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第85話 進化の問題

こちらは本日2話目です。

前話は12時の更新となります。

未読の方は是非ご覧になってください。

ヒュン!


来る日に向け、防衛システムの増築に乗り出した。



ヒュン!


……のはいいものの、どうしたら良いのか考えると、これがなかなか難しい。


倒したハイゴブリンの肩書きを見た限りだと、ゴブリンのコロニーは〈安息の樹園〉より東方面にあると考えるのが妥当だ。

しかし、絶対東から来るという保証は存在しない。

次は北側から来るかもしれないし、南側から来るかもしれない。

はたまた迂回して西側から来るなんてことも十分にあり得る。


そのため、より効率良く広い範囲をカバーできるような策を講ずる必要があるのだ。


ヒュン!


ちなみにだが、矢の雨に降られたフバツソラヌン畑はごく一部が傷物となったものの、大部分は無事であった。

食料問題に発展しないで済んで良かったと思う。

もし大損害が出ていたら、ゴブリンの軍勢と戦う以前の問題だからな。


ヒュン!


ヒュン!


ヒュン!



「よし、今日の分は終わり。」


いつもの日課の素振りを終えた。

初めの頃より、明らかに鋭さは増した自信がある。


『お疲れ様ですじゃ、主人よ。』


俺は今、オリ爺の傍らで素振りしていた。


最初の拠点を囲っていた壁は今や自分の家を囲うための壁となっている。

そのため、他の者の視線はほとんどなくなる。

そのため、集中して鍛錬をするのに向いているのだ。


ただ今日はいつもより無心になれなかった。

どうしても、今後のことを考えてしまうからだ。

気づくと、ゴブリン軍勢への対策を頭の中で考え出している。


『――じよ、主よ、聞いておられますか?』


「ああ、すまんな。考え事していた。一体どうしたんだ?」


『種族が進化したので報告を、と。』


「ん?種族が進化だと?」


『はい、主より良質な魔石を融通してもらっておったお陰で、この度進化する運びとなりました。』


「おお、まじか!それはめでたいな。」


レインから聞いたが、基本的に魔物というのは種族は生まれた時から変わらないことが多い。


ゴブリンで生まれたらゴブリン、ドラゴンで生まれたらドラゴンといったように、確率で言うと9()9()()()()はそのまま変わることなく生涯を終えるらしい。


ただその確率が100%でない以上、生涯のうちに進化する個体も現れるのだ。

その条件は、継続的に魔素を最低必要量の倍以上を摂取し続ける必要があるらしい。

その期間は魔物によってまちまちであり、過去に行われた研究によると、数日で進化した個体もいれば、数年かかった個体もいたらしい。

同じ種族であったとしても、期間は幅があるようだ。


「それで何になったんだ?」


『オリヴァントキングですじゃ。』


安直、と思ったが声に出すことはしなかった。

俺は配慮のできる大人だからね。


慣れたもので、《情報分解》を使う。



名前:オリバー

種族:オリヴァントキング

立場:[味方(従属)]元一帯の魔物の主

能力:《眷属召喚:トレント》《感覚共有》

   《眷属使役:トレント》《宿木》

   《活力吸収》Lv6《領域感知》Lv7

   《土魔法》Lv7《水魔法》Lv4


《感覚共有》

  自身と魔力のパスが繋がっている存在と五感を

  共有できるスキル。

  共有する五感は聴覚のみや視覚のみと、それぞ

  れ選択可能。

  触覚共有時、対象が負傷した場合、自身にも同

  様のフィードバックがもたらされる。


《眷属使役:トレント》

  既に存在している対象個体を自身の眷属して使

  役できるようになるスキル。

  《眷属召喚》の眷属と違い、存在霧散するデメ

  リットは存在せず、存在維持に必要な魔力量も

  格段に少なくなる。


《宿木》

  自身の種を他の樹木に宿らせることで、自身の

  一部を離れた所に設置できるスキル。

  宿らせた対象より若干の栄養を奪うことが可

  能。

  また自身の一部であるため、スキルを使うこと

  や五感などの感覚を共有することも可能。



