだ、昨日より下準備を始めている。」


今後、対ゴブリンに備え拠点周辺の哨戒というものが必須になる。

これは通常であれば、騎士の仕事になるらしい。


だが、オリ爺の進化により、《宿木》という擬似的監視カメラが設置できるようになった。

これで態々騎士達が哨戒に出る必要はなくなったのだ。


しかし、オリ爺だけだと、あくまでも監視という域を出ないのだ。

発見後の迅速な対応というものが叶わないのだ。


一応昨日の下準備の際、対応の可否を実験してみた。


《宿木》の対象となったものから魔法を行使してもらったものの、本体でないため魔力量が足りない。

基本的に初級魔法が2、3発、《宿木》として使えなくなるオーバーヒート覚悟で魔法を使っても10発に満たないのが限界であった。

正直、雀の涙程度の迎撃しかできなかったのだ。


そのため、オリ爺は異変を察知した場合、即座に拠点へと報告することが好ましいという結論に至った。

報告を受ける以上、意思疎通が図れることは必須である。


是非皆、抵抗なく会話できるレベルになって欲しいものだな。




「そろそろ本題に戻るとしよう。何か防衛策を思いついた人はいるか?」


オリ爺の紹介で中断した第2回対ゴブリン対策会議を再開する。


いつ来るか分からないゴブリンの軍勢だ。

対策が早くできるに越したことはない。

しかし、正直言って難航している。


オリ爺の紹介も空気をリセットするために行ったのだ。


「あの、やはりジョー様が作った例の防衛システムを拡大するのがよろしいかと思います。」


これといった実績は未だないもののその効果は既に皆の知るところだ。

姫様の言わんとしてることも分かる。


しかし、俺は即座に却下する。

いや、正確には却下せざるを得なかった。


「可能なら俺もしたいのだが、材料がない以上不可能なんだ。仮にミスリル以外の糸でとなると、俺の能力の範囲外になるため、構築に時間がかかり過ぎてしまう。」


ここ最近ミスリルウィップスパイダーに遭遇していないから、ミスリル糸の在庫が100m程度とごく僅かなんだよ。

あと、《魔糸操作》でミスリル糸作れなくはないけど、現界時間も何日も持つほど長くないから工作物には使えない。


ミスリル糸による防衛システムは諦めるしかないのだ。


ミスリル糸以外だと、材料的な面で言えば十分にある。

ただ《魔糸操作》で操ることができなくなるため、手作業で作らないといけなくなる。

それも何100mといった長さをだ。

長時間、厳戒態勢の樹海の中に拘束されてしまう。

そんなの自殺行為に等しい。


結果として、俺謹製の防衛システムは今回に関しては有効とは言えないのだ。


「……やむを得んか…」

「出来たら楽だったのにね。」

「最有力候補だったんだけどな。」


皆の落胆っぷりが想像以上だ。

気持ちも分からなくもないが、こればかりはどうしようもない。


「単純だが、落とし穴はどうだ?土魔法で時間もかけずに作れるだろう?」


筆頭騎士の1人であるリークの案が飛び出す。

脳筋とまでは言わないけど、武闘派らしい実にシンプルなものだ。


「悪くはないと思うけど、オススメはできないかな〜。」


個人的にはありかなと思っていたが、ファナから反対意見が飛び出す。


「なんでだ?」


「落とし穴という存在そのものが理由だよ。」


ん?

皆の頭の上に疑問符が浮かぶ。

種族的な理由からか、ファナって人を試すようなことを言うんだよな。


そのファナの意図を当てるために、思考を巡らす。

……ああ、なるほどな。


「……相手の行動ありきだからか…」


「流石ダーリン!その通りよ〜。」


俺が答えるより早くフィアナが答えた。


やはり、落とし穴の定義的な問題か。


落とし穴というのは、あくまでも踏んだ人を隠れていた穴に落とすための罠に過ぎない。

そこには踏むというアクションが求められる。

踏まれない以上、罠として作用しないのだ。


さらには柵や壁といった物とは違い、秘匿性が高い物である。

つまり、基本的にその存在は罠にかかることでしか認識できない。

仕掛けられた側からしたら、観測するまで落とし穴の存在はシュレディンガーの猫状態なのである。


見るからに罠と分かれば、それだけでも僅かばかりの躊躇という時間稼ぎに繋がる。

罠は存在が分かるだけでも、視覚的に十分に機能する。

逆に言えば、落とし穴のような罠は視覚的効果の薄く、機能性が不十分なのだ。


と、俺が立てた落とし穴に対する見解をファナは同じように説明した。

どうやら俺の認識と違いはなかったようだ。


その後も会議は踊り続ける。



「となると、やはり壁か堀が妥当なのか…」


まあOXさんの結論に至るよな。

俺も異論はない、というか他に思いつかなかった。


酸素爆弾を埋めて、地雷原を作ることも考えたが、今後のことを考えるとそんな危ないエリアを作るわけには行かなかった。

狩りの最中に誤って踏んで、そのまま御陀仏なんてコースもあり得るからだ。


他にも意見は出ることは出たが、どれも有効な手とは言えなかった。

そして、壁か堀に行き着いたのだ。


果たしてどちらがいいのか…


壁だと双方共に相手の正確な位置が把握しづらいため、攻撃手段が制限される。

堀だと相手の正確な位置が分かりやすいものの、攻撃手段の制限が壁ほどはない。


そして突破手段に関しては堀の方が多くなる。

壁と同様の単純に乗り越える、地下を掘り進める、飛び越えるの3種類の方法以外に、渡るという手段が増える。


くう、非常に悩ましいな…


「あのー、いいですか?」


皆が思い悩む中、後方へいたルテアちゃんが手を上げた。

子供は若いからということで、話し合いには参加させず、見学させていたのだ。


「両方とはいうのはダメですか…」


目から鱗だった。


たしかにその手もある。

どうやら固定観念に囚われてしまっていたようだ。

無理に二者択一を迫られる必要はなかったのだ。


「……たしかに堀の場合は掘り返した分だけ土砂が生まれるし、壁の場合は言わずもがな土砂が必要になるからな。」

「相互に補完できるというわけですね。」

「流石ルテアちゃん、ママは鼻が高いわ!」


皆の反応も好感触と言ったところか。

その策で行こう。


念のため、採決を取った結果、全会一致で可決された。




その後、1週間という突貫工事で、〈安息の樹園〉より1kmの円周上に壁と堀が建設された。

壁高さ10m、堀深さ5mの合わせて15mの代物だ。

ちなみに堀の幅は10mだ。


勿論だが《分解結界》を付与済み。

壊して進むことは叶わない。

それと、()()()()()()()()を施して準備は完了。



そして、完成から2日後、前回とは比べものにならないほどのゴブリンの軍勢が現れた。

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