うーん、強くなってるな。


魔石を直接入手できるようになった弊害なのか、《活力吸収》のスキルはレベルが変わっていないようであった。

しかし、それ以外のスキルのレベルは向上していた。


見たことないスキルも増えてたな。

《眷属使役》と《宿木》、そして《感覚共有》か…

なんちゃって監視カメラにできそうだな。

相手の接近にこれまで以上に早く気づけるようになる可能性が高い。


思い立ったが吉日だ。

早速行動に移すとしよう。


「なあオリ爺、監視を頼みたいんだがいいか?」


『ほほっ主よ、一体どこでしょうかのう?』


「んー、具体的な場所はこれから決めるが、大体拠点から等距離で何周か置きたい。」


『それはなかなかの規模ですな。ただ儂はこの場から動けんので、《眷属使役》や《眷属召喚》ではなく、《宿木》の方になりますがよろしいですかな?』


「あれ?動けなくなったの?」


『はい、キングに進化したためか、根が今まで以上に長く地下深くまで存在しているため、以前のような移動は叶わないのですじゃ。』


「なるほどな…まあ《宿木》で全然問題はない。俺が直接仕掛けに行くからな。」


『分かりました。では《宿木》用の種を作るため、明日まで待っていただけますかのう?』


「問題ないぞ、では頼んだ。」


さて設置場所の下見にでも行くか。

ついでに縄張りにしているような魔物がいたら間引かないとな…


その日の残り、俺はレインとリメを引き連れて、ひとまず拠点から500m離れた距離を円状に下見兼間引き作業に精を出した。




『これですじゃ。』


そう言ってオリ爺が木の蔓を使って、俺の手に種を渡してきた。


うーむ、明らかにいつもの果実から出てくる種と違う。

パッと見ると、向日葵の種っぽいな。


「これはなかなかの魔力が込められてますね。」


付き添いのレインからの一言が入った。

言われてみれば、魔力を感じる。


俺は魔力関係はからっきしだからな。

自慢じゃないが、意識したとしても、あるかないかぐらいしか分からん。


「まあこれをその場にある木の枝にでも埋めればいいんだろう?」


『はい、それで問題ないはずですじゃ。』


よし、早速行くとしよう。



と言うことで、目的の木の1本に辿り着いた。

フバツハートチークさんだった。


「えーと、太めの枝に…」


何度見てもフバツハートチークって高いんだよな。

自力で登るとなると厳しいものがある。

俺はレインの《飛行》で上昇するというアンパイを取り、太い枝の1本の上に登る。


そして、枝の根元あたりの表面をアンチディスダイト製のノミで削り穴を穿つ。

開けた穴に向日葵の種っぽい物を削った時にできた木屑と一緒に埋め、水をかける。


これで準備は完了。


地上に戻ると、早速変化が起きた。


俺が種を埋めたと思われる場所から、両手では数え切れないほどの蔓が出てきた。

本家のオリ爺の出す蔓の半分ぐらいの太さでウネウネしている。


数秒後ウネウネが止まったかと思うと、途端に全ての蔓が巻きつき始めた。

どんどんと巻きついていき、嵩が増していく。

気づくと、図鑑とかで見たことのある地球にある宿木と同じ見た目になった。


『主よ。』


「うおっ!オリ爺か?」


『はい。どうやら、繋がったようですな。《感覚共有》をしっかりと働いておるようです。』


「わかった、じゃあこの後も順次植えてくからよろしく頼むぞ。」


『分かりました。ただ今背後から魔物が1匹潜んでおるようなので、お気をつけください。《領域感知》に引っ掛かったので…』


とここでオリ爺との念話は終わった。


ああ、魔物がいるんだったか。


俺はすぐに《魔糸操作》で仕留め、《素材分解》する。

慣れたものだな。


ん?

おっ、()()は!


ふふっ、オリ爺にいい土産ができたな。




俺は《念話》のスキルオーブを拾い、次の木の所へと向かった。

次回更新日は11/1(日)です。


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勇者?聖者?いいえ、時代は『○者』です!
